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【感想文#03】「わざわざの働きかた」平田はる香(著)を読んで

 パプアニューギニア海産の武藤北斗です。書籍紹介3冊目も働き方に関する本となりました。

「わざわざの働きかた」平田はる香(著)

 長野県にある「パンと日用品の店わざわざ」平田はる香さんの経営方針や働きかたをまとめた書籍。ビジネス書というカテゴリーになるだろうけど、人としての生きかた、接しかたなどもっと大きな枠で受け止めたい本。

 ダイナミックにたくさん使われている写真はお店の日常を色濃く表し、「同じことの繰り返しで、楽しい仕事はありません」と仰っていますが、愛情とそして心地よい自信にあふれている日常の一コマを感じることができます。

似すぎているパン屋とエビ工場

 わざわざの存在を知ったのは1か月ほど前の平田さんのnote記事。衝撃が走りました。働きかたに関して、同じ考えでしかも同時期に実践している人がいることに。

 平田さんは従業員への感謝の気持ちから働きかた・雇用環境を考えていきます。そんな中で生まれたアルバイトさんへの「フリー出勤制」はまさに僕らの「フリースケジュール(詳細はこちら)」。多少の違いがありますが、現場に合わせた形をそれぞれが追求していった結果ですね。

 職種も場所も違う会社が、日本で同時にこんな働きかたを始めたことは、とても意味のあることだなと感じています。きっと僕が知らないだけで同じような取り組みは沢山あるのかもしれません。

考え方は一緒だけど方法は違う

 だけど面白いのは、同じ部分ばかりでなく、違う部分もいっぱいあること。例えば平田さんがこんなことをtweetしています。

 僕は従業員を「○○さん」と呼ぶことで統一していて、あだ名とかありえないんです。しかも当日にふざけたあだ名って絶対いやです。笑

 でも向かっている方向は一緒だと思っています。

 だから全部が一緒じゃないことが心地よいなと思ったし、違いをこんなに心地よく素直に受けいれるというか、楽しめていること自体が嬉しかったりもします。

 前置きが長くなりましたが、そんな僕が「わざわざの働きかた」を読んだ感想と自分の思いを絡めながら綴っていきます。想い多めなのはご了承ください。

従業員の採用に関して

採用の時点で相性のよい人を雇用することが必須(5ページ)

 わざわざでは応募する際にこの本を読むことが条件になっています。

 それまでは平田さんは辞めていく人を見送る中で、何が悪かったか、何を気をつければいいのかを考え改善していきます。辞めていった人をせめるのではなく、完全なる自己否定がモチベーション。その結果、入社してからの行き違いを減らし、更には相性がよい人と巡り合う確立を高めるためにこの応募方法にいきついたようです。

 「本を読んでから応募」というのは一見すると上から目線に見えがちですが、会社側が先に面接されているという側面もあります。更に「さらけ出すことで行き違いをなくす」というのは、常日頃から一つ一つの判断を大切しているからこそ出来ることでもあります。

 僕は面接で人を判断するなんて無理だなと思っていて、パート募集でも700字の作文を書くということを応募条件にしています。ですからホームページを調べたり、著書を読んだりしてくれるでしょう。その中で自分に合う会社なのかを判断してほしい気持ちがあるのです。通ずる部分があるのかなと思っています。

信頼関係に関して

仕事ができるできないとかスピードが速い遅いというのは、個人差があるのであまり関係なく、呼びかけると返事をしてくれるような小さなコミュニケーションと、頼んだことが滞りなく終わっているという、ただの事実の積み重ねから信頼が生まれてくる。(28ページ)

 スピードなどの個人差に関しての考え方はまったく一緒なんですが、事実の積み重ねが信頼に繋がるという言葉にハッとしました。

 僕は人間という生き物を信用していないのに、従業員は信用している。それは会社としての上下関係が大きく作用しているのだけど、もっと人間味のある作用もあるんだけどなと言葉にできずもどかしく思っていました。だからこの言葉に本当に救われた気がします。

 ただ、事実の積み重ねを見るのだけど、失敗を許さないわけではない。そこが平田さんのいいところ。次はどうなのか、何を努力しているのか、そして隠したりといったことが起きないような環境も考える。気に掛ける視点が気持ちいい。

働きかたの方針

シンプルに「わざわざに関わる人が大体幸せであること」を考えると良いかもしれないってこと。(13ページ)

 まさにこれです。すべての基準をこれにしても良いと思います。雇い主の責任という言葉もありましたが、一緒に働いてくれる従業員への感謝の気持ちと責任を自覚したとき、この発想に辿り着くのかなと感じました。きっと従業員以外の関わる人への幸せも考えている気がします。

 僕自身も大事な基準は人だと思っていて、それができれば自然と会社の利益も出ると思っています。考える順番がとても重要です。

 そのうえでお金を手段としてフル活用する必要があると思っているのですが、経理や税務などを無理にやらずに外部に任せる平田さんは、関わる人を自然と増やしながら、お金をうまく使っているなと思います。そして会社の経営理念である地域の発展や雇用創出にも合致しています。

 関わる人がいい感じでほどよく幸せ(プラス僕的には淡々と毎日を過ごす)。当たり前のようでなかなか難しい社会ではあると思うけど、目指したいです。

仕事をとっておく

手が空いたらやってほしい仕事を社員が常にリストアップしていて、アルバイトさんが手が空いた時に、振れるように準備することにした。(20ページ)

 具体的な細かいことに関しては、行き着くとこは一緒だなーと思いました。できることを片っ端からやるのではなく幅を持たせる。

 例えばうちでは書類の整理や事務所の掃除などは、出勤人数が多い時にやることにしています。これやるだけで、自由に出勤というものがたいしたことに感じなくなります。

 アルバイトの特権は「自由」と書かれていましたが、その自由を作り出す工夫をするのが社員や経営者の大事な仕事の一つと思います。あーわざわざで働いてみたい。

働きやすいという理由だけで入社

皆がアルバイトのメリットだけに目をむけて自己の都合だけで、わざわざで働きたいというのなら、私はそういう方を雇う気はない。(20ページ)

 ここは僕と違う点ですね。僕はもう「自分のメリットだけを突き進めーーー!!」「仲が悪くなければいいから、仲良くなんかしなくていい!!」みたいな感じなので。

 これは水産工場とお店という違いが大きく表れている気がします。

 工場はマスク、帽子、前掛けをして、話もせずに黙々と作業を続けます。閉塞的なせいか従業員の派閥や争いが多いような気もします。だから極力干渉しあわない職場こそベストだと思っているのです。

 お店運営での苦労は僕には分からないので、このあたりの感覚的な話はいつか直接お伺いできればなと思っています。でもこれも目指しているとこは一緒で、働いている現場を思ってこそのそれぞれの判断であることは明らかです。

自由とルール

自由というのはとても難易度が高く、ルールを完全に理解した中でしか生まれない(20ページ)

 まさしく同感です。鎌田實さんの「自由とは、できる限り無制限に近くあるべきですが、そこには必ず少しの「秩序」と「制限」が必要になるのです。」という言葉を思いだしました。自由だからルールを作るという面があるし、それを理解して守ることは絶対条件です。働きかたは自由だが、仕事には厳しい。そこをはき違えてはいけないと思います。

毎日同じことの繰り返し

仕事は毎日同じで変わることなく、面白い仕事など一つもありません。(25ページ)

 この感覚を認めるというか、はっきり宣言するところも気持ちがいい。もちろんその一つ一つを極めていくことは難しいのだけど、あえてマイナスな捉え方から仕事を理解してもらう。

 この本を読んでから応募という特性と、平田さんの性格から来ているとは思うけれど、仕事へのプライドと自信も窺わせますよね。

1日1日の単純作業に目がいって、数年の楽しさを分かち合えない人は、わざわざには合わないかもしれません。(26ページ)

 このフレーズしびれました。最高です。ただ、単純作業なんだけど微妙に変わっていく楽しさ、小さなことにハッと気づいた時の喜び、その時は何となしにコッソリかみしめるのですが、数年後に振り返るとその過程が本当に面白かったりします。それを分かち合えるのは幸せなことですね。たぶん一緒じゃないかなと思います。

最後に

夫婦で働くこと、仕事の優劣、リーダー論、子育てと仕事、理念など重要な内容が続きます。一つ一つ話していきたいとこですが、どうもこれ以上共感の文章が続くと嘘っぽくなるのでやめておきます。ぜひ書籍を読んでみてください。

それでは最後に一つ

働いている場所がわざわざなだけで、わざわざはただの仕事。自分は経営者なので、自分とわざわざが一心同体のような気持ちだけど、それを求めるのは難しい。(36ページ)

 さらりと書いてるけれど、僕は心に沁みました。押し付けは経営者や会社のことが大好きな人が陥りやすい落とし穴のように思います。

 でもこう思えてからは、もしかすると平田さんの周りには一心同体とまではいかないけれど、会社のことを共に真剣に考えてくれる従業員は増えたんではないかなと、僕の周りの人達を思い浮かべながら考えていました。

いい本に出会えた。

株式会社パプアニューギニア海産
工場長 武藤北斗

「わざわざの働きかた(平田はる香著)」はこちら

「生きる職場(武藤北斗著)」はこちら

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