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尾道、1か月滞在記。

 尾道に来て早24日。残りの滞在日数も指折り数えるほどになった。

 毎日、会ってお話した方の名前と簡単なプロフィールを「尾道日報」として書き込んでいる。
 気が付けば人数は60人を超えていた。

 尾道の景色、観光は過去の滞在で満喫したので、次は尾道の人と繋がりが作りたかった。
 「1か月間お試し暮らしをしているんです」と自己紹介をすると皆さん、興味をもってくださった。

 お話をさせていただいた約60人の内、半数ほどは移住者の方だった。
 人それぞれに人生があり、だんだんその人が「なぜ尾道に来たのか」ということに興味が出てきた。

 それで大抵の人は「大きい理由はなくて、ただただ尾道に惹かれた」と笑顔で言うのであった。

 それで十分なのだ。移住の動機なんて。そう確信した。

 尾道でやってみたかったことのひとつに「尾道で生まれ育った同世代の人を尾道で撮影したい」というものがあった。
 移住、ではなく生粋の、だ。僕の好きな尾道の景色で人を撮ってみたい、というささやかな憧れであった。
 地元を出て大阪や東京へ行くという若者が広島県は特に多いらしく「転出超過ワースト1位」と耳にした。
 そんな転出超過の中で尾道に残って生活する同世代にも興味があった。
 移住してきた人の年齢層は30代後半くらいがボリューム層であり、中々同世代の人と繋がりが作れなかったことももどかしかった。

 そんな中、ありがたいことに滞在の中盤で同世代の方と知り合い、数日後にばったり街中で再会したりして仲良くなり、写真を撮らせてもらえることになった。

 午前10時に集まり、お昼もとっくに回った午後。「最後に島の海辺でも写真を撮りたい」と提案してくれて車まで出してくれた。海辺に着くころには夕方になった。

 島の景色や夕陽を眺めながら「ほんとうに良いところなんですよ」と話をしてくれた時の表情や声色が、本当に嘘偽りないトーンであったから僕は途方に暮れてしまった。

 この方も、時期こそ未定ながらもうじき故郷を離れて仕事のために関東へ行く予定なのだという。

 そのことを初めてお会いした時から知っていたから、撮らせてもらった写真を見返した時、なんだか勝手に切なくなってしまった。

 


 この方を筆頭に、滞在中お世話になった方が、次の挑戦のために今やっている事を辞めて次の決断をするシーンを偶然ながらにこのひと月の間でいくつか見てきた。

 色々な人たちの選択や決断を見ることが多かったこの1か月。
 僕は、まだ関東でできることがあるのかもしれない。
 そう思うようになった。

 できること、といっても何も大きい夢があるわけでも、やりたいことがはっきり見つかったわけではない。

 とはいえ、関東には親も兄弟も居るし、それこそ付き合いの長い友人も全員関東にいる。
 尾道で暮らす選択をした移住者の方ののルーツも関東にあることが多かった。
 尾道に来て改めて関東の引力が強いことを痛感した。まして出身地が関東であるので尚更だ。

 でも、1か月暮らせてよかった。
 本当にたくさんの方と仲良くさせてもらったし、もし今後ふらりと尾道に足を運んでも、知り合いにばったり出くわせるくらいに街との接点を作れた自信がある。

 もし、また本気で住みたいと思う日が来たとしてもなんだかんだやっていけるような気がする。そう思えるくらいになれた。

 街との接点、という意味では多分地元よりも濃い接点ができたし、じゃあこの1か月やってきたみたいに「人と会いまくる」ことってまだ関東でやったことないよね、とも思うようになった。

 尾道にはまだ未練がないかと言われれば嘘になる。
 でも今は、ふらっと遊びに来る場所として付き合いたいなと思う。
 この1か月で尾道がもっと好きな街になった。
ひょっとしたら、僕にとっての尾道は神格化されてしまったのかもしれない。
それくらい素敵な街。

 また必ず来ます。尾道。

 まだあと8日居ますが(笑)滞在中に書き留めておきたかった。

最後に、何枚か撮ってきた写真を添えておきます。






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