加藤和彦の「大統領殿」

「大統領殿」という歌がある。フランスの詩人、ボリス・ヴィアンが書いた「脱走兵」に加藤和彦と松山猛が歌詞をつけた。高石ともやは「拝啓大統領殿」で歌詞も少し異なるが意図するところは同じだ。以下は加藤和彦が亡くなる直前まで歌った詩である。素晴らしい曲、歌うと泣けてくる。

大統領殿
お暇があれば 読んで欲しい
この手紙を
ぼくは今 戦場へゆく
徴兵カードを もらったところ
ぼくは逃げる 戦いたくない
哀れな人を 殺したくない

大統領殿
腹を立てないで 聞いて欲しい 
ぼくは逃げる
父は昔 戦争で死んで
子供たちは 泣きじゃくった
女手ひとつで 苦労していた
母も今は 墓の中

爆弾で もてあそび
ぼくの心を 奪っていった
旅に出よう 明日の朝にも
ぼくの住み慣れた 家をあとに

世界中の すべての兄弟
ぼくはゆこう 云って歩こう
人生を 大切にしなさい
ぼくらは みんな兄弟だ

血を流すなら あなたの血を
猫っかぶりの 偉いお方
ぼくは逃げる 武器は持っていない
憲兵たちよ 撃つがいい