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【1935年台湾博覧会#1】毎日お祭り状態の50日間!その魅力とは? 第一会場編

1935年、台湾がまだ日本に統治されている頃には、台湾全土を熱狂させる一大イベントがありました。その名は、「始政四十周年記念台湾博覧会」です。

歴史専攻だった大学院時代に、修士論文のテーマを探しているときに、偶然この博覧会のことを知って、すごく興味が湧いてきました。研究論文によりますと、台湾の人口は約531万人に対して、50日間の開催期間で来場者数は延べ2,758,895人でした。しかも在台日本人は28万人だけなので、この来場者数の記録を作ったのは、台湾全土の住民のおかげと言っても過言ではないと思います。

では、どうして当時の皆さんは、この博覧会にこんなにも熱狂になりましたか?その魅力を、シリーズ記事という形で少しずつご紹介したいと思います!内容は各会場の紹介や、余興、宣伝イベント、そしてこの博覧会で働いていた「女性たち」にも焦点を当てようと考えています。

「始政四十周年記念台湾博覧会」はいつ開催した?

「始政四十周年記念台湾博覧会」の開催期間は1935年(昭和10年)10月10日から11月28日の50日間で、原則的には午前九時開場、午後五時閉場でしたが、会場によって「夜間開場」(午後六時~午後十時)もありました。

「始政四十周年記念台湾博覧会」の「始政」は、「施政開始」という意味で、1895年(明治28年)に台湾が日本の植民地になってから40年が経って、お祝いのほか、台湾での統治実績を見せる場を作るという意図もあって、台湾博覧会が開催されました。

「始政四十周年記念台湾博覧会」の開催場所は?

会場は地方会場メイン会場に分かれています。

地方会場は、基隆水族館、板橋郷土館、新竹案内所、台中山岳館、嘉義特設館、阿里山高山博物館、貴賓館、台南歴史館、高雄観光館、台東郷土館、花蓮港郷土館などで、メイン会場は台北市内の第一会場、第二会場、大稻埕分場、そして現在の陽明山にあたる草山にある分場の4つです。それぞれの会場の展示内容や余興などが違いますので、今後は記事を通して少しずつ紹介していきたいと思います。

まずは、第一会場から!

「始政四十周年記念台湾博覧会」の第一会場はどんな感じ?

第一会場は、現在というと台北市延平南路にある中山堂(当時:公会堂)から、MRT西門町駅あたりの中華路一段(当時:三線道路の一部)を沿って、南の小南門までの長細い形の会場です。敷地の面積は13,000坪で、約東京ドーム1個分です。

当時の会場地図を参考に、現在のGoogleマップと照らし合わせて、分かりやすい地図を作ってみました。

『始政四十周年記念臺灣博覽會協贊會誌』に収録された地図に基づいて加工した会場マップ

※黄色のは現在の道路を表して、赤い文字は現在の道路名などです。
※文字の表示はなるべく当時のままですが、読みやすいように現代の漢字に転換しています。
※元の地図は線と文字のみのモノクロ地図で、番号や色塗りは分かりやすいように加工したものです。

当時の写真に写っている第一会場です。
(文字表記は加工したもの。写真は『始政四十周年記念臺灣博覽會畫帖 』に収録)

当初のモノクロ会場図に、矢印マークがいくつか表記されています。文献から説明などは見つからなかったですが、自分の推測としては、第一会場を回るおすすめ順路ではないかなと思います。

ということで、矢印マークが提示してくれた順路で、会場内の展示館を回る気持ちでご紹介したいと思います!各館の展示内容に関しては、当時の『台湾の旅』という博覧会観覧案内の本、そして文献「豪華版臺灣記念博の全貌」に書かれている文字を引用します。

スタートは、①京町門から会場に入ります。

①京町門 と ㉙台北市公会堂
出典:『始政四十周年記念臺灣博覽會誌』

目の前にあるのは㉙公会堂です。

「儀式大会場」として、開会式や閉会式など、大事な式典を行う場所となります。建物自体は今でも残されていて、「中山堂」と改名されています。

出典:『始政四十周年記念臺灣博覽會畫帖』

左側には㉚事務所の建物が見えるでしょう。

そして右側は、⑧満州館(関東局、満鉄、満洲国関係出品)です。


出典:『始政四十周年記念臺灣博覽會寫真帖』

⑧満州館を観終わって、③大和町門のほうと逆方向で、先から入って来た①京町門の前を通ります。

さらに㉖台湾新聞社休憩所の前を通ります。


出典:『始政四十周年記念臺灣博覽會誌』

②栄町門の前にも通ります。

②栄町門 と ㊹日本歴史館
出典:『始政四十周年記念臺灣博覽會畫帖』

そしたら⑨交通特設館(鉄道、逓信関係出品)が見えるでしょう。

出典:『始政四十周年記念臺灣博覽會寫真帖』

隣の⑩交通土木館(鉄道、逓信、土木、道路港湾関係出品)に行ってみましょう。

⑩交通土木館は、公会堂の一部を使って展示していました。一階は交通に関する展示、二階は土木に関する展示です。

次は、⑪産業館(農産、水産、商工関係出品)に行きます。

途中に両サイドは売店が並べていますので、見ながら歩くのも楽しいかもしれませんね。

出典:『始政四十周年記念臺灣博覽會寫真帖』

隣は、正面のデザインが凄く印象的な⑫林業館(殖産局山林課、営林所、中央研究所出品)です。

出典:『始政四十周年記念臺灣博覽會寫真帖』

⑫林業館を観終わって、もう一度⑪産業館に戻って、別の出口から出ます。

左側には㊿国産館があります。


出典:『始政四十周年記念臺灣博覽會畫帖』

右側には㉒鉄道案内所、㉓新竹州案内所があります。

出典:『始政四十周年記念臺灣博覽會誌』

そして目の前に電気時計広告塔とコロンビアレコード広告塔が見えます。

出典:『始政四十周年記念臺灣博覽會誌』
出典:『始政四十周年記念臺灣博覽會誌』

もっと前に進むと、④陸橋北門が見えます。

出典:『始政四十周年記念臺灣博覽會寫真帖』

こちらからも向こうの南側会場に行ける可能性がありますが、一回会場から出ることになってしまいます。

㊶陸橋のほうから南側会場に行きましょう。


出典:『始政四十周年記念臺灣博覽會寫真帖』

㊶陸橋の真下に「陸橋食堂」があって、そして台湾総督府民政長官を歴任した祝辰巳の銅像が見えます。

橋を渡りましたら、北門と同じデザインの⑤陸橋南門が左側にあります。


出典:『始政四十周年記念臺灣博覽會誌』

右側のほうを見ると、ちょっと距離がありますが、現在も残されている八角形で二階建ての「西門町市場」が見えるかもしれないですね。

そして南側の会場でのスタートは⑬第一府県館(全国特産物出品)から行ってみたいと思います。

館内に入る前に、出入口の㊾森永製菓出張販売店と売店を見るのもいい感じですね。

出典:『始政四十周年記念臺灣博覽會誌』
出典:『始政四十周年記念臺灣博覽會誌』

全国特産物を陳列する府県館は、⑬第一府県館と⑱第二府県館の2棟があります。各棟1,000坪で、館内は府県ごとにブースで展示されるイメージです。

館内から出ると、㊺家庭文化館が目の前にあります。

出典:『始政四十周年記念臺灣博覽會寫真帳』

その隣に㊻大衆食堂があります。

出典:『始政四十周年記念臺灣博覽會誌』

次は、⑭福岡館(福岡県関係出品)に行きましょう。

出典:『始政四十周年記念臺灣博覽會寫真帖』

⑭福岡館から出て、目の前に㉔台東庁案内所があります。

出典:『始政四十周年記念臺灣博覽會誌』

そして次は、⑮朝鮮館(朝鮮総督府関係出品)に行きます。

出典:『始政四十周年記念臺灣博覽會寫真帖』

⑮朝鮮館の真正面の前に、㉘本会設置休憩所があります。ちょうどこの位置の右側で、会場外に西本願寺があります。ここで休憩しながら、西本願寺の風景を眺められるなら嬉しいですね!

休憩を終えて、隣の⑯日本製鉄館(日本製鉄株式会社出品)に行きましょう。

出入口付近の「熱風炉」がインパクトありますよね。

出典:『始政四十周年記念臺灣博覽會畫帖』

館内から出たら、目の前にある⑰三井館(三井物産株式会社出品)に行ってみたいと思います。

こちらも民間の会社からの出品です。

出典:『始政四十周年記念臺灣博覽會畫帖』

館内から出て、㊽民衆食堂が見えます。

出典:『始政四十周年記念臺灣博覽會誌』

もっと進めると、右側は⑥若竹町出口があって、左側は⑱第二府県館です。⑱第二府県館を観終わって、出入口から出ます。

㉗台湾基督教休憩所が通路の真ん中にあります。


出典:『始政四十周年記念臺灣博覽會誌』

近くには売店や㊼来々軒食堂があります。

出典:『始政四十周年記念臺灣博覽會誌』

もっと前へ進めて、第一会場内にラストの3つの展示館が見えてきます。

まずは⑲興業館(中央研究所、電気、瓦斯、機械関係出品)から行きましょう。


出典:『始政四十周年記念臺灣博覽會寫真帖』

次は⑳鉱山館(殖産局及鉱業関係出品)です。

出典:『始政四十周年記念臺灣博覽會寫真帳』

最後は、㉑糖業館(殖産局、糖業試験場及日本糖業連合会出品)です。

出典:『始政四十周年記念臺灣博覽會寫真帖』

㉑糖業館から出て、⑦南門から会場を後にしますが、会場外には「自由興行エリア」があって、お化け屋敷や水芸、女相撲、沖縄舞踊、そして珍しい動物の展示などの興行物があります。また会場内とは違う楽しみを味わえますね!

出典:『始政四十週年記念臺灣博覽會寫真帳』

第一会場の簡単なご紹介はここまでにしたいと思います。読んでいただいてありがとうございます!次は、演芸館や子どもの国など娯楽をいっぱい楽しめる第二会場です。また読んでいただければ幸いです。

ここからは後書き

「【1935年台湾博覧会】毎日お祭り状態の50日間!その魅力とは?」シリーズいよいよスタートです!ちょっと想像以上に、一記事を書くのに時間かかってしまいました。特に地図の作成ですね。卒論を書いていたときさえ作らなかった地図は、まさかnoteを書くために作るとは、予想していなかったですが、記事を書きながら、やはりこういう地図が必要だと思って、急遽作ることを決めました。

「台湾博覧会」は、本当に初めて資料を読んだときからずっと好きなテーマで、ほぼ一目ぼれです(笑)あまりにも好きすぎて、将来AR/VR技術を使って台北の街に当時の会場を再現したいくらい、なんならタイムスリップして自ら遊びに行きたいくらいです。

正直、台湾の人でも、この博覧会の存在を知らないのが普通でして、当時だと台湾全土人口の半分ぐらいの延べ入場者数があったのに、、、とても残念ですね。「歴史」でいうと、自分にとっては遠い存在、教科書にしか存在していないものだと思われがちですが、でもその「歴史」を経験した人、それで生まれた物は実は身近にあったり、現代と意外と共通点が多かったりします。この博覧会を知ることによって、台湾と日本の過去を知ってもらって、過去と現代との共通点を発見する楽しさを体験してもらって、私と同じ「面白い!」と思ってもらえたら嬉しいです!

※参考資料
『始政四十周年記念臺灣博覽會誌』
『始政四十週年記念臺灣博覽會協贊會誌』
『始政四十周年記念臺灣博覽會寫真帖』
『始政四十周年記念臺灣博覽會畫帖』

1935年台湾博覧会シリーズ投稿

#1 第一会場編
#2 第二会場・前編
#3 第二会場・中編
#4 第二会場・後編
#4.5 食欲の会場 “うまい名物”を漁る

MEMO:第一会場内の施設

会場の出入口:
①京町門
②栄町門
③大和町門
④陸橋北門
⑤陸橋南門
⑥若竹町出口
⑦南門

展示館:
⑧満州館
⑨交通特設館
⑩交通土木館
⑪産業館
⑫林業館(附檜荘)
⑬第一府県館
⑭福岡館
⑮朝鮮館
⑯日本製鉄館
⑰三井館
⑱第二府県館
⑲興業館
⑳鉱山館
㉑糖業館

案内所:
㉒鉄道案内所
㉓新竹州案内所
㉔台東庁案内所
㉕会場案内所

休憩所:
㉖台湾新聞社休憩所
㉗台湾基督教休憩所
㉘本会設置休憩所

儀式大会場:
㉙台北市公会堂内

其他の施設:
㉚事務所
㉛郵便局出張所
㉜台湾銀行出張所
㉝守衛詰所
㉞警官詰所
㉟救護所
㊱荷物預所
㊲消防詰所
㊳電力会社員詰所
㊴指定写真師詰所
㊵場内放送所
㊶陸橋
㊷倉庫
㊸便所

売店、飲食店及び興行物:
㊹日本歴史館
㊺家庭文化館
㊻大衆食堂
㊼来々軒食堂
㊽民衆食堂
㊾森永製菓出張販売店
㊿国産館

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