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レジデンシャル・エデュケーションの最前線:「勉強するための最高の環境」(Middlebury College・森公毅)

HLABがキーワードと考えている「レジデンシャル・エデュケーション」。それは単に寮で共同生活を営むということだけではありません。大学や寮ごとに制度や仕組みは特徴があり、独自の文化を築いています。そして寮生活を通した学生の経験や学びは多様です。そこで、今回は「レジデンシャル・エデュケーションの最前線」という連載で、アメリカの大学に留学している方たちに、自分たちの寮や文化づくりについて寄稿をお願いしました。

HLABでは、本場の実際の留学生活をより深く知っていただくために、動画版「留学体験記」を配信するサイト 『Living on Campus』(https://h-lab.co/campus/)を設立しました。留学希望の方はもちろん、海外大の学習環境や日常を覗いてみたい方はこの記事とともにご一読ください。

今回は、Middlebury Collegeに留学している森公毅さんによる寄稿です。

こんにちは。Middlebury College 一年の森公毅です。

元々は東京23区の出身で、都内の中高一貫校に通っていました。中三・高一の二年にかけてアメリカのワシントンD.C.に留学し、現地での高校生活を過ごしていく中で、アメリカの大学の学部での留学を考えるようになり、最終的にアメリカ北東部のバーモント州にある、極寒とスキー場で有名なミドルベリー大学に進学しました。

専攻はまだ決めていませんが、データを使いながら社会学系の研究に携われればと思っています。現在は、一年生だという点、幅広い視野と数学的な能力が社会学をやる上で必要だという点で、数学・CS・経済の授業を取っています。また、哲学への興味と言語間のつながりを見てみたいという思いから、ラテン語を1月から勉強しています。

今回は寮生活の紹介ということで、アメリカの大学での生活を少しでも伝えられたらと思います。

寮が決まる仕組み

初学期の必須科目として一年生限定のセミナーがあり、基本的にはそのクラスによって住む場所が決まる仕組みになっています。同じセミナーを取っている15人がみんな同じ建物に住むようになっていて、一緒に勉強したりする中で簡単に人とつながれるようにとの配慮がされているそうです。また、大学合格後に答えた、生活環境のこと(清潔感、生活リズムなど)や自分のこと(趣味、性格など)に関するアンケートの内容によって、ルームメイトや寮の中での住む場所などが割り当てられているそうです。

これが僕の住んでいるAllen Hallです。僕の部屋はちょうど反対側なのでこの写真では見えませんが、一階の12部屋のうちの一つに住んでいます。

Middlebury CollegeにはCommons Systemというものがあって、寮の集まりごとに合計5個のグループに生徒が分けられていて、一年・二年の間はその決められたCommonsに所属し、その敷地内にある建物に住む、というシステムになっています。そのため、僕の住むAllen Hallに住む多くの生徒は、二年生に上がるにつれて隣にあるCoffrin Hallという寮に移動する仕組みになっています。
そのほか、特定の言語のみを喋るlanguage housesや仲の良い友達同士で住めるsocial housesやsuitesといった寮もあります。

寮の優れているところ

僕の寮の場合、生徒のほぼ全員がdoubleに住んでいて、それぞれにルームメイトがいますが、それ以外の人とは部屋がしっかり分けられています。また、部屋とは別に共用スペースが至る所に確保されていて、勉強なり談話なりが出来るようになっていて、そこでの友人らとの時間が僕の大学生活にとって欠かせないものとなっています。スペースは24時間開放されているのでゆったりと過ごせるようになっており、また寮の中心かつ階段のすぐ横に設置されているので、同じフロアの誰もが簡単にアクセスできるだけでなく、他のフロアからでもアクセスしやすくなっています。

僕のフロアにある共用スペースの様子。ソファーや机、パソコンなどが用意されており、部屋の明かりも勉強するためにちょうど良い明るさになっている。

また、大学の至る所にキッチンが設置されていて、他の寮に住む同輩や上級生と一緒に食事を作ったり、談話したり、などといったことが簡単にできるようになっています。僕自身、週末に友達とご飯を作ったりすることがあって、それがきっかけになって知り合いの輪が広がったり、恋しい日本食が食べられてりして、なかなか良い息抜きになっています。

寮生活の魅力

寮生活の魅力は沢山ありますが、とりわけ素晴らしいと言えるのは、勉強するために最高の環境がしっかりと用意されているというところだと思います。寮が大学のキャンパス内にあるので、朝起きてから朝食を食べ、授業の教室に行くというプロセスが、徒歩五分圏内で済むので、非常に効率が良く、自分の時間を最大限に使うことができます。

また、一日中大学の仲間たちと時間を共有できるところも素晴らしいと思います。同じ寮に生徒たちが住んでいるので、夜遅くまで一緒に課題をやったり、一息ついた休息タイムに何気なく雑談したりと、自宅に住んでいてはできないような経験ができ、またそこから予想してなかったような学びが生まれたりして、僕にとって本当に貴重な時間となっています。友人の専攻分野が全然違う分、他の授業で学んだ話を聞くのが楽しかったり、また自分の学んだことを共有したら新たな発見があったりなど、不定期に訪れる寮生活の醍醐味を楽しんでいます。

共有スペースで友人らと会話をしていた時の様子。

文化として感じること

寮生活そして大学の文化として感じることは、Inclusiveness(直訳すると「包括」という意味ですが、ニュアンス的には「多様性を受け入れ、皆にとって暮らしやすい環境を作る」といった感じだと思います。)をとても大事にしているということです。学校の政治色としてリベラルに近い、ということなのかもしれませんが、大学として多国籍な生徒たちの文化を尊重するためにイベントを運営したり、LGBTQの人々をサポートする活動があったりと、個々の意見を尊重しようという文化が総じて見えます。

また、ResLife Staffといった、新入生をサポートするための上級生スタッフが相談役のような感じで寮の各フロアに住んでいたり、上級生のチューターが下の学年の生徒たちの面倒をみたりなど、学生同士で助け合おうという文化も感じます。

まとめ

僕にとって、寮生活はアメリカの大学に進学したいと思った最大の理由でした。

限られた大学での四年間なのだから、大学での学びや活動にどっぷりと浸かれる生活がしたいと思っていました。実際にキャンパス内に暮らす中で、自分の時間を自由にコントロールできる分、授業での勉強もその他での活動も、または友人らとの楽しい時間も、何もかも自分次第で、多少睡眠サイクルが荒れたりすることはありますが、この経験を通じて学んでいることは、今後の僕にとってかけがえのないものになっているなぁ、という実感があります。また、何気なく友人と共有した時間の中から予期せぬ学びがあったりするなど、大学生活において周りの人が僕にくれるものは想像以上に大きいな、というのも数カ月経ってみた上での感想です。勉強面そして生活面でどれだけ成長できるかこそが、大学においてとても大事な学びなのではないか、と思います。

以上です。記事を読んでくださりありがとうございました。


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