「誰が書いたかで読んだ文章の感想や印象が変わるわけ。内容同じでも。」

　インターネットの仕事をしている先輩が珍しく酔っ払って前に話したことを喋っている。

「就活中の大学生と元外資証券トレーダーじゃ文章の説得力が違うわけ。内容同じでも。プロフィールで判断しちゃうのよ。内容が嘘みたいな話でも、戯言に思えたり、もしかしたら真実かもってなるわけ。元外資証券ってことは大学生と同じ就活中の可能性あるのにな。それも自称よ？」

　社会人経験があるかどうかは違うと思うけど自称なのは間違いない。

「そうやってプロフィールで誰が書いているか知りたがる気持ちってよく詐欺で利用されるけど、たいていの人はそういう行動とるよな。でもさ、誰が書いていようと良くないか？」

　先輩ずいぶん酔いがまわって普段は言わないようなことを話しだした。

「エロっぽい感じのアカウントがプロフィールを見てね😍とか書いてプロフィールのリンクを踏ませる手口あるじゃん？あんなのさ、プロフィールを見なくてもおかしなヤツに決まってんだからさ、プロフィール見ようって思っちゃう時点ですでに一度騙されてんだよ。でも見ちゃう人いるんだよ。しかもわりといるのよ。」

　普段ならそれを応用して他に何かできないかって話をすると思ったら、先輩そのまま下向いてウトウトし始めた。今日はどうもお疲れらしい。

　自分は先輩のプロフィールを詳しく知らない。
　大学の先輩というだけで、どこの企業や組織に所属しているのか、具体的にどんな仕事なのかも知らない。インターネット関係の何かをしているというだけだ。
　話が面白いから、別にそれでかまわないし、知ろうとも思わない。