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お弁当を食べながら

久しぶりに、母の作ったお弁当を食べた。

頭の中に流れてきたのは、菅野よう子さんの『お弁当を食べながら』という曲だ。
ほっともっとのコマーシャルで使われた曲なのだが、ふと思い出して、口ずさんでしまう。
そのとき必ず思い起こすのは、母の作ったお弁当。

学生時代、母が毎日欠かさず作ってくれたお弁当は、私の原動力そのもので。
ゆのじちゃんのお弁当、美味しそうだねって言われるのがいつも誇らしかった。
受験のときは普段よりも豪華で、お弁当なら周りの人に絶対に負けない!と謎に胸を張ったものだ。
お腹が痛くて食べられなかった日は、母を悲しませたくなくて、帰り道にこっそり食べてから帰った。

就職して、それから結婚して、いつしか母のお弁当を食べられる機会はなくなってしまった。
なくなったからこそ、必ず入っている玉子焼きやウインナーが愛おしくて。
毎日毎日、朝から小さなフライパンで焼いてくれた母を想う。
体調が悪くても、どれだけ怒っていても、お弁当を作ってくれたことのすごさを今、噛みしめる。

久しぶりにゆっくり帰省することになり、お弁当箱を持って帰ったのは、内心期待していたから。
母は「もう作らないよ」と言いながらもおかずを詰めてくれた。
仕事中も、うきうき、そわそわしてしまう。
待ちに待ったお昼休み、蓋を開けて、にっこり。
久しぶりの玉子焼きとウインナーに、頬がほころぶ。
夫が作ってくれるお弁当も、日々楽しみにしているけれど。ごめん。
この卵焼きは、母の手からしか生まれない。

食べてる私は、ひとりじゃないと曲はうたう。
たくさんの想いの詰まった、小さなお弁当箱。

ごちそうさまでした。