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《⑦十人十色の自己決定》北欧留学に学ぶ障害者福祉の在り方《デンマーク人にインタビュー》

初めてだらけの
私のエグモントでの初日
「ハーイ!元気?
私が、あなたのテーブルティーチャーよ。
わからないことはいつでも
どんなことも聞いてね。」
と肩を叩いてくれた。

テーブルティーチャーとは、
各テーブルが12〜15人くらいで
構成されている
その学期の小さなグループである。
各テーブルに2人の先生がついていて
困りごとなどは基本的に
まずその先生に連絡をするのだ。

私の初めてのエグモント生活は、
彼女から漲るパワーと
溢れ出る魅力に
ひきつけられっぱなしの日々だった。
そんなリーサ先生へのインタビュー。


パワフルでいつも元気なリーサ先生。

リスクはあるし、失敗もある。
でもそれが人生。

私は、リーサが担当する
障害者スポーツの授業に志願し、
特別に参加させてもらえることになった。

障害を持つ学生に
アシスタントティーチャーと呼ばれる
元学生たちがついて、授業をする。

私はこの授業を通して
テーブルティーチャーの時の彼女が
優しく寄り添う部分が見えるのに対して、
この授業の時はそんな部分を少し
隠しているように見えていた。

彼女は一人一人の性格や特徴を
よく見ている。愛情をもって
真面目に向き合うリーサはこう話す。

「私の仕事は学生達に
機会を与え続けること。
障害のある学生は今まで
スポー ツに関わる機会が少なくて、
車椅子の子達なんかは座ってるだけで
授業が終わってしまっていて、
スポーツするという
経験すらない子も多いの。

それから恐怖や不安も重なって
自分をかばったり、
守るタイプの子もいる。

でも、私はスポーツを通して
そんな子達にもプッシュするの。
学生達には
「自分」という単体の意識ではなく
「あなたのチーム」という意識を
スポーツを通して持ってもらうことで、
いつのまにか みんな
経験したことのないものを恐れることよりも、
支え合うチームの中で
チャレンジしたいって気持ちに
なってくれる子がほとんど。

もちろん
彼女達にとってはリスクもあるし、
失敗することもあると思う。
でもそれが人生じゃない?

そうやってスポーツを通して、
自分の守り方や可能性を
自分で知ってほしい。」と話してくれた。

傷つかないように守るのも自分。
だけど
可能性を信じて
飛び込んでみようと進むのも
自分自身なのだ。

それがどれくらい遠いのかを、一緒に考える。

ここからは、
チームという言葉をピックアップしたい。
なぜなら、エグモントでは
スポーツの場面だけではなく
障害を持つ学生達が
学校生活を送る上で健常の学生と
チームを組み生活しているからだ。

リーサはこの関係について
「お互いに初めてだらけのことが多いでしょ。
だから失敗してから気づくことの方が
多いんだよね、きっと。
だからお互いに正直になること、
自分の意見をしっかり伝える、
話すことが大切だと思う。

言葉にすることで、案外周りが
ヒントをくれたりするものだし。

それから相手の立場にたって
考えることも大切。
アシスタントする側もされる側も、
自分のプランもあるし、
相手の意見もある。

でも
互いに相手の気持ちになって考えることで、
違う角度や立場から自分を見れると思う。

そのあとで
今やろうとしてることや、目標が
どのくらい遠いのか一緒に考えることで
アシスタントとの関係性ができてくる。」
と話す。

ここで第6回でニナ先生にも尋ねた質問を
問いかけてみた。

高カロリーなものは控えるようにと
医者や家族から言われている子が
スーパーでチョコを買うと言い、
これは『私の自己決定だから』と
主張する子にあなたならどうする?
といった内容だ。

リーサは淡々と
「私だったらまず、
買うといった本人の意見を尊重する。
でもその上で
『食べてもいいけど
エクセサイズも大事だよ?』
って言うかな。笑
あとは、
『あなたはどうなりたいの?』って
尋ねるかな。」

さっきどれだけ遠いかの話を聞いた後で、
この言葉を聞いた私には、
リーサが話すこの「遠さ」は、
学生同士のお互いの距離だけじゃなくて、
自分と自分の目標との距離という意味も
あるのではないかと感じた。

大切にしている5つのこと

リーサが大切にしていることがある。
まず1つ目は、
すべてのことに責任を持つこと。
それから2つ目は、
すべての学生に機会を与え続けること。
3つ目は、
自分自身で選択させること。
障害者スポーツのクラスでは
時々プッシュしたりしながら。
4つ目は、
「私自身がトライすることに諦めたり、
疲れたりしないこと。
見せ続けることで
学生たちが自分の可能性を
もっともっと信じてほしい。」と話す。
それから最後の5つ目は、
「あと『自分はできない』と思わないこと。
今はできないかもしれないけど、
じゃあ 何が必要で、
どうすれば
それができるようにになるかを、
自分で見つければ
きっと『いつかできる』から。
そのために、
この学校や私たちチームがいる。」


マットの下に障害物をおいて自分で乗り越えながら進むレース。後ろで見守りながら「大丈夫。できる!」と声をかけるリーサ先生とアシスタントティーチャー。



自分の限界を
自分で決めてはいないだろうか。
誰かが敷いたレールの上を歩いてきて
突然レールがなくなった途端、
不安になって
ついつい付和雷同していないだろうか。

人生なんてあっという間だ。
どうせなら、
自分の気持ちに正直に生きていたい。
彼女へのインタビューを終えた後、
まさに
今すぐ
走り出したくなるような気分だった。


今シリーズの記事について

《十人十色の自己決定》は
「健常者と障害者」
という目には見えない隔たりに
疑問を感じながら飛び込んだ
北欧デンマークにある
エグモントホイスコーレンでの学生lifeは
「環境さえあれば、障害なんて越えていく」
まさにそんなワクワクドキドキが
止まらない日々だった。

エグモント卒業間近にふと考えた
「障害のある人の自己決定」について
障害のあるユーザーをサポートする
様々な人にインタビューした。

十人十色の自己決定、
デンマーク人へのインタビューは
これにて完結。

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