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[DX事例64]大量のIoTデバイスをまるごと繋ぐWi-Fi基盤で建築現場の生産性効率化!_大成建設株式会社

ITコンサル×パートナーCFOのタナショーです。

このnoteではDX事例やIT活用事例の紹介を通して、経営者の方がITを身近に感じたり面白いと思ってもらえることで、企業の成長に役立つ情報をお届けしていきます。

今回は建設業界からです。国内の大手総合建設会社であり、スーパーゼネコンの一角でもある大成建設株式会社のWi-Fiを使ったDXです。


Wi-Fiが人の位置情報もAI・IoTとも繋がる環境を作り出す。大成建設のDX事例

大成建設は1946年、前身の「大倉土木株式会社」から社名を変更しており、大手建設会社としては珍しい非同族経営の企業となります。
社員が働きやすく、生産性を高める業務プロセス改革のためにDXを推進しており、今回はその取り組みの一部をご紹介します。


①メッシュWi-Fiが建築現場の人とAI・IoTをまとめて繋ぐ「T-BasisX」
大成建設は、株式会社インフォキューブLAFLAなどの複数企業と共同で、着工から竣工までの現場内の各種データを収集・分析が可能なDX標準基盤「T-BasisX」を構築しています。現場内にメッシュWi-Fiによる通信網を構築し、人や建機の位置情報やAI・センサ・ドローンなどのIoTをインターネットに接続することで、建築現場の生産状況を見える化します。

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大成建設株式会社「Wi-Fi環境とAI・IoTを一体化したDX標準基盤「T-BasisX」を構築」より抜粋


従来の建築現場では、地下階、高層階など携帯電波の届かない場所ではインターネット利用が困難であり、大量の通信機器が必要という課題がありました。今回構築したT-BasisXは、通信機能に優れたメッシュWi-Fiと測位用受信機を一体化して利用することにより、通信機器数の設置を約60%まで削減することができました。

メッシュWi-Fi:網目(メッシュ)のようにネットワーク機器が繋がりあう通信形態。メッシュWi-Fiを複数設置することで通信経路のどこかで障害が発生しても、迂回して通信ができるなど「耐障害性」や「繋がりやすさ」に特徴がある

T-BasisXは、建機や人の位置情報、人のバイタルデータなどの情報を収集・分析する「IoT活用見える化システム」と連携しており、重機同士の接触防止や危険エリア侵入検知等を行い、現場作業の安全・品質管理や生産性向上を図ることも可能となっています。


②四足歩行ロボットが建設現場の安全確認をリモート監視「T-iRemote Inspection」
大成建設はTechShare株式会社と共同で、建設現場の遠隔監視を行うシステム「T-iRemote Inspection」を開発しています。

なんといってもこのシステムの特徴は、四足歩行ロボットによる巡回です。是非リンク先の動画も見ていただきたいのですが、中型犬なみの大きさの四足歩行ロボットが建設現場を歩き回りながら巡回を行います。

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大成建設株式会社「四足歩行ロボットによる建設現場の遠隔巡視システム「T-iRemote Inspection」 を開発」より抜粋
Youtube「四足歩行ロボットによる建設現場の遠隔巡視システム「T-iRemote Inspection」 を開発【大成建設】」

四足歩行ロボットには、360°カメラや音声通話機能もついているため、現場作業員とリアルタイムなコミュニケーションを取ることも可能です。①で紹介したT-BasisXとも連携しており、自動開閉扉の移動やエレベータに乗ることで、異なる部屋・フロア間を自由に往来したり、施工後の建築物への巡回・警備にも利用できるよう改良予定だそうです。


経営戦略とDX事例の関連性について

大成建設は中期経営計画「TAISEI VISION 2030」の中で、10年後の目指す姿【TAISEI VISION 2030】を達成するために、対策不可避の3つの変革の一つにDXを挙げています。

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大成建設株式会社「TAISEI VISION 2030中期経営計画(2021-2023)」より抜粋

3つの変革とは、建設業界の再編圧力の高まりへの対応となる「IX:インダストリートランスフォーメーション」、環境・社会課題への対応となる「SX:サステナビリティトランスフォーメーション」、そしてデジタル技術とデータ活用による「DX:デジタルトランスフォーメーション」となります。

このDXへ取り組む目的として、生産性の向上、意思決定のスピードアップ、新たなサービスの創出による競争優位性の確立があります。
今回紹介したT-BasisX、T-iRemote Inspectionなどのシステムで生産性向上を行うことで「生産プロセスのDX化」を図り、2023年にはデータ統合プラットフォームを構築することで、データドリブン経営による「経営基盤のDX化」を目指すとのことです。

大成建設は「DXにより生産システムの変革と働き方改革を実現する」ことを目標に掲げており、DXを活用していくことでグループ理念である「人がいきいきとする環境を創造する」ために活動を続けています。

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大成建設株式会社「統合レポート2021」より抜粋


まとめ

いかがでしたでしょうか。
「生産工程の見える化」のために建機やITデバイスのIoT化をすることはありますが、今回の記事はIoTの通信環境を支えるWi-Fi技術(通信技術)に着目したDX事例でしたね。

DXは5Gというキーワードがよく登場しますが、今後のIT技術の活用はいかに十分な通信環境を整えられるかが重要になってきます。5Gの特徴は「高速大容量」「高信頼・低遅延通信」「多数同時接続」にあります。
例えば今回の建設現場のIoT化を考えた場合、高層ビル内のすべての建機や計測器、各種センサをインターネットに接続するとなると数百から数千のデバイスがインターネットに接続していくことになります。通信インフラ構築の手間や維持費、通信トラフィックを考えただけでも恐ろしいですね。

デバイスによっては低容量の通信で済む場合もありますので、低価格低速通信の0Gや高速通信の5G、Wi-Fiなどを組み合わせて、用途や目的に応じた最適な通信インフラを構築していくこともDXの大事な活動です。
DXは考えることがたくさんありますね♪
次回の記事も楽しみにしていただければと思います。
タナショー


参考にさせていただいた情報
大成建設株式会社 HP
https://www.taisei.co.jp
大成建設株式会社「統合レポート2021」
https://www.taisei.co.jp/about_us/csr/library/pdf/2021/corp2021_main.pdf
大成建設株式会社「TAISEI VISION 2030中期経営計画(2021-2023)」
https://www.taisei.co.jp/assets/about_us/ir/data/pdf/2021050601.pdf
大成建設株式会社「Wi-Fi環境とAI・IoTを一体化したDX標準基盤「T-BasisX」を構築」
https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2021/210420_8100.html
大成建設株式会社「四足歩行ロボットによる建設現場の遠隔巡視システム「T-iRemote Inspection」 を開発」
https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2021/210517_8230.html

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