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愛を込めて故郷・北海道帯広を語ってみた

私が生まれ育った十勝・帯広の魅力を、地理学的観点から愛を込めて語ってみました。
自然地理学の授業で作ったプレゼンの二番煎じです。マンテカトゥーラ。

はじめに

空港から出ると、乾いた風が頬を掠めた。
「ここだ」と身体が思い出す。私の幼少期は、この冷気と共にあった。

2023年末、私は地元・帯広に舞い降りた。小説っぽい書き出しを一回やってみたかった。
気温は-4℃。かなり暖かいほうだ。
母は「昨日なんて-16℃だったからね」と、なぜか誇らしそうにしている。その気持ちはわかる。得られるものは何もないのに、道民は気温マウントをとりがちだ。

「どちらのご出身ですか?」
そう聞かれる度、私は「しめた」と思う。
何を隠そう、私は地元愛が強い。かなり重めだ。

18年間を過ごしたこの地域について、語ってみたい。
この北海道の中心へ、愛を叫びたい。
この十勝の片田舎で。
いまいちしっくりきてない。

帯広初心者のあなたへ

「そもそもどこだっけ」というマジョリティの声にお答えする形で、少々要点を整理したい。

十勝の市町村は小4くらいで丸暗記させられた記憶がある。

まずは用語を整理しよう。
北海道→十勝→帯広というのは、上の画像のように入れ子構造に成っている。
「十勝」は北海道を大きく分けた「総合振興局」「振興局」という行政単位の名前だ。わかりづらいので、なんとなく「関東」みたいなイメージを持っていただければ、簡単な誤解程度で済むと思う。

結構でかい。
この画像は、首都圏民にマウントを取るのに非常に有用だ。

このセクションの終わりに、地理学者・高野史男(1917-2002)の言葉を引用したい。

帯広市は十勝地方のほぼ中央に位置し、この地方には他に目ぼしい都市はない。また十勝地方は周囲を日高山脈や大雪山系などの山地にかこまれて北海道でも交通路の発達が最も遅れ、孤立的な色彩の強い地域である。(中略)
この地方には石炭その他の特殊な資源も今の所ないので、農林業以外の産業は市街地における若干の農産物加工業を除いて大したものはなく、この地方の純農業地域としての整一性をみ出すほどのものはない。

高野史男「都市の本質:北海道帯広市の実例から」『地理学報告』
(愛知学芸大学地理学会、1964年05月31日、9-17項)9項.

なかなかの言われようである。事実とは時に厳しいものだ。

帯広の地形

地形はあんまり好みじゃないので、サクッといく。私は気候のほうが好きだ。

十勝平野があるだけあって、平野である。とても平野である。で、ちょっとした河岸段丘にもなっている。

国土地理院地図より。

なんやかんやあって、水はきれいである。
水道水もうまい。

ラベルの原材料に「水(水道水)」という表示を見た時の衝撃は忘れられない。

帯広の気候

気候は、2つの特徴に集約できると勝手に思っている。
まず、寒暖差が大きい。年によっては夏は35度を超えまくるし、冬は-20度になったりする。
二つ目は、「日照時間が長い=雨・雪が少ない」ことだ。
特に冬はずっと晴れてる。まじで。

いい感じの画像があったので貼っておく。

この二つの観点をもとに、夏と冬の気候を簡単に見てみよう。

うちのすぐそば。

十勝の夏は、暑い。なぜか。
十勝の気候を語るうえで欠かせないのが、日高山脈だ。

下の出っ張りのど真ん中に位置する。
この成り立ちも日本列島史を絡めながら考えるととても面白い。
面倒になって省いてしまった。

単純化すれば、偏西風が日高山脈を通ることにより、フェーン現象を引き起こす。

詳しくはググってください。

ゆえに、↓こんな感じのことがしばしば起こるのである。

夜は気温がちゃんと下がるので涼しい。

冬は寒いが、よく晴れる。

筆者が適当なタイミングで撮影。
いまいち場所も覚えていない。

我々はこれを、「十勝晴れ」と呼ぶ。
環境省のサイトによると、「十勝晴れ」は「冬に気持ちよく晴れること」を表す。

データで見てみよう。
下の図を見ると、冬の十勝は雪が少なく、よく晴れることが一目瞭然でわかる。

(左)冬の降雪量と(右)日照時間(1991~2020年の平年値)

この要因も、同様に日高山脈が大きく関わっている。
冬の西高東低の気圧配置により、北東からの季節風が吹く。

西高東低西高東低西高東低。とても言いやすい。

この風が日本海で水分補給をし、山にぶつかって雪をぶちまけるというわけだ。

ちなみに私は天気アプリを4つ併用しているが、見る頻度が最も高いのは「tenki.jp」だ。

帯広の農業

私は、帯広市の中でもかなーり田舎のほうに住んでいた。
農家さんではないが、それなりに農村部出身アイデンティティは強い。
最寄りの同級生の家は2km先である。

まずは、こちらの記事をご覧いただこう。

通称「勝毎」は、十勝管内で圧倒的なシェアを誇っている。
今日も「公務員志望の〇〇高生が公務員試験に全員合格!」みたいな見出しがあった。

ここから、二つのことが読み取れる。

第一に、十勝とは都道府県であったということだ。
どうも都道府県別で「十勝」が5位に入っているらしい。教科書の早期改訂が望まれる。

第二に、圧倒的な農業生産量である。
わかりやすく、食料自給率(カロリーベース)で見てみよう。
日本の食料自給率は、約4割。
北海道の自給率は、約200%である。

十勝はどうか。
フードバレーとかち推進協議会の2023年12月の発表によると、
1212%であった。
昨年は1170%だったので、増加傾向にある。
ちなみに、即座にマウントを取るため、このあたりのデータを私は頭に入れている。不毛な努力とはこのことである。

農作物

では実際何を生産しているのか。
上空からの写真を見てみよう。

国土地理院地図より。
帯広市大正町近辺。

様々な色の畑が見える。ここから分かることは、「輪作」が盛んということだ。
牛乳などのイメージから、酪農との繋がりを想起する人もいるだろう。
山麓部や沿岸地域では畜産系が多くなっている。ただ、だだっ広い十勝平野に鎮座する帯広などでは、畑作の割合が大きい。
なお、雨が少ないことから稲作にはあまり適していない。

輪作で栽培される代表的な作物としては、「小麦」「じゃがいも(馬鈴薯」「甜菜(砂糖大根・ビート)」「豆類」が挙げられる。
特に私の住んでいた地域ではじゃがいもが崇められており、毎年秋分の日には「大正メークインまつり」が開催されている。

左上はJA帯広大正の「大正野菜3兄弟」、左下は恒例のじゃがいも袋詰めである。
ちなみに私は大正野菜3兄弟のクリアファイルを今でも常に携帯し、
草の根活動を展開している。根菜だけに。

会場では、某小学校全校児童が書かされる野菜をアピールするポスターが掲載される。某小学校児童は、じゃがいもやカボチャに関する替え歌を歌ったりダンスをしたりと、祝日返上で野菜のプロパガンダ活動に勤しむ。
参加しないという選択肢はない。これが結構楽しかったりして、傑作の替え歌は今でも口ずさんでしまう。ちなみに振替休日はある。

帯広へいらっしゃい

やはり口頭発表を書き起こすのは難しいもので、少々退屈になってしまった感は否めない。魅力を語ったわけではないので「今すぐ行きたい!」というマインドをお持ちの方は多くないと思われる。しかしこれだけは言っておきたい。ご飯はうまい。

帯広に行ってみたいという方に向けて、ここから「帯広は近い」という論を展開させていただこう。

帯広までの距離

私の通う大学の最寄り駅である「JR武蔵境駅」から「帯広駅」までの所要時間を計算する。東京ディズニーシーのアトラクションである「ソアリン」を比較対象として考えてみよう。なお、交通機関の遅れは考慮しないものとする。

まずは帯広駅に向かうパターン。

武蔵境駅から羽田空港まで、JR中央線と山手線、それに京急空港線を乗り継いで約80分。保安検査場を出発20分前に通過する必要があるので、余裕を持って40分前には着いておきたい。
そこから飛行機に乗っておよそ100分。空港から帯広駅は24km。30分あれば着くだろう。
ということで、武蔵境→帯広の所要時間は合計250分(4時間10分)となる。

ディズニーまでの距離

続いて、ソアリンに乗るまでの時間を考える。

武蔵境駅から舞浜駅は、中央線と京葉線を乗り継ぐと約70分かかる。
舞浜駅からディズニーシーの入場まで、移動と並びを考えると25分ほどかかるだろうか。入場口からソアリンまで、歩いて約10分としよう。ここまでで105分。長いが、まあさしたる問題ではないだろう。

問題はここからだ。
ディズニーに詳しそうなこちらのサイトを参考にすると、ソアリンの平均待ち時間は土日で110分〜150分、平日で85分〜120分となっている。
ディズニーに行くのは基本的に土日であること、それに最悪のケースを考えて行動することを基本とすると、150分と見ておくのが妥当だろう。
150分の待ち時間の末に、ソアリンに辿り着くことができた。

計算してみると、「105分+150分=255分(4時間15分)」となる。
帯広駅までの所要時間が250分だったので、時間距離はソアリンよりも帯広のほうが近いということが明らかになった。

ということで、帯広は一見遠くに見えるが、実質ディズニーよりも近い
「北海道は遠いんだよな〜」と言いながら今年1年が終わりそうなそこのあなた!
お待ちしております。

観光ガイド

最もやるべきであるはずの十勝の魅力を伝えることまでは手が回らんかったので、よさげなリンクをいくつか貼っておこう。やはり何事も協力が重要である。

主要参考文献

帯広開発局治水科「札内川の水質評価について」(第39回北海道開発局技術研究会、1995年)171-176項 [https://thesis.ceri.go.jp/db/files/GR0001300032.pdf].

「帯広市の概況」(帯広市HP)[https://www.city.obihiro.hokkaido.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/476/04no1.pdf].

「帯広の140年を紐解く」(帯広市開拓140年、市制施行90年記念HP、2023年)[https://obihiro140.jp/history.php].

「帯広の水」(広報おびひろ平成29年7月号掲載)[https://www.city.obihiro.hokkaido.jp/shisei/mayor/column/h29/1001596.html]

国土交通省北海道開発局「十勝農業の概要」(2022年)
[https://www.hkd.mlit.go.jp/ob/nougyou_keikaku/ctll1r0000001edb-att/inr9av0000001w6r.pdf].

国土地理院地図 [https://maps.gsi.go.jp/#5/36.104611/140.084556/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1g1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1].

「札内川の概要」(第1回札内川懇談会、2012年)[https://www.hkd.mlit.go.jp/ob/tisui/tisuijigyou/satsunaigawatorikumi/kondankai/ctll1r00000029t6-att/fns6al000000mka8.pdf].

高野史男「都市の本質:北海道帯広市の実例から」『地理学報告』(愛知学芸大学地理学会、1964年05月31日)9-17項.

「とかちの気候」(十勝晴れHP)[https://tokachibare.jp/about_tokachi/weather/].

「十勝の成り立ち」(音更町HP、2021年)[https://www.town.otofuke.hokkaido.jp/files/00005700/00005742/20211117083937.pdf].

北海道開発局帯広開発建設部「十勝の平野や川ができるまで」『時をこえて十勝の川を旅しよう!』(国土交通省北海道開発局HP)[https://www.hkd.mlit.go.jp/ob/tisui/kds/pamphlet/tabi/ctll1r00000044pr-att/ctll1r000000cxh1.pdf].

「北海道地方の天候の特徴」(気象庁HP)[https://www.data.jma.go.jp/cpd/j_climate/hokkaido/main.html].

このほか、画像はクリックするとURLに引用先に飛べるので、適宜参照されたい。

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