情景243.「霧雨の日」【掌編小説 at カクヨム】
今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「霧雨の日」です。
霧雨と、けぶるもや。
広がる海はもやに飲まれ、その先は不明瞭なまま。
先の見えない不明瞭さを、霧雨のもやを眺める男女の関係に重ねてみる。
長谷川等伯の松林図屏風。
けぶるもやと場の湿度を感じさせる、とても好きな情景です。
現物は以前、九州国立博物館の特設展でたまたま拝見することができました。
魅入っちゃいますね。
ぼんやりとしていて、曖昧な有り様。
ただ、先には何かがあるのだろうと、そう感じさせる“もや”と影。
湿潤な日本ならではの質感というものを感じさせてくれます。
そうした要素をほんのり盛り込んだのが、この「霧雨の日」。
基本は男女の色恋の話です。
パキッと割り切れる青春的な恋もイイのですが、こういうジメッと割り切れない男女の話も好きなので、そこにけぶるもやを重ねたらこんな情景になりました。
あえて風邪になりたがってそうな女の子と、なんとなく察して帰そうとする男の子と。
お互い知った仲なので強くも下手にも出づらい……。
大人の方も読んでいて「あぁ、ねぇ」と思ってくれるような話になっていたら嬉しいです。
未練がましいと思われたくない。
でも、スパッと手放せるわけはない。
そんな面倒くさい感じ。
ともあれ、霧雨の日の情景。
お楽しみください。
『あなたが見た情景』は、目の前の景色を眺めるように情景を思い描ける、ちょっとしたお話のあつまりです。
どこからでも何話からでも好きなところから読みはじめて大丈夫。
気になったタイトルをひらいてみてください。
最後までお読みいただきありがとうございます。ぜひ感想を聞かせてください。