【百科詩典】へいせいのナショナリズム【平成のナショナリズム】

総じて見て取れるのは「保守」だの「伝統」だのといったワードをむやみと口にしたがるくせに、その「伝統回帰」は、歴史に関する教養の獲得や伝統的感性の涵養といった「手間のかかる」手続きを一切捨象した、全くの口先にすぎぬものとして現れている、という状況である。
そして、そのなかでも最も有害なものとして、誰かを「反日」として誹謗中傷することで愛国者を気取る、というほとんど戯画的なまでにサミュエル・ジョンソンの有名な「ならず者」の定義(「愛国心は、ならず者の最後の避難場所である」)に合致する現象が目立ってきている。

〜白井聡「ポスト・ヒストリーとしての平成時代