『たけくらべ』

樋口一葉の生誕場所、
下谷竜泉寺町に
たまたま赴いたことで、
『たけくらべ』さえ
読んでいない事に気付いた。

さっそく読んでみるや
あれ驚きの文体である。
お話しが読点で延々続き、
長い段落の最後にようやく
句点がくるというもの。

竜泉寺町は吉原近く、
花魁がいる遊郭の辺り。
姉が遊女の少女美登利と
寺の跡取り少年信如の初恋と
街の少年たちを描く作品。

最初こそ読みにくかったが、
七五調で書かれているだけに
リズム良く声に出せば、
生き生きした情景が浮かび
小気味よく読んでいける。

美登利が暴れん坊に
気っぷ良く言い返す様は
胸のつかえが下り、
恋心にしおらしくなるは
とても愛らしい。

遊郭近くに暮らす
明治時代の子供たち、
祭りなどの風俗が
情緒豊かに表現される。
最後の文章の切れもいい。

「美登利は何ゆゑとなく
懐かしき思ひに違い
棚の一輪ざしに入れて
寂しく清き姿をめでけるが、
聞くともなしに伝え聞く
その明けの日は信如が何がしの学林に
袖の色かへぬべき当日なりしとぞ。」