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恋愛ポエム 『美しき誤認』

夜8時

残業を終えた帰りに
バスを待ってたんだ


すると驚いたよ

そんな時間に
しかもオフィス街に

君が立ってたんだからね

いるはずのない君を見つけて

もちろん、僕は嬉しくなって
声をかけようとしたよ

でも、君が深刻な顔をしてたから

僕は声をかけられずにいた

《何か考え事をしてるのかも》

そう思って僕は
君の表情から感情を読み取ろうとした

おそらく、
1時間くらいは君の表情を観察したよ


すると
東側からのビル風に吹かれて

君の涙が宙に舞ったんだ


《何があったの?》

《どうして泣いてるの?》

そして不思議に思ったよ

《なぜ涙が宙に舞うんだろう?》

その光景を見れば
誰もが驚いて自身の目を疑うはず。

だけど、バスを待つ人たちも
歩道を過ぎ行く人たちも

誰も驚きはしなかった

君の涙が宙に舞うのを見て
驚いたのは僕だけ。

そう、僕だけ。

僕だけが
君の涙が宙に舞うのを見て驚き、

そして僕だけが
その涙をこの手に留めようとした

気絶寸前

僕は酷く混乱していた

真実に気付くのに
長い時間が必要だったんだ


そこに立っていたのは、君ではなくて

宙に舞ったのも   
君の涙ではなかった

困ってるんだ
正しく見えなくて...

困ってるんだ
君と出会ってから...

《こんな所に なぜ君が?》

そんな見誤りの繰り返し...


今日は、街路樹に君を見て

その花びらに君の涙を見た


この世のどこにも

君ほど美しい存在は、
無いと知りながら。

《完》

ひろまる愛理
2024年 4月中旬


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