究極の「ポトフ」

田舎の城に住む
19世紀末の
美食家と料理人の
深い絆を描いた映画が
「ポトフ」である。

美食家のモデルは
『美食礼讃』を著した
ブリア・サヴァラン。
料理を藝術にまで高めた
ガストロノミーだ。

映画に音楽はなく、
包丁など調理する音と
小鳥のさえずりだけ。
セリフもほとんどなく、
淡々と料理が作られる。

舌平目のボンファムは
バターでローストした
舌平目をミルクの中で
ポッシュした貴婦人料理。
できあがって皮を剥ぐ。

ヴォル・オ・ヴァンは
鶏のトサカとザリガニと
クネルのクリーム煮を
パイ包みにした逸品。
切り分けた時の感動!

映画の重要な料理は
ユーラシア皇太子を
もてなす究極のポトフ。
フランス伝統家庭料理を
藝術にまで高めるのだ。

美食家のポトフとは
仔牛のすね肉と牛頬肉、
鴨肉と極めつけの牛骨髄、
根セロリやポワロで
長時間煮たものである。

すべての料理は三ツ星の
ピエール・ガニェールが
完全監修したものだ。
炭を熱した竈で作り出す
垂涎のフランス料理たち。

美食家が料理人に言う。
「すでに持っているものを
求め続けるのが幸せだ。
それが君だよ」と。
二人は20年越しに結ばれた。