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会議で聴く「Official髭男dism」の幸せ

新曲「ホワイトノイズ」が好調なOfficial髭男dismにすごいニュースがとびこんできました。

【ビルボード】Official髭男dism「Subtitle」、星野源「恋」を抜き総合首位最多記録を達成

あの社会現象になった星野源さんの「恋」を抜いて「Subtitle」が12度目の総合首位最多記録を獲得、とても素晴らしいことなのですが昨年10月に長らく努めたレコード会社を退社ししばらく海外に行っていたので日本でのドラマ『silent』の盛り上がりを全く実感しないままだったのでご容赦ください。

思えばOfficial髭男dismの新曲については業務上、他の方よりいち早く聴ける立場におりました。これがどんなに幸せなことだったか今、現場を離れて初めて身に沁みるように分かります。

Official髭男dismの曲をリリース前に聴くこととなった最初の機会はデジタル配信チームに参加したばかりの会議で聴いた「バットフォーミー」、あの時サビのメロディと歌詞の言葉の突き抜けてくるような衝撃は今でも忘れることは出来ません。もちろんすでに月9ドラマ『コンフィデンスマンJP』の主題歌として「ノーダウト」も人気を博していましたが、「バットフォーミー」が各ストリーミングサイトでずっとロングテールで再生されたことが10月の「Stand By You EP」に繋がることになったと思います。「Stand By You」はApple MusicのCMを獲得することとなり、また初めて「ミュージックステーション」に出演することになりました。配信チーム全員でテレビモニターの前でかじりついて見ていたものです。

次の個人的な衝撃は翌年2019年4月初旬、5月リリース予定の新曲「Pretender」の全貌がまだ全く分からなかったころのことです。未完成の状態の楽曲は配信スタッフやメディアプロモーターの手元には来ないことが通常ですが、「ヒゲダンの新曲なら推薦曲枠に決めましょう!」ととあるストリーミングサイトの担当者がまだ未聴の「Pretender」を渋谷の某街頭広告スポットに入れてくれたのです。確かゴールデンウィーク前進行のようなタイミングでもあったため制作担当のM谷氏からワンコーラスだけのMV素材をギリギリで編集してもらってそのままストリーミングサイトの担当者へ転送した覚えがあります。その時初めて聴いた「Pretender」の身体を突き抜けるようなメロディの美しさ、違う空間に引きずり込まれるような藤原さんのヴォーカルの素晴らしさは数十年ぶりに体験する衝撃でした。その直後、ストリーミングサイトの担当者からも「すごくいい曲ですね!」と電話がかかってきたことも今だに昨日のことのように憶えております。同じような体験を「コンフィデンスマンJP」制作チームもしていたんだなとわかるフッテージがありましたのでシェアしますね!


それ以降のOfficial髭男dismの活躍は皆さんのご存知の通りです。メジャー1stアルバム『Traveler』で大ブレイク、「宿命」「イエスタデイ」「I LOVE…」も幸運なことにいち早く配信チームの会議で聴くことができました。藤原さんの天才的な才能をどの曲にも感じることが出来た幸せな時間だったと思います。

2020年に入り新型コロナウィルスの影響でテレワーク主体の業務となってしまい配信チームのミーティングも以前のようにスタッフ全員で顔を揃えることが無くなってしまいました。Official髭男dismの新曲も会議で一斉に聴くことはなくなってしまいました。この時期に発表された「パラボラ」「Laughter」も素晴らしい楽曲でしたが配信チーム全員で顔を合わせて気持ちを揃える事が難しくとてももどかしい気持ちになってしまったことを記憶しています。でも「Laughter」は後に1億回再生を遂げていたのですね、良かった!

2021年になり新型コロナも2年目になり少しテレワークが緩和されようになりました。再び配信チームで顔を合わせたリアルミーティングが開催されるようになりました。そんなタイミングで久しぶりにチームで揃って試聴できたのが「Cry Baby」です。この曲を最初に聴いた時、あまりにもめくるめく転調の連続に初めてヒゲダン曲で不安を感じることになりました。藤原さんがトニック(主音)に戻らないメロディ展開を志向しているのは「I LOVE…」の時にすでに感じておりましたがここまで振り切った曲が上がってきたのは衝撃でしたが同時にこれまでの髭男にはない領域に到達したことを誇らしく感じました。この時、最も若手の同僚女子に「この曲どう思う?」って聞いた記憶があります。最若手女子は「大丈夫ですよ!」とサラッと答えてくれました。彼女の答え通り「Cry Baby」は国内はもとより海外でも大きく支持を得てOfficial髭男dismの国際的な代表曲となりました。

そして同じ2021年の夏前のころでしょうか、8月リリース予定のアルバム「Editorial」からアルバムリード曲としてこの曲を聴いてほしいと制作プロデューサーから配信チーム全員で試聴したのが「Editorial」「アポトーシス」の2曲でした。合わせて2曲で9分以上あるアルバムの冒頭部、ここに今のヒゲダンの表現したいものを入れてありますと説明がありました。「アポトーシス」は「Cry Baby」と同様にトニックに戻らないメロディ展開ととても切ない歌詞の世界でしたが、Official髭男dismはさらに高い段階に登ったのだと身体中に染み渡ったような気持ちになったのを憶えています。
1年前に「アポトーシス」についてこんなことも書いていました。

レーベルでの最後の年は音楽配信の最前線の担当から離れましたが、最後に「ミックスナッツ」は配信チームの会議で試聴することが出来ました。その時はチームのボスから「ヒゲダンの新曲、上がってまーす」とあっさりと曲を流したと思います。そしてあまりにも素晴らしいポップナンバーが出来上がっていたことに「何だよ、やっぱりヒゲダンは天才じゃん!」と清々しく思ったものでした。

最初に戻りますが「Subtitle」は残念ながら事前に試聴することは出来ませんでしたが、2カ月ぶりに日本に戻ってから盛り上がり状況を年末のドラマ総集編で知りました。そしてBillboard JAPANのポッドキャストで「Subtitle」が史上最速で2億回を突破したことを知りました。

最初ノン・リズムで始まる「Subtitle」、なんと16ビートシャッフル曲でした。藤原さんのスケールの大きなメロディを持つ楽曲を常に大きく太いグルーヴで支えるちゃんまつこと松浦匡希さんのドラムが素晴らしいです。Official髭男dism内では藤原さんも素晴らしいドラマーでありワンマンライブでは時折、ちゃんまつとのツインドラムを披露しております。藤原さんのハイテクニックなドラミングに驚かされたりもしますが、そんな凄腕のドラマーでもある藤原さんが全てのリズムを委ねるのがちゃんまつの歌心あふれるドラミング。個人的にいつも感じていましたがちゃんまつの打点が大きく太いドラミング&リズムがOfficial髭男dismをヒゲダン足らしめているのではないかと思います。

そして最新曲「ホワイトノイズ」も素晴らしい楽曲でした。A-B-A-B-C-Cというイマドキの音楽マーケティングメソッドをあざ笑うかのような構成、そしてさらにスケールを広げる藤原さんのメロディ。トレンドに完全に逆らうヘヴィなギターリフやテクニカルでハードなギターソロ、そしてここでもちゃんまつの大きくて太い8ビート・ドラミングが冴え渡ります。確信犯的なヒゲダンのポップロックバンドとしての自信に満ち溢れています。


「ミックスナッツ」「Subtitle」「ホワイトノイズ」と次々に素晴らしいマスターピースが溢れとどまるところを知らないOfficial髭男dism。藤原さんも大好きだという70年代のスティーヴィー・ワンダーが「Taliking Book」「Inner Vision」「The First Finale」という傑作アルバムたちを立て続けに発表していた時もきっとこん感じだったのだろうなと思いました。そんな天才アーティスト、Official髭男dismと一緒に仕事出来て本当に幸せだったなあと思うごく個人的なメモみたいなnoteでした。



最後まで読んでいただいたありがとうございました。個人的な昔話ばかりで恐縮ですが楽しんでいただけたら幸いです。記事を気に入っていただけたら「スキ」を押していただけるととても励みになります!