病児保育利用の事前登録に関して

はじめに 〜 病児保育の事前登録とは 〜

 病児保育室の利用に当たっては一般的に自治体(あるいは利用する施設)に対して、事前登録という手続きが必要である。子供の名前や保護者の住所などを記載しで申請するものである。これによって自治体は病児保育利用用の通し番号を付与する。

病児保育の広域利用

 保護者の居住地と勤務先が離れている場合などに、子供の預け先が居住地に限定されていることで利便性が制限されてしまうため、自治体を跨いだ広域利用が通常保育・病児保育共に推奨されている。

 平成28年の総務省の調査発表(子育て支援に関する行政評価・監視
-子どもの預かり施設を中心として-結果報告書
)によれば、広域利用を導入している自治体では全体の利用率が上がるとされている。病児保育の潜在ニーズは高まっている(註1)と言われており、既存施設を有効活用していくことが期待されるため広域利用は新規施設を増設するという費用負担をかけずに既存のリソースをきちんと使う、という意味で非常に有効である可能性があると思われる。

 保護者目線で広域利用を考えた場合に、課題となる可能性が高いのが病児保育利用に掛かる手続きの問題である。現在、一つの施設の利用であっても利用にかかる手続きの煩雑さが病児保育利用の障壁の一つとなっている(註2)。具体的には"事前登録""医師連絡票"”施設への電話予約”などがこれにあたると考えられる。
 事前登録に関してはざっと見た範囲でも自治体によって内容や書式が様々であることがわかる。つまり、広域利用を考えた場合には利用を希望する自治体にそれぞれ別の書式・内容に書類を提出する必要が出てくるということである。利用者体験を考えれば理想的には1回の事前登録で複数の地区に登録が完了すべきであると考えられるので、書式や内容の統合が必要であると考えている。

(註1) 病児保育のニーズに関してはこちら(別のnote投稿にリンクしています。)をご参照ください。
(註2)病児保育の利用にあたっての障壁に関してはこちら(別のnote投稿にリンクしています。)をご参照ください。

研究目的、方法

 病児保育の事前登録の書式や内容がどの程度共通しているかを検討し今後統合された書式を構築可能であるか検証すること。

 今回は東京23区に限定し調査を行った。

結果

 都内23区すべてで事前登録が求められていた。

 21/23区(= 91.3%)において区内施設で統一された事前登録書式をもちいていた。2区では区内施設ごとで独自の事前登録票を用いていた。

 2区間で同じ書式を用いていた区が3組(6区)であった。

書式入手経路に関してはほとんどが自治体のWebページ上から入手可能であった(提出先は基本的に自治体窓口か病児保育施設である)。

事前登録で児童の詳細情報(周産期情報、既往症、予防接種、アレルギーなど)の記載を求めているのは55%であった。

詳細情報の内容としては、
周産期情報63.6%、発達状況63.6%、、アレルギー 72.7%予防接種接種状況100%、既往症 100%であった。

考察

 東京23区においてはほぼ区内のみで統一された事前登録書式を用いていた。
 区間では書式が異なるものを用いていることが多く、詳細情報の有無で概ね半々であった。詳細情報を求めていない区に関しては単純にフォーマットの違いなどの瑣末な違いであるので統合は容易に可能と考えられる。また、詳細を求めている場合でも概ね内容としては似通っているため統合は比較的容易に可能と考えられる。
 詳細を求めていない区と求めている区の間では調整が必要となってくるが、この点に関しては慎重な議論が必要と思われる。それは以下の観点からである。
 児の詳細情報に関しては実際の病児保育施設利用時点までに変化しうる児童の情報という特性を持っている。そのため、実際に利用が決まっていない事前登録の際に確認する必要があるのかという検討が必要である。一方で、病児保育を実際に利用したいという状況では時間的余裕が持ちにくいという事情もあり、詳細情報を実際に利用する時点で記載する場合の時間的コストをどう考えるかも検討する必要がある。現状はいずれのパターンがユーザー体験が良いのか、あるいは施設側で管理する上で利便性が高いのか、これらが不明であるため今後検証をしていくべきである。

 私見としては、子供が風邪になった時など突発的に発生するニーズに対して事前登録を求めていること自体にこのサービスの不便性が既に内包されていると考えている。理想的には保育園に入園が決まった児童は自治体側でID管理され、特に事前登録をすることなく病児保育を利用できる環境が構築される方が良いのではないだろうか
 また、事前登録以外にも医師連絡票や予約手段の多様性(電話、ウェブサービス、独自のウェブシステム)、空き状況が見えないことなども広域利用に当たっては障壁になってくるため、事前登録書式を統一しただけで容易に達成されるものではないことは明記しておく。

結語

 追加検証は必要であるが病児保育利用の事前登録に関しては統合自体は可能だろう。

スライド - サッと確認したい方はこちらから - 

 この内容は2019年7月14-15日に岩手県盛岡市で開催された病児保育研究大会の内容を補完したものです。

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森 浩輝

小児科専門医・指導医、小児循環器専門医。興味のあることをまとめてゆきます。内容からして多動性がバレバレですがめげない。

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