森茉莉、可愛いお祖母ちゃん

いつも夢想していて
現実味のない暮らしをしている
60代の老いたる少女。
森茉莉のエッセイ
『贅沢貧乏』を初めて読み、
「こんなお祖母ちゃんがいたら
さぞかし可愛かったろうな」と
大いに魅せられてしまった。

約束すれば1時間は平気で遅れ、
地図がなければ目的地に到着できない。
着るものは穴の空いた服も平気、
色彩が気に入ればそれでよし。
お喋りを始めれば脱線ばかり。
お金もないのに英国製の紅茶や
チョコレートには目がない。
お姫様育ちだから仕方がないのだ。

こんなお祖母ちゃんいたなあ、
思い出すのは妻の母である。
やることなすことメチャクチャ、
約束の時間など間に合ったことなどない。
話しも支離滅裂で掃除洗濯も大嫌い。
でも人の世話は大好きで、
食べることも好きで友達が多かった。
老人なのに少女のように可愛い人だった。

生まれ育ちがいいからしょうがない。
家にはお手伝いさんがいつもいたし、
生まれたときから体も弱かったから、
何もしなくて大丈夫だった。
お姫様のような人だったから、
常識外れではあったけれど、
人には優しく愛情豊かだった。
亡くなった今でも良く思い出す。

可愛いお祖母ちゃん。
飾らないのになんだか上品で、
仕草や話し方は少女のよう。
そんな可愛いお祖母ちゃんを
見かけなくなったように思う。
しっかりとして小うるさく、
癇癪持ちのお祖母ちゃんなら
そこら中にいるように思う。
お姫様育ちが少なくなったからだろうか?