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情景239.「風車村の朝支度」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「風車村の朝支度」です。

朝、ひざしと風を浴びる。
恵風が羽をなびかせ、風車が回る。
風車の“まわるアレ”って、羽(羽根)って言うんですね。

続きものとして「情景239【風車村の朝支度】」と「情景240【風車村で音を聴いて】」を覧ください。

このお話は、情景にある「音」を気にしながら書いていました。

ほら、文章って音が鳴らないでしょう?
でも、“よい情景”というのは、音がするし光はあるし風はそよぐし、匂いがある。そういうふうに私は考えています。

よい情景、よい文章とは、音や光や風や匂いを生んでくれるものなのです。

実際には、文章から音は鳴らせません。
ただ、イマの技術で工夫をすれば、動画的に文章と音を同時に楽しむこと自体はできるでしょう。

それでも、画面から流れ出る音と同じように、ご自身が読み取った何かによって生じた内面の音にも耳を傾ければもっと楽しい……と思いながら書いています。

そこにきて、“風車村”で書き起こした文章の話です。
情景をかもす文章の一例として、私は木や蝶番の「キィ」と鳴る音を好んで用います。
今回も含まれていますね。

「今日の風の方向は——」
 木枠のガラス窓を開けると、蝶番がキィと鳴く。叩けば割れそうな乾いた窓。身を乗り出して川を眺めれば、一隻の渡し船がたゆたうように横切っていた。
 川沿いに風車が十九基。

『あなたが見た情景』情景239【風車村の朝支度】

他愛のないオノマトペですが、この「キィ」が案外馬鹿にできない。
むしろかなり面白い。

床板を踏んで軋む音。
古い扉の蝶番の摩擦によって生じる音。

そうした要素を拾って添えることで、文章はより臨場感のある場(情景)として瑞々しくなってくれるのかな……と。

さて。
この“風車村”は私自身結構お気に入りの情景です。
オランダのキンデルダイク、エルスハウトの風車群のイメージで。

音に耳を傾け、振動に身を委ね、微睡む。
そんな情景。
お楽しみください。


あなたが見た情景』は、目の前の景色を眺めるように情景を思い描ける、ちょっとしたお話のあつまりです。

どこからでも何話からでも好きなところから読みはじめて大丈夫。
気になったタイトルをひらいてみてください。



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