ペンキ屋さん家族

「お前、学校行かないんなら
ペンキ屋をやれ」
息子はそんなわけで、
父に弟子入りした。
父が親方になった。

初日から蹴飛ばされた。
「ぼやぼやしてんじゃない」
痛えと膝をさすると、
「さすってんじゃねえ」
一喝された。

「息子だから
他人よりも厳しくする」
職人世界では当然のこと。
身内だからと甘くしては
真っ当な仕事はできない。

鍛えられた息子は
今や立派な一人前。
親方なしで仕事を任される。
一軒家の壁をすべて
一人で塗りきる。

職人がいないから
商売は大繁盛。
忙しくて仕方ない。
女将さんも駆り出され、
一家全員で働くことも。

我が家は今、そんな
ペンキ屋さん家族に
壁と屋根を塗ってもらってる。
何度も重ね塗りする
とても丁寧な仕事である。

息の合った連携プレーは
見ていてとても気持ちいい。
壁も屋根も塗りの出来映えは
惚れ惚れするほど美しい。
我が家が新築同様になった。