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喫茶ランドリーの日常

今日のおすすめの一冊は、田中元子氏の『1階革命』(晶文社)です。その中から「ベンチでまちづくり」という題でブログを書きました。

本書の中に「喫茶ランドリーの日常」という心に響く一文がありました。

こんなドラマもある。ある日の夜、閉店後に残って仕事をしていると、 仄暗い軒先にひとけを感じた。 うっすらと小さな影。 近づいてみると、そ こに小さな男の子が、ひとりぽつんと立っていた。親御さんに連れられて 何度かお店に来たことのあるその男の子は、幼稚園の年長さんだ。

どうしたの?と声をかけると、家出をしてきたと言う。理由は、お母さんと喧嘩をしたから。彼は涙をふきながら、小さなリュックから、これまた小さな財布を出すと、ジャラジャラと小銭を見せて、ジュースください、と 言うのだった。 

大丈夫だよ、いいから中に入りなよ。 そう声をかけながら、 少し向こうの電柱の陰に、そっとお母さんが見守っているのがわかった。 洗濯機の前に座らせてジュースを渡すと、ホッとする彼のもとにゆっく りとお母さんがやってきた。

ごめんね。親子の会話が始まり、30分ほどしただろうか。結局、仲直りをして家へと帰っていった。お母さんが言う には、ご子息はこれまでにも何度か、家出する! と近くの公園へと出て行くことがあったらしい。

「それが夜ともなると不安だったけれど、ここが受け容れてくれて、本当によかった。 ご迷惑をおかけしましたが、ありがとうございます」 

こちらこそ、そんなふうに頼ってもらえて、ありがたかった。 こんな信頼関係がもしできるとしたら、それは気が遠くなるほど先のことになると想像していたからだ。もしかしたら信頼関係とは、かける時間の長さについてくるものではなく、こちらが何者であるかを包み隠さず示す、胸襟の開き方についてくるのかもしれない。

喫茶ランドリーは私設公民館を目指している。だから老若男女、誰でもウエルカムな場所。子供連れのイベントも、ベビーカーでの来店も、近所のお年寄りも、若者も、インスタグラマーも大歓迎。だから、人生のさまざまなシーンがそこにはある。

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