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ダメになった人が好きなんです

今日のおすすめの一冊は、樹木希林氏の『一切なりゆき~樹木希林のことば~』(文春新書)です。その中から「面白がって、平気に生きる」という題でブログを書きました。

本書の中に「ダメになった人が好きなんです」という心に響く文章がありました。

《人間でも一回、ダメになった人が好きなんです》
私は物を消費することに真実はないと思っていますからね。だから私は人間でも一回、ダメになった人が好きなんですね。たとえば事件に巻き込まれてダメになった人というと言葉はおかしいけれども、一回ある意味の底辺を見たというのかな。そういう人は痛みを知っているんですね。だから、いろんな話ができると同時にまたそこから変化できるんです。
(「母樹木希林が親友に打ち明けた“七夕挙式”までの全秘話」1995年7月)

《自分が一番トクしたなと思うのはね、不器量と言うか、不細工だったことなんですよ》
私が今日まで生きてきて、自分で一番トクしたなと思うのはね、言葉で言うと、不器量というか、不細工だったことなんですよ。

私は普通だと思っているんだけども、他人(ひと)がそういうふうに見るから、ああ、そうなんだなあと思って見ているうちに、器量よしばっかり集まる芸能界に入っちゃったんですよ(笑)。今でこそ、役の広がりが出てきましたけど、昔はお手伝いさんまでも、器量よしがやったわけですからね(笑)。

ま、自分が不器量だということに早めに気がつかされちゃってね。それでね、案外自分としては、男を見誤らないできたという確信があるんですよ。要するに、見誤らないというのは、自分がこうだと思ったとおりなんです。それを選ぶか選ばないかは、自分の縁ですからね。

だから、不器量であるために、他人が私に関心を寄せないから、こっちが自由に人を判断できる。今日まで、いろんな男の人との出会いがあって、中には、うーん、ねえっていうのもありますけれど(笑)、それも含めて納得しているんですね。不器量のトクな点だなあと。(「そして、現代に貞女はいなくなった…」1988年3月)

◆どん底を味わった人には、深さがある。痛みを知っているからだ。そしてまた同時に、失意のどん底から這い上がった人にはある種の明るさがある。吹っ切れたような、ふわっとした、何とも言えない味だ。

「ダメになった人が好きなんです」

40年別居していた夫、内田裕也さんのことも感じさせる…
限りないやさしさにあふれた凄みのある言葉は素敵だ。

◆いつもスターのように注目される人がいる半面、他人から関心を寄せられない人もいる。関心を寄せられない人は、実はまわりの人をじっくり見ている。得意の絶頂にあるような人を、ニコニコしながら冷静に見ることができる。

誰もがスターのように目立ちたい訳ではない。他人から関心を寄せられないこともまたよし、だ。

今日のブログはこちらから→人の心に灯をともす


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