ぼくのきよしこ

きよしは吃音のこどもだった。
か行とた行が頭に来る言葉を
上手く話し出すことができない。
だから自分の名前を聞かれても
ききききききき、とどもって
すっと、きよしといえない。

雪の降る日、きよしこが
突然きよしの前に現れる。
きよしこはきよしの分身、
おなじ顔とおなじ体を持つ。
きよしの吃音の悩みを
やさしく聞いてくれるのだ。

吃音ではなくとも
だれにでも悩みはある。
ぼくにだってある。
やりたいことがやれずに
どうしてそうなるのかと
孤独になることも多い。

そんな悲しく苦しいときに
自分の分身が現れてくれ、
悩みを聞いてくれたら
どんなに良いだろう。
やさしくあたたかく
ぼくを包んでくれる分身。

ぼくのきよしこ。
ぼくの名前はつよしだから
さしずめ、つよしこだ。
孤独な夜につよしこが
現れてなぐさめてほしい。
勇気を与えてほしいのだ。