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読書感想『僕は上手にしゃべれない』

『僕は上手にしゃべれない』
椎野直弥 著

中学生になった悠太は、吃音を隠したいために自己紹介も仮病を使って逃げ、自発的に人と関わることができない悩みを抱えていたが、「しゃべることが苦手な人でも大歓迎」と書かれた勧誘チラシに心惹かれ、放送部のドアを叩く。

ご自身も吃音でいらっしゃるという椎野さんによる、吃音者のリアルな苦しみを描いた青春小説。
FBの読書グループでもお勧めされる方がいらしたのと、息子の友だちや、自分の職場にも吃音のお子さんがいるため、他人事に思えず読んだ。

吃音者の悩みや苦しみは当事者が書いただけあり、読んでいて、こちらも息が苦しくなるほど悩まれていることが伝わってくるので、理解を得るには最適な本ではないかと思う。
しかし、著者が中学生だった頃と現在では法整備含む支援制度も変化しており、この本に出てくるような配慮の無い授業や、本人や家族に調査や相談のない対応はだいぶ少なくなっている可能性もあるので、若い読者の方にはその辺りはこれをきっかけによく調べて、吃音に対する支援やトレーニング法がまったくないわけではないということと、それを更に拡大していく必要を知って欲しいとは思う。

恥ずかしながら、息子は小学校の頃、吃音のクラスメイトの物真似をする同級生にあわせて笑ったことがあり、それを悪いと知らずに私に話して、真似した子ともども、私から激しく叱責されて、どんなに非道なことをしたのか思い知った過去がある。その後、息子も同級生も二度と真似や嘲笑はせず、宿題を教えてやったり、一緒にいたずらをするほどの仲良しになったが、私は今でも、彼や彼のお母さんが感じたであろう悲しさや悔しさを思うと申し訳なく思う。
なぜなら、先天性聴覚障害のある私の従弟は読唇や発声はできたが、やはりうまく発音ができず、けげんな顔で見られたり、長い話になると筆談に変えるという苦労をしており、その辛さは身内でもほんとうには理解しきれないほどだと我が身で知っているからであり、そういう悲しい思いをする人たちが少なくなるよう、私たちはきちんと知識を得て、己の無知からくる偏見や差別をなくす努力を常に怠らないようにせねばならない、と強く思うのである。

#夏のオススメ

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