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七月になると、全国各地で音が聞こえてきます。
打球音、走者の足音、捕球音。
ブラバン、大歓声、ため息、感動と拍手の渦。
そして、試合終了のサイレンの音…。

いわゆる夏の甲子園大会、地区予選!

ここ最近の三年間は「コロナ禍」で、
夏の大会(夏大)そのものが中止になったり、
ブラバンが禁止されて手拍子応援だけだったり、
「夏の風物詩」的な光景と音声が
失われることが多くありましたけれども、

2023年、今年は基本「例年並み」の開催。

…ただし、夏の甲子園大会は
「トーナメント一発勝負」ですよね。
甲子園の決勝で勝利する1チーム!
そこ以外は、全チームがどこかで「負ける」。

敗退して、姿を消す。

負けたチームの三年生は引退して、
高校野球に終止符を打ちます。
逆説的に言えば、高3選手のほぼ100%を
「負けて引退させるため」に
開催される大会
、という側面がある。

…勝ったチームからすれば、
こんなに困難な時代の中であえて
高校生活に野球を選択、切磋琢磨してきた
相手チームの「球友」たちに
別れを告げさせる
、そんな一面があるのです。

だからこそ、ドラマが生まれる。
だからこそ、人の心を、打つ…。
本記事では、高校野球の夏の甲子園大会、
その地区予選について書きます。

砂押 美穂 さんの息子さんが
先日、夏の大会、地区予選で敗退して
現役としての高校野球の幕を閉じた、
という記事を読みました。

以下に、少しだけ、引用します。
ぜひ、全文をコメント欄に貼ったリンクから
お読みいただきたい、と思う素敵な文章です。

(ここから引用)

『地方大会予選、
1試合目は勝利した息子たち。
2試合目は強豪校との試合でした。

先攻、勝ち越しで進んでいた試合でしたが、
途中逆転され、1点差がついたまま、
9回表を迎えました。

最終回、2アウトの時点で
1塁に出塁した息子は
次の打者のヒットにより、猛スピードで走り、
ヘッドスライディングでホームへ。

球場全体が一瞬緊張につつまれました。
そして、セーフの判定により
その回1点が入り、同点に。

チーム全体が沸き上がった瞬間でした。
(かなり奇跡的で、新聞にその時の
息子の写真が大きく載っていたほどです)

しかし次の回、相手チームに1点が入り、
試合終了のサイレンが
グラウンドに鳴り響きました。
長い間持ち続けていた夢が消えた瞬間でした』

(引用終わり)

…私もささやかながら自分の小説で
野球のシーンを書いておりまして、
作者の特権で「アウトかセーフか」、
緊迫の一瞬を書くことができるのですが、

まさに砂押さんの息子さんは
その場面を「ノンフィクション」で
球場内に描き出した。


9回表。1点のビハインド!
点が入らなければ負ける、大事な場面!

そんな時に、同点の一塁走者です。
牽制球でアウトになる危険も、ある。
守備陣に挟まれる怖さも、ある。
野球の走者の判断は、ほんの一瞬です。
その状況を見誤れば試合が終わる…。

そんな、ひりつくような状況の中で、

『猛スピードで走り、
ヘッドスライディングでホームへ』

…このプレーに、どれだけの勇気が
必要だったのでしょうか?
ましてやタッチの差、クロスプレー!
アウトになれば、同点の機会を失って、
そこで高校野球が終わることもある…。

『セーフの判定により
その回1点が入り、同点に』

奇跡の走塁。
どれだけチームが盛り上がったことでしょう。
応援する人の心が湧き立ったことでしょうか。
まだ、試合は終わらない。終わらせない!
決死の走塁によって、砂押さんの息子さんは、
みんなの夢をつないだのです。

…九回裏に、相手チームに1点が入り、
試合は終了になりました。
しかし、おそらくですが、
息子さんの涙には悔しさと無念さとともに、
充実感と達成感があったと、そう思います。

(ここから引用)

『真っ黒になったユニフォーム姿で
「勝てなくてごめん」と言いながら
滅多に見せない涙を流した息子は、

高校の野球を期に、10年間続けてきた野球を
辞めることを以前から決めていました。

そして「これからまた(別の道で)頑張るから」
と言った言葉に、
私は涙が押さえられなくなりました泣』

(引用終わり)

野球は、ある意味、残酷なスポーツです。
誰かがアウトになって、負けが確定する。
原則、時間制限のあるスポーツではありません。
アウトを累々と重ねた上に、勝敗が確定する。

どうしても甲子園の晴れ舞台に
立った選手たちばかりがスポットを
浴びやすいのですけれど、彼らはすでに
「地区予選で優勝」した選手たち。


その代表の1チームの後ろには、
彼らを全国に送り出すために負けた
多くの選手の、応援者の、涙と無念がある…。
球友を倒した、たくさんのアウトがある。
だからこそ、甲子園に出た選手たちは
彼らの分まで、必死で頑張っていくのです。

名作野球漫画『ドカベン』『大甲子園』を
描いた水島新司さんは、山田太郎高三の夏に、
ライバルキャラの不知火守にあえて、
こう言わせています。

(ここから引用)

『明訓を破ったらそれでいい
甲子園出場なんてなんの魅力もない
勝っても甲子園切符はくれてやる
あれは夏祭りだ!!』

(引用終わり)

…高一の夏から四回、山田に地区予選で負け、
五回目のリベンジに臨む不知火にとっては、
明訓・山田に勝つことだけが、高校野球だった。

あの「大甲子園」を「夏祭り」だと
バッサリと言わせるところに、痺れます。
それぞれの選手に人生があり、夢があり、
彼ら自身だけの、唯一無二の想いがある…。

それをずばりと描いた名シーン!

その夏祭りの前。地区予選。

そこにこそ、全国には知られざる
熱いドラマがあふれているのです。


最後に、まとめます。

本記事では、砂押さんの記事等を引用しつつ、
夏の甲子園の「地区予選」について書きました。

ただ、敗退した高3の選手たちは
高校野球には終止符を打ちますが、
チームは新チームになって続きます。
自身の「高校生活」「人生」も、
その後も、ずっと、続いていきます。

後輩たちの新チームは、
夏の甲子園で盛り上がる八月、九月から
早くも秋の大会、春のセンバツへと
つながる試合へと臨んでいく…。
引退選手がサポートに回ることも、多い。

(ここから引用)

『夢を持って生きることは
とても素晴らしいことだと思います。
そして人の夢には一緒に乗ることもできる。
誰かと一緒に見る夢は、
1人で見る夢よりずっと大きくなっていきます。
そして一歩を踏み出し進んでみた時、
夢は希望になるのかもしれません』

(引用終わり)

きっと息子さんは次の夢へと進むでしょう。
砂押さんご自身も。

試合終了のサイレンは、夢と希望のゴール。
そして同時に、スタートでもあるのです。

※以下に、おすすめの野球漫画のリンクを貼ります。

水島新司さんの『ドカベン』。最初は柔道漫画!↓

(水島新司さんの私の紹介記事↓)

ひぐちアサさんの『おおきく振りかぶって』

(その保護者に注目した私の漫画紹介記事↓)

なきぼくろさんの『バトルスタディーズ』
(あくまで架空?の「DL学園」のお話です)↓

合わせてぜひどうぞ!

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