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藤沢周平について

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記事一覧

庄内人の顔

 今からもう二十年以上も前の、僕がまだ大学生だったころ、大阪の駅のプラットホームで、いかにも故郷の人だ……と感じさせるお年寄りを見かけ、懐かしさに思わず声をかけてしまったことがありました。話しかけると、はたして故郷・鶴岡の人。
 僕に故郷を感じさせたのは、お国訛などではなくて、そのお年寄りの持つ故郷の風貌、雰囲気のようなものだったと思います。それは離れたところからでも、また背後からでもそれと確信さ

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まだまだ周平

 まだ藤沢周平を読み続けています。『海鳴り』、『漆の実のみのる国』、『闇の傀儡師』。短編だとすぐに読み終わってしまって物足りない……というか、勿体ないので、ついつい長編を手にとってしまう。
 さて、『海鳴り』は、今流行の失楽園もの。といって、けっして暗い結末とはなっていないのだけれど、読み終わって見れば、いつも家を背負い右往左往している男の弱さ・脆さと、もともとが過去を捨て去って生きて行く定めの女

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藤沢周平の世界に浸る

 『蝉しぐれ』以来すっかり藤沢周平ファンになってしまい、彼の小説をつぎつぎに読み漁っている僕。ありますよね、こんなことって。学生時代なら漱石とか鴎外、外国文学ではヘッセとかジッド。最近では、パーカーかな。
 本と人のかかわりって、いろいろな時期があると思うんですよ。僕の場合でも、乱読の時期もあれば積ん読の時期もあった。面白くもない本を嫌々読んでいた事もあれば、数年間ほとんど本を読まない時期だって…

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藤沢周平の故郷、海坂

 鶴岡から仙台は、さすがに遠い道のりです。工場の始業までにたどり着こうと思えば、早朝の五時過ぎにはもう車を走らせなければなりません。ひと山どころかふた山を越えるわけですからね。今年の九月にほぼ全線開通という高速道路山形道を使う手はあるけれど、いかんせん通行料が高すぎて。経費で通行料を落とせないぺーぺーは、少しでも早く起きて、一般道を眠い目をこすりこすり、スピード違反覚悟で走り抜けるしかないのです。

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藤沢周平の世界を照らすもの

 鶴岡市内の書店では、いまだに藤沢周平コーナーが設けられているところがあります。さすがに地元ですね。
 で、僕は休みともなるとフラフラ本屋をうろつき、周平コーナーに辿り着いては、「さて、今度はどれを読もうか……」と、あれこれ手にしてみるのですが、いったいどの本を読んだのか、どれを読んでいないのか、あまり区別がつかないんですね、どうも。読んだはずの本でもストーリーが思い出せなかったり、題名と内容が一

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