見出し画像

保育園の社会学②あるべき姿についての私見

前回の記事で、現状の仕組みでは、保育園が保護者や子どものニーズを踏まえてサービスの質を上げようという動機は生まれにくいということを書きました。

では、どんな仕組みであれば運営側が質の向上に取り組めるのか?考えてみました。

私が思う、現在の状況の問題点は下記の通りです。

①需要に対して供給が少ない
→地域により状況は異なりますが、定員がどれだけ埋まっているかを示す「定員充足率」は全国で89.7%と高い水準にあり、保護者は保育園を選べる状況にありません。

画像1

※厚生労働省 保育所等関連状況取りまとめ(令和4年4月1日)

②保護者が支払う金額はほんの一部(保護者は重要な顧客ではない)
→3歳児以上は無償化で、給食費以外は国と自治体が負担、2歳児以下も利用者負担額はごく一部で、しかもその負担額の上限は国と自治体が定めています(公定価格)

③サービスの質の評価が外部から見えにくい
→利用者の口コミ情報がほぼなく、入ってみないと分からない。

問題点を踏まえた、望ましい仕組みは下記の通りです。

【1】供給を増やす
・特に待機児童の多い0歳~2歳児について、定員を増やす。
→選択肢を増やして、「入れるだけでありがたい」状態から、「入りたい園を選べる」ようにする。園側の競争を促す。

・入園の基準を緩め、共働きでなくても受け入れられるようにする。
→「働いていないと入れない」ではなく、「入りたい時に入れる」ようにする。
→出産で専業主婦になっても預け先が確保できれば再就職しやすくなる。
以前の記事で触れた「共同養育」を促進し、子育てにおける母親の孤独を解消する。

【2】情報開示を促進する
・東京都福祉サービス第三者評価のページを行政のホームページ及び申し込み時のリーフレットに記載する
→評判の悪い園は淘汰されるか、改善を迫られる

【3】園と保護者の直接契約にする
現状の認可保育園の行政が申し込みを取りまとめて割り振る制度をやめ、直接契約にする。
→園側は選ばれるために独自性や魅力ある取り組みを打ち出す動機が生まれる。

原理原則として、現状の需要過多による「選べない」という問題を供給を増やすことによって解消し、「選べる」ようにすること、また情報開示によって事前に「いい園かを判断できる」ようにすること。
この二つが実現すると、園側は質の向上に取り組まざるを得なくなります。

全てを市場原理に任せるとそれはそれで別の弊害が出てくる(本当に利用したい人より経済的に余裕がある人が優先される等)とは思いますが、現状の需要過多、事業者の質の向上への努力の有無が入園希望に反映されない状況は、絶対に改善していく必要があると思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?