樋口一葉は
武士の娘という矜持と
貧困という現実の狭間で
苦しみ喘ぎ世を嘆く。
宿命からは逃れられない
明治の女の生き様。

体を売って金を稼ぎ、
貧困故に金を盗み、
銭のために結婚する。
そんな女達の心情に
一葉は自分の境遇を重ね、
小説をしたためていく。

『にごりえ』のお力、
『たけくらべ』の美登利、
『十三夜』のお関、
『大つごもり』のお峯と、
一葉は彼女たちの
心情に寄り添って綴る。

生まれで決まる人生は
決して変えることはできない。
生きることに懸命であっても
哀れな宿命は諦念となり、
死ぬ以外の策は消え失せる。
明治女の穢れた宿世を
これほど美しく書ける才能。