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いいビデオ作品を作るには

ビデオ作りは奥が深い。短編のドキュメンタリーを作る仕事をしているが、上司や同僚から「登場人物に密着し、物語性のあるビデオを」と要請される。私の所属する大組織の広報部では予算削減が激しく、数年前から製作費はゼロだ。ニューヨーク以外の場所で新しいコンテンツを作るとなると、資金のある他部署や他機関からの出資が必要となる。当然出資先のプロモーションしてのビデオが作られる。

今年5月、ある基金が出資してくれたお陰で、ウガンダに撮影旅行に行った。基金が欲しいのは2、3分のSNS用のビデオ。あからさまな宣伝ビデオは避けたいのは基金も我々も同じで、受益者を主人公とし、いかにプロジェクトによって生活が向上したか、に焦点を当てることで同意した。しかし、そもそもの目的はドナー達に基金の仕事を紹介し、更に寄附してもらうこと。一方私たちビデオチームはもっと中立的で物語性の高いドキュメンタリーを作りたいと願っていから、当然軋轢が生じる。宣伝文句や基金や出資者の名前を多用することを毛嫌いする傾向もある。塩梅が難しいところである。

来年初めには同じ基金からの出資で、アフリカの違う国に撮影しに行く予定だ。ビデオを制作していて痛感するのは、絵になる題材が必要ということ。基金はdigitalization (デジタル化)のプロジェクトを多く抱え、それらプロジェクトの映像化を願っているが、デジタル化をビデオにするのは難題だ。ウガンダでも農業協同組合の情報のデジタル化の映像を試みたが、農家の一人がiPadを使用している映像だけでは説得力が足りなかった。「他の農家はデジタル機器を使っていないじゃないか」とクレームが入る。私はその場にいてiPadが如何に情報管理を楽にしたかを理解していたので、ビデオをすんなり受け入れられたが、他者はそうではなかった。恩恵が分かり易く可視化されていることが必要なのだ。

ウガンダの前例があったので、今度の撮影の打ち合わせでは更に慎重になる。絵になる題材か、変化をわかり易く可視化できるか、そして受益者である主人公に密着できるか。それらをクリアしないと編集段階での苦労が目に見えている。完成品はたった3−4分程のビデオ。だがその中には様々な葛藤と交渉と思索が詰まっている。

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