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ご飯を食べる

私は食事が苦手だ。
最近、「苦手だった」に変わりつつあるけれど。

「私なんて生きてなければいいのに」って思考に支配され続けてきた私は、いつのころからか、生きるために必要な、摂食行動を拒否するようになった。
食べても吐いちゃう、拒食症ではない。
食べたらちゃんと上ではなく下から排出される。
ただ、食べることそのものが、苦手だった。

特に親しくない人と同じ食卓に着くと、喉がキュッと締まって、食べられない。
中学時代ブラックホールと言われた私が、今度は小食と言われるようになった。
家族で囲む食卓なんて最悪だ。
残しちゃいけないから頑張ってお腹に詰め込むのだけれど、もはや何の味もしない。
高校にお弁当を持って行かなくなった。
クラスメイトが早弁する中休み、私はただ座って次の授業の準備をしていた。

お腹は空いている。
でも、「食べなきゃならないのなら、我慢しよう」という謎の忍耐。
だんだん、自分がお腹空いているのかも、わからなくなった。
空腹感を忘れた。
食事を摂らないと、生理が来なくなって、楽だった。
苦手な摂食を避けられ、食費もかからず、毎月ひどく苦しむ生理も来ない。
最高だ。

「ちゃんと食べな」
と言われる度に、ストレスだった。
食事を楽しめる人間に、食事を苦痛に思う気持ちはわからない。
だって、私からすれば、食事を楽しむ気持ちがわからない。

彼氏と出会ってすぐ、食事に誘われたときも、私は全然食べなかった。
全然知らない年上の男の人と、気持ちよく食事なんてできない。
味も、わからない。

でも今は、彼氏と食べるご飯が大好きだ。
いつも行くイタリアンは、最高のお味。
この前イタリアに行って本場のピザを食べたけれど、私には彼氏と食べるピザの方がおいしく感じた。
焼肉とか、うどんとか、お刺身とか。
全部美味しかったなあ。

食を避けて生きてきたから、私は知っている食べ物が少ない。
焼肉も回転すしも経験が乏しい。
キャバクラで働いて、初めてラーメン屋さんに通った。
ジャパレスで働いていても、知らないメニューがたくさんある。
いつか「すきやき」ってやつに挑戦してみたい。
しゃぶしゃぶの、肉突っ込んである版?とか訊いたら、それはただの鍋だと笑われた。

人と食べるのも、人がいる空間で食べるのも苦手だから、飲食店なんて恐怖でしかなかった。
今もちょっとそうかも。
親しい人と一緒でないなら、わざわざ食にお金をかける必要はない。
だから、ロンドンにいても、私はスーパーのご飯で生きている。

1日1食は食べる。お菓子でもフルーツでもいいから、食事の時間を設ける。
バイト先は賄いがある。苦手なお米はなしにしてもらっているけれど。
お米は消化にエネルギーが必要で、疲れてしまう。

ロンドンに来てから好きになったのは、クロワッサン!
Sainsbury’sのベーカリーで、75pのクロワッサン。甘くておいしい。
売り切れていることが多いので、見かけたら絶対買う。

ちょっとずつ、食への抵抗はなくなっているけれど、新しい食べ物に挑戦するのはやっぱり誰かと一緒でないとできない。
早く、彼氏に会いたいなあ。
そしたら一緒にいろんなものを食べるんだ!

私の価値観に、価値を見出してくださりありがとうございます。