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「花束みたいな恋をした」感想


当時大学2年生ハタチ。周りはみんな見ていた。
どうやら共感の嵐らしい。
ちょうどあの頃からだった。
「好きだけど別れた」という言葉をよく耳にするようになったのは。

周りの感想を聞いて膨らませていたのは
・好きだけど、好きだけどどうしても譲れないことが合わなくて別れを選んだ二人。
・きれいな恋。
・麦くん(菅田将暉)は理想主義、絹ちゃん(有村架純)は現実主義、これがすれちがいのもとで、好きだけど別れた。

さらに脚本は坂元裕二。期待しかない。賞もとったらしい。期待しかない。


Netflixで配信が始まったので見ました。


正直、がっかりです。
以下ネガティブ感想なので見たくない方自衛してくださいね。

「カルテット」、「いつかこの恋を思い出して泣いてしまう」、「大豆田とわ子と三人の元夫」が好きだったので、同じ脚本家ということで期待が高すぎたのかもしれないです。
セリフがいいのは期待通り。感情をセリフにするのがうまいなぁ坂本裕二。

でもこの映画、2人しかでてこない。2人を取り巻く登場人物はもちろん何人かいますが、キャラクターのある、個性のある登場人物は2人だけ。

カルテットは、まず主人公が4人もいるし、まきさんの夫、まきさんの夫の母親、家守さんの元妻、別府ファミリー、ノクターン夫婦、
いつ恋は、主人公二人のそれぞれの恋敵、職場先の先輩、みんなの母親的な存在のおばあちゃん。
大豆田は大豆田とわ子と3人の元夫、娘、元夫の好きな人、社員
(だんだん紹介雑になっていますね)

登場人物全員に物語があって、
たった11時間そこらの尺しかないのにキャラクター投票ができそうなほど個性ある登場人物がどんどん出てくるのが、
坂本裕二の書く物語なのかなぁと思っていたので花束にはがっかりしてしまいました。
たった2時間しかない映画。その2時間で2人以外の人生を描くのは難しいとは思いつつ。勝手に期待してかってに裏切られたような気分。

坂本裕二がつくるヒロインは自立していて、かっこよくて、自分の力で自分の人生をしっかり選ぶことのできる女性、っていう印象があったのですが、この映画の絹ちゃん。
ずっと理想だけを見ていて。自分で自分の人生を選んでいるというよりも、どこか麦くん頼りで生きているような。

それにこの二人、大学での様子を見るとどちらかといえば陰な印象があります。
でも、なんといっても有村架純と菅田将暉。
華やかな印象がにじみ出ている…。にじみ出てしまっている…。
話題になる人じゃなきゃ映画作りはなかなかできないですけどね。

出会ってすぐ恋に落ちて、えっちする毎日。絵にかいたような大学生。
2人が付き合ってからの中身が薄くて、この後のシーンもずっと冷めた目で見てしまいました。

別れる理由も、絹ちゃんはずっと理想を求めてて、対して麦くんは現実しか見られないようになっていて。口論が増えて、話さない時間も増えて。
これって「好きだから別れる」ではないですよね。好きじゃくなったんですよね。
別れ話をするファミレスで二人が泣くのは、好きだからではなくて情。
「好きだから別れるってこういうことなんだなって思ったー」って言った友だちを思い出して、改めて、作品鑑賞は人によって違うことを思い知ります。
賞とってるくらいこの作品を良いという人が多い中、私は物足りなさと落胆を感じていますしね。

うーん。批判ばかりになってしまいました。サブカル好きにとっては、絹のように、麦のように、「私もこれ好き!」「俺もこれ聞いてる!」と盛り上がるのかもしれませんね。

追記
ずっと恋愛関係じゃいられない切なさ、というテーマに関して。
「大豆田とわ子と三人の元夫」
のとわ子と第一元夫との会話:もし私たちがあのまま結婚し続けていたら。

「顔見れば喧嘩になる時期もあるだろうし」
「まぁ喧嘩も重ねればさ、仲直りも上手くなるだろうし」
「だんだんお互い趣味も変わってくるだろうし」
「それはそれでさぁ、それぞれね」

離婚は選んだけど「別れ」は選ばなかったこの二人に比べて、
絹ちゃん麦くんはどちらもずっと学生気分なんじゃって感じてしまいますね。学生時代に出会ったあのときの心のまま相手と繋がっていたい感があります。変わりゆく自分と相手の心を見てみぬふりして、ちゃんと向き合っていないから、二人でいるのが辛くなって、好きという気持ちも薄れて、別れを選んだって感じ。

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