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本当は商談なんてしたくないバイヤーが、営業とマーケターへ期待する価値を考えてみた

こんにちは!クロスコムの本田(@HONDAWeb1)です。BtoB領域で企業の商談化数を増やすために、MA/CRMツールを活用した導入・運用代行をしています。

最近いろいろなサービス契約を検討している中で、企業の営業担当と会話する機会が増えました。ただ会話の中で思うところが、事前にサービスページや請求資料で仕入れてる情報を、30~60分のMTGで改めて丁寧に説明されてもな…と思っています。

なぜ自分がこう思っているのか顧みると、インターネットの普及で買い手が独自で収集する情報の量と質が上がっていることが原因で、商談で営業に期待することが変わってきているからでは?と考えているからです。

そこで今回は、BtoBマーケティングでも課題として挙げられる商談化に焦点を当て、バイヤー視点で営業とマーケターへ期待する価値について考えてみました。


バイヤーは商談なんてしたくない

出典:Gartner Says 80% of B2B Sales Interactions Between Suppliers and Buyers Will Occur in Digital Channels by 2025

1.バイヤーの購買行動の変化

 米国アドバイザリー会社のガートナー社が2020年にプレスした内容では、今後 5 年間でバイヤーとサプライヤー間のデジタル インタラクションが急激に増加し、従来の販売モデルが破壊されると発表しています。

 Gartner の販売の将来に関する調査によると、2025 年までにサプライヤーとサプライヤー間の B2B 販売インタラクションの 80% は、購入者はデジタルチャネルで発生すると予測。その理由として挙げているのが、バイヤーの営業に対する意識変化です。

 実際にバイヤー全体の33%が、売り手なし(営業なし)の販売体験を望んでおり、ミレニアル世代のバイヤーではその傾向が44%と、より顕著に数字で表れています。

なぜバイヤーが、売り手なしの販売体験を求めているのか?明確なデータはありませんでしたが、私個人の見解を次に書いていきます。

2.バイヤーが営業なしの販売体験を求めている理由

①意思決定に必要な情報がカンタンに収集できるから
②自身で購買プロセスをコントロールしたいから
③独自リサーチの方が効率が良いから

個人的考察

①意思決定に必要な情報がカンタンに収集できるから
バイヤーは、デジタルリソースを利用して簡単に必要な情報を収集できます。豊富なデジタル情報により、プロダクトやサービスについてより広く深く学べるから、営業の必要性を感じていないのではないでしょうか(正確にはプロダクト営業の必要性を感じていない)。

②自身で購買プロセスをコントロールしたいから
バイヤーは、自分のペースで情報を検討し、営業からの無圧力の環境で意思決定を行いたいと考えている人は少なくありません。つまり、購入プロセス全体を自身で管理し、より納得のいく意思決定ができるようにしたいからではないでしょうか。

③独自リサーチの方が効率が良いから
バイヤーは、自身の好きなタイミングで情報を集めることができるので、時間と労力を削減できます。営業との日程調整やまとまった時間確保が必要ないので、効率よく購買プロセスを進めることができるのではないでしょうか。

以上から、バイヤーは自身の購買体験をオンラインで自己完結したいと考えていることが伺えました。

バイヤーが営業へ期待する価値

バイヤーの意思決定フローにおける価値基準(スケダチ社高広氏の提唱内容を参考)

 しかしBtoBビジネスにおいて(特に無形サービス)企業間の関係値は、購買決定の要因において重要な要素だと思いますし、バイヤーも営業担当との対話で期待する価値はあると考えています。

 一見、前項と主張が矛盾しているように見えますが、正確には「営業のセールストークと、バイヤーの営業へ期待する価値」にギャップが起きていることが、商談したくないと考える原因だと私は思っています。

そこで、本当は商談したくないと考えているバイヤーが実は、営業へ期待している価値が何なのかを考察しました。

1.自身の下した意思決定が正しいと確信を持ちたい
2.営業との対話を通じて、信頼できるサプライヤーを見極めたい
3.新しい気づきが欲しい

個人的考察

1.自身の下した意思決定が正しいと確信を持ちたい

ほとんどのバイヤーが今、営業と対話する前から課題定義からソリューションの要件定義まで、ほとんどの意思決定を自身の中で終わらせています。つまり、商談の場ではすでに購買決断に関する考えが、ある程度まとまっているわけです。

なので商談の場では、自身の課題やソリューションについて説明しながら営業担当との対話で「自身の意思決定が間違ってないと確信に変えてほしい。間違ってたら指摘してくれ」と期待しているのではないかと思います。

その領域においてソリューションの知見は営業より劣るものの、やはり現場の課題を一番に理解しているのはバイヤー自身なので、自身の考えも下した意思決定も間違っていないだろうと思っているケースが多いですね。

2.営業との対話を通じて、信頼できるサプライヤーを見極めたい

しかし、事前のオンラインリサーチでは企業・ヒトの「情緒」を理解できないので、最適なソリューション提供者としてふさわしいかを、営業担当との対話を通じて見極めようとするわけです。

比較検討として、バイヤーはほかに2~3社の企業ともコンタクトを取っているので、営業担当との対話を通じて信頼できそうか、積極的に価値提供してくれそうかと「情緒的価値」で最終判断しているのだと思います。

いくらBtoBビジネスでも、100%合理的に判断することは不可能です。最終的にこのサプライヤーへ依頼して良かった!と思うには、機能的な価値だけでなく、企業やヒトに対する情緒的な価値で判断するのだと思っています。

3.新しい気づきが欲しい

そんな「最終決断」の意気込みでバイヤーが商談に参加しますが、実は営業担当からの新しい気づきを潜在的に期待しているのではないかとも思っています。

現時点で考えるベストソリューションを超える、より洗練されたソリューションを提示されても、あなたは飛びつかないですか?そもそも定義していた課題が表面的で、本質的な課題を提示されても、課題を見直そうと思いませんか?

私の営業経験からお伝えすると、バイヤーは常に自分の考えるアイデアを超える新しい気づきを潜在的に求めていると思っています。X広告で集客数を伸ばしたい!と思っていても、相手が「Meta広告の方が圧倒的に集客数が伸びます!」と論理的に納得できる説明をされると、実利的に相手の話に耳を傾けたくなるものです。

マーケティングでも営業でも同じで、バイヤーの潜在的なニーズ(インサイト)を突く価値提供は求められるので、新しい気づきが与えられるよう、表面的ではなく本質を見抜く洞察力を日々研鑽することです。

以上が、私が考えるバイヤーが営業に期待する価値でした。

バイヤーがマーケターへ期待する価値

販売プロセスを促進するコンテンツ

こうしてバイヤーの行動変化と営業へ期待する価値を踏まえて、ではマーケティング担当はどう接し方を変えればいいのか。マーケターとしてバイヤーへ提供すべき本当の価値は何なのかを考察します。

リードナーチャリングの一般手法として「誰にいつ何をどうやって届けるか?の設計図をつくる」点は、他の方の説明にお任せするのでここでは割愛しています。

1.自身で購買体験を進められるコンテンツ
2.ハイパー・パーソナライゼーション・コンテンツ

1.自身で購買体験を進められるコンテンツ

まず、バイヤー自身でも正しく意思決定ができるようなコンテンツを期待していると考えます。これは1章でも説明したように、売り手なしの販売体験を望んでいること傾向が高まっていること、バイヤーの今の立場から推察しました。

一般的なリードナーチャリングの手法として、どのフェーズのターゲット(Who)にどんなコンテンツ(What)を届けるかを設計してコンテンツを配信する考え方が普及していますが、その考え方に「売り手なしの販売体験の需要」のエッセンスを加えたものが、この「自身で購買体験を進められるコンテンツ」です。

具体的なコンテンツ案は、本章見出し下の図「販売プロセスを促進するコンテンツ」に記載していますが、例えばサービス導入後のROI計算シュミレーションができたり、クラウド上でデモを体験できたりなど、営業担当の説明なしでも利用できるコンテンツなどが挙げられます。

Product Led Growth(プロダクトレッドグロース)という「プロダクトにプロダクトを販売させる」という概念が普及していますが、この文脈に置き換えるとContents Led Growth(コンテンツレッドグロース)の「コンテンツにプロダクトを販売させる」考え方が、今後さらに普及していきそうだと考えます。

※PLGの概念を表すプロダクトとして、ZoomやSlackがイメージしやすいと思います。私たちはZoomやSlackを利用する前に、営業担当と話したことはありませんよね?フリーミアムモデルとして、まずは無料で利用してからビジネスで価値を感じているはずです。そして一定の利用度合いやユーザー規模に応じて、営業担当なしでも有料プランへアップグレードする「プロダクトがプロダクトを販売する」仕組みが、設計上できあがっています。

2.ハイパー・パーソナライゼーション・コンテンツ

もう1つが、ハイパー・パーソナライゼーション・コンテンツを期待していると考えます。これまでのパーソナライゼーションと何が違うかというと、以下の通りです。

■パーソナライゼーション
・・・バイヤーのニーズへ適切に応えられるように、購買行動を分析して提供するコンテンツを1人1人出し分けること(セグメントに着目

■ハイパー・パーソナライゼーション
・・・AIや機械学習などの最先端技術で顧客データをリアルタイムで収集し、1人1人に個別最適化された体験を提供すること(個人に着目

一般的にMA/CRMツールでリードナーチャリングを行う際に、スコアリングや流入チャネルごとなどの属性情報や、セミナー参加やお役立ち資料のダウンロードなどの行動情報、大きくこの2軸でリストをセグメントしてコンテンツ配信することが多いと思います。

これはパーソナライゼーションとして、「セグメントしたグループ」それぞれに対して、グループ内の共通ニーズに対するコンテンツ配信をしていることになります。「お役立ち資料Aのテーマに関心があるユーザー」というグルーピングですね。

しかしハイパーパーソナライゼーションは、より詳細な顧客データを活用して1人1人にあわせたパーソナライズな体験を提供することに着目しています。

例えば、バイヤーAがBtoBマーケティングの統計データに関するWeb記事へアクセスする回数がここ1か月以内で続いていることが分かった時、次回バイヤーAがアクセスした際にchatbotで「BtoBマーケティングの最新統計データをお探しでしたら、2024年版のホワイトペーパーはいかがですか?」とポップアップが出てくるイメージです。※IPアドレスと企業DBのデータで個人の特定が可能。

これはAIによる、情報収集力、高度な文脈理解、そしてリアルタイム性が可能にしたレコメンデーションとして、個別最適された体験をバイヤーができるわけです。実際にバイヤーも、より個別最適なオファーを期待しています。

米国CONVINCE&CONVERT社調査「80 Percent of B2B Buyers Expect Real-Time Interaction」2022

いまのマーケティングツールでも実装できる機能を備えているかもしれませんが、私自身、このようなハイパー・パーソナライゼーションを体験したことはまだありません。しかし今のAI技術ではそれが十分に可能であり、今後のリードナーチャリングでハイパー・パーソナライゼーション・コンテンツが普及すると私自身も期待しています。

以上が、バイヤーがマーケターへ期待する価値でした。

バイヤーに期待されている価値を見直そう

以上が、「本当は商談なんてしたくないバイヤーが、営業とマーケターへ期待する価値」の考察でした。自身の購買体験も踏まえた考察でしたが、マーケター・営業の方はいかがでしたでしょうか。

バイヤーがいくら商談したくないと言っても、サプライヤー選定の際に営業は必要な存在ですし、今後もなくならない職業だと思っています。

ただデジタルファーストが根強いミレニアル世代・Z世代がバイヤーとして増えてきた中、営業に求められる役割が変わっているということは理解しなければいけません。

そして営業へ送客するマーケターも、一般的なコンテンツを淡々と送るのではなく、バイヤーが自身でも購買体験が進められるコンテンツを企画すること、さらにより高度に個別最適化された状態でコンテンツ提供ができるように、リードナーチャリングの考え方を見直す必要があるとも思っています。

もし営業・マーケターの方が、今の業務に対して何らかの課題をお持ちでしたら、このnoteがその課題解決のきっかけになれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました!

P.S. Xでは、BtoBマーケティングの商談化に役立つ情報やハウツーを毎日発信しています。ぜひ参考にしてもらえると嬉しいです。


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