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【シナリオ】シン・デレラ

まえがき


 以前から私の記事を読んでくださっているあなたはお久しぶりです。この記事がわたしとのファーストコンタクトだというあなたは初めまして。中山翼飛です。

 高校を卒業したので、二年生の学祭でのクラス演劇で私が書いた脚本を供養しておこうと思います。

 舞台上での演技と舞台上方のスクリーンでの映像を組み合わせたものなので、脚本中にそれぞれの表記があります。

 結構ぶっ飛んだ話で設定ガバガバなところが多々ありますが、ご容赦ください。

 脚本自体は5,000字いかないぐらいの短さです。

 では、参ります。



キャラ説明

〇しむでれら…主人公。平安貴族の娘。ネット歌人。ツイ廃。
〇継母…しむでれらの父の再婚相手。彼の死後別の男と再婚した。
〇おねゑさん…継母の連れ子。
〇帝…独特のセンスをもつ。婚活中。
〇右大臣…独特の言葉遣いをする。結構優しい。
〇左大臣…ツイッターを活用する先進的な政治家。
〇歌人い~ほ…御歌合の参加者。
〇陰陽師…ネットに強い呪術師。反転と領域が使える。
〇ウシ…陰陽師の使い魔。ホルスタイン。
〇ナレーター…自分を長澤まさみだと思い込む一般男子高校生。


本編


スクリーンでのタイトル表示。

ナレーター
「昔むかし、この世とは少し違う世界に、しむでれらという娘がいました。しむでれらには和歌の才能がありましたが、毎日継母と義姉に虐げられ、その不満をつひつたあに呟いてふおろわあを増やしていました。この日も、何かが起こるようです」

〇しむでれら宅

照明が点灯する。

おねゑさん
「ついてこなくてよろしいと言っているでしょう、お母様」
継母
「そんなこと言わないで。上手くいけばこの御歌合で帝に見初められて、あなたが皇后になれるかもしれないんだから!」
しむでれら
「お待ちください!」

しむでれら、舞台袖から走ってくる。

おねゑさん
「何よ?何の用?」
しむでれら
「姉上がもっていく歌を作ったのは私です。姉上とは別の歌を考えますから、私も御歌合に連れていってください」
継母
「はあ?何言ってるの?卑しい身分の母親から生まれたあなたが御歌合に行けるとでも?」
おねゑさん
「あなたは私と父親が同じだけ。高貴な身分の私の足元にも及ばない。一生私の陰に隠れていればいいのよ。第一、そんなみすぼらしい格好で行くつもり?」
しむでれら
「私にも、実の母がくださった着物があります。それを着れば······」
継母
「あら、あんなものあなたには必要ないと思って売っちゃったわよ、めるかりで」
しむでれら
「そんな、ひどい!」
おねゑさん
「何言ってんの当たり前じゃない。あんなもの豚に真珠よ。それじゃあもう行かなくちゃ。あなたの相手をしている暇はないから」
継母
「ええ、早く行きましょう」

おねゑさんと継母、笑いながら退場する。

しむでれら
「はぁ······もうマヂ無理······つひつたあしよ」

しむでれら、つひつたあを開き、先ほどのことを呟く。すると、左大臣の公式垢から御歌合に来るようメッセージが届く。

しむでれら
「え、どうして?どういうことなの?」
ナレーター
「その頃、宮中でも事件が起きていた」

照明が落ちる。

〇宮中

点灯する。歌人いが倒れている。そこに右大臣が駆け寄る。

右大臣
「おいどうした!大丈夫か!?」
歌人い
「頭が······頭が痛い!」
右大臣
「何だって?しっかりしろ、おい、誰か来てくれ!」

左大臣が来て、その従者が歌人いを運ぶ。

右大臣
「困ったな。あの者は今日の御歌合の参加者だぞ」
左大臣
「何だと?帝の結婚相手を決める大事なものなのに······」
右大臣
「誰か代わりの者はいないのか?今回の御歌合のお題は『歯茎』、並大抵の歌人では詠めない代物だが······」
左大臣
「一人、思い当たる者がいる。その者は歌が上手くて歳も若い。御歌合に適任のはずだ」
右大臣
「そうか、早速頼んでくれ」

照明が落ちる。

〇しむでれら宅

点灯する。

しむでれら
「どうしよう、せっかくの機会なのに、ちゃんとした衣装が無いから······」

つひつたあを閉じるしむでれら。そこに陰陽師が現れる。

陰陽師
「あなたがしむでれらさんですね?歌の名人と伺っています」
しむでれら
「えっと、どちら様ですか?どうして私の家が?」
陰陽師
「私は陰陽師です。あなたが、つひつたあを投稿した画像の位置情報がわかる設定にしているおかげでたどり着けました。気をつけた方がいいですよ」
しむでれら
「え、設定変えとこ」
陰陽師
「そんなことより、あなた、御歌合に行かないのですか?せっかく誘いがきているというのに」
しむでれら
「行きたいのは山々なんですけど、衣装が無くて······」
陰陽師
「なんだ、そんなことでしたか。ならば私が、あなたを飾り立てる術をかけましょう」

陰陽師、術をかける。しむでれらが華やかな衣装に姿を変える。同時に牛車とウシも現れる。

しむでれら
「すごい、信じられない!」
陰陽師
「これで御歌合に参加できますね。ですが注意してください。子の二刻を過ぎると、術が解けて元の衣装に戻ってしまいます。それまでには御歌合から離れること。いいですね?」
しむでれら
「はい、ありがとうございます!」
ウシ
「さあお嬢さん、私が連れていきましょう!」
しむでれら
「えっと∙∙∙∙∙∙∙∙∙ウシ、いや人間∙∙∙∙∙∙∙∙∙?」
陰陽師
「そちらは私の使い魔です。お気になさらず」
 
しむでれら、恐る恐る牛車に乗る。

ウシ
「さあ行きましょう!落ちないようにしがみついて!」

ウシ、勢いよく言ってからゆっくり進みだす。
 
しむでれら
「∙∙∙∙∙∙∙∙∙いや遅い!」

照明が落ちる。

〇宮中・御歌合会場

点灯する。帝を中心に左大臣と右大臣が控え、さらに歌人達が左右に並んでいるが、左側に欠員がある。
歌人ろ
「結局、欠員は埋まりませんでしたね」
歌人は
「参加者が来ない時点で、勝敗は決しています」
歌人に
「欠員のせいで負けるなんて納得できません!」
歌人ほ
「まったく、来ないのはどこの誰なんだか」

「朕の中ですでに結論は出ている。これ以上は待たぬ」
右大臣
「これより、帝より御歌合並びにご結婚相手様の選考会の結果発表を承ります。心して聞くように」
しむでれら
「お待ちください!」

しむでれら、急いで会場に駆けつけ、空いている席に着く。

おねゑさん
「ど、どうしてここに!」
しむでれら
「お待たせしました。左大臣殿、私の歌をお読みいただけますか?」
左大臣
「わかりました。
 葉が落ちて あさましきみは 親知らず
  されど皮剥ぐ 木は生きたりぬ 」
おねゑさん
「まだそんな歌を隠しもっていたの······?」
右大臣
「それではこれから、ご質疑応答に入らせていただきます。質問のある者は挙手をし、質問をされた側は自己弁護を宣言しなさい」

おねゑさん、手を挙げる。

おねゑさん
「この歌には御歌合の題材である『歯茎』がどこにも出てきません。それに内容も意味不明です。こんなものは駄作です!」

「いや、これは素晴らしい歌だ。」
      
照明が落ち、時が止まる。スクリーン上でウシが喋り始める。

ウシ
「今の和歌がわからなかった君!あ、和歌がわからなかったってダジャレじゃないぞ。そんなことより、私が和歌を解説しよう!先ほどの和歌には『葉』『み(実)』『皮』とあるが、これらは全て『木』を連想させる縁語だな。葉が落ちた後の貧相な実の様子を、木の親は知らない。それと同様に、自分が世を去った後の哀れな子どもの身の上を子の親は知らないということだ。さらに、生きるために木の皮を剥ぐ子どもも、皮を剥がれる木も、必死に生きているという意味だな。『皮剥ぐ木は』に『はぐき』の隠し題が込められており、それに気づくとはじめの『葉』や『親知らず』は掛詞になっているとわかる。なるほどな〜!みんなも心を雅にして、和歌を楽しモウ!」

照明が戻り、時が動き出す。


「実に素晴らしい歌だ!朕はこの娘に褒美をやろう。この娘に褒美をやらない者は、この場から立ち去れ」

帝をはじめとして、歌人や大臣達がしむでれらに褒美を与える。おねゑさんは呆然と見ている。そのとき、子の二刻を知らせる鐘が鳴る。

しむでれら
「大変!私はそろそろお暇いたします!」

「待て、どこへ行くのだ?」
しむでれら
「失礼します!」

しむでれら、急いで会場を後にする。その際、靴を落とす。帝、その靴を拾う。


「この靴の持ち主を探し出すのだ!必ず見つけろ!」
右大臣
「かしこまりました」

照明が落ちる。

〇しむでれら宅

点灯する。

ナレーター
「しむでれらは先ほどの褒美を眺めていた。特に、帝からもらった特大の琥珀を」
しむでれら
「ああ、せっかくいい感じだったのに。帝、私のことを追いかけてくださらないかなぁ」

しむでれら、つひつたあに御歌合で帝に誉められたのに途中退席しなければいけなかったことを投稿すると、すぐに拡散されるが、そのことに気づかない。

しむでれら
「姉上が帰ってくると面倒なことになりそうだし、早く寝よう」
ナレーター
「しむでれらは就寝した。しかし、彼女の投稿はどんどん拡散され、ついには帝のお耳に入るのでした······」

朝になる。しむでれら、起床。外が何やら騒がしく、様子を窺う。

おねゑさん
「ですから、その靴の持ち主は私です」

「いや、お前はゆうべの娘とは違うような気がするのだが。陰陽師、本当にこの家で間違いないのだな?」
陰陽師
「ええ。誰が帝に嘘を申し上げるでしょうか」
しむでれら
「嘘でしょ!帝が私を追いかけてくださった!でも、こんなみすぼらしい格好じゃ帝に昨日の人だって気づいていただけない。このままじゃ、姉上が私になりすましてしまう······そうだ!」
 
しむでれら、つひつたあに帝が会いに来ているのに服装が悪くて会えないと投稿する。陰陽師、投稿に気づく。

陰陽師
「なるほど、そういうことでしたか」

陰陽師、再びしむでれらに術をかける。華やかな衣装を着たしむでれら、帝の前に現れる。

しむでれら
「帝、昨日は慌ただしくしてしまい、大変申し訳ございませんでした」

「おお、お前は、この靴の!」
おねゑさん
「違います!この靴は私のです!ほら!」

おねゑさん、従者から靴を奪って履いてみせる。


「そうか······では、歌を詠んでみよ」
おねゑさん
「え?う、歌?」

「どうした?昨日のように詠んでみよ」
しむでれら
「お詠みいたします。
   君待ちて 我に取らせし 大琥珀
    霧にかざせば 赤くはれけり  」

「その歌の感覚!間違いなくお前だ!」

 照明が落ち、スクリーンにウシが現れて喋り始める。

ウシ
「よおみんな、また会えるとは思わなかったろ?それじゃあさっそく和歌の解説、いってみよう!琥珀っていうのは長い時間をかけて作られるものだ。つまり長い時間の象徴ってことで、長時間待っていたと言いたいんだな。しかも帝から与えられたものを歌の中に取り入れることで自分が本物だとさりげなくアピールしている。後半の『霧』は、しむでれらが帝と隔てられてしまったことによる心の曇りを表現しているのだ。そして、『はれる』には、空が晴れる、霧が晴れるという二つの意味があり『赤くはれけり』は朝焼けの様子だな。さらに、しむでれらの心が晴れるという三つ目の意味が込められている。だがちょっと待て。『こはく きり』の並びの中に『歯茎』の隠し題があるな!つまり、この歌の意味としては、『あなたを待っていると霧がかかる朝になりましたが、あなたがくれた琥珀をかざすと歯茎が赤く腫れるように朝焼けで空が赤く晴れました』になる。なるほどな〜!みんなも心を雅にして、和歌を楽しモウ!」

照明が戻る。


「なんということだ、素晴らしいの一言だ」
しむでれら
「身に余るお言葉でございます」

「やはりお前こそゆうべ朕が見初めた娘だ。左大臣、今すぐ婚儀の用意をせよ」
左大臣
「かしこまりました」
しむでれら
「婚儀?今婚儀とおっしゃいましたか?」

「そうだ。これからよろしく頼むぞ」
しむでれら
「はい!よろしくお願いいたします!」
ナレーター
「生まれた境遇や現在の状況が厳しくとも、人は自らの才能を活かしさえすれば必ず幸せになれる。しむでれらはそのことを教えてくれました。しかし、皆さんもSNSの扱いには充分に気をつけましょう。その後、しむでれ      らは、一生幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし」




〈おわり〉










あとがき


 はい、そういうことです。やりたい放題してました。

 実際の映像を載せられないのが悔しいんですが、クラスメイトがみんなノリノリでやってくれたのが良かったです。音楽にも拘りましたし。

 タイトルはお察しのように『シン・ウルトラマン』からパクり、スクリーンでのタイトル表示のときもシンウルのメフィラス戦BGMを流しました。

 他にも、ウシの解説シーンはバーバパパさんの『ウ"ィ"エ"』を、ナレーターの最後のセリフのときには[Alexandros]の『閃光』を三味線バージョンで流しました。当たり前のことですが、陰陽師が術をかけるシーンは『レッツゴー陰陽師』を使いました。

 BGMは全て製作総監督である極ボッチという友人のセンスによるものです。わかってますね、彼。

 自称進学校の哀しき学歴モンスターと化した教員達の目を欺くために和歌だの牛車だので教育的な雰囲気にして誤魔化しましたが、私(と極ボッチ)がやりたかったのはネットミームの詰め合わせだということですね。

 ただ、一クラスの持ち時間が15分しかないために駆け足で話を進めなければいけないということと、『シンデレラ』という強固な原典があることに助けられて、だいぶ一般生徒にも受け入れられるものになったはずです。きっと。たぶん。メイビー。

 思えば『自分が書いたものを不特定多数に公開する』というのは、これを上演した学祭が初めてでした。それをnoteで公開するのは感慨深いですね。

 いや、これ普通は引退するときに書く文章だな。

 ともかく、二年生は八クラスでそれぞれのクラス演劇の順位を競うんですが、我らがクラスは二年生の部で優勝しちゃったんですよ。

 そのまま展示でイマイチ奮わない一年生と体育種目で全然駄目だった三年生をキャリーしてウチのブロックが総合優勝して、学年主任から「脚本の差で圧勝してた」とか言われたもんだから、あっさりと脳を焼かれた訳です。

 今読み返すと、やっぱり声と動きと音楽と映像が合わさった方がいいんですけどね。思い出補正でしょうか。セリフも良くないですし。

 ちなみに私は陰陽師役も兼任したんですが、焼かれた脳を反転で治すなんて無茶はしません。なので引き続き何かしら書いたらnoteに投稿すると思います。

 最後まで読んでくださりありがとうございました。また何かの作品を通じてお会いしましょう。

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