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86 順番って大事

大河ドラマ「どうする家康」も終わって……

 どういうわけか、今季も大河ドラマをちゃんと全話見てしまった。それなりに楽しめたのは間違いない。正直、徳川家康のことは大勢の人によって寄ってたかって詳細に描かれてきたので、新しいことはなんにもないはずだったが、ウサギからタヌキになる理由を、漠然とではあるものの、わかったような気もした。
 歴史ドラマは、基本的に幼少期から死期へと直線的に展開されることが多いものの、製作者たちはそれになんとか抗って、前後にゆさぶり、時間を素早く飛ばしたり、戻したり、ゆっくりさせていくことでドラマの新鮮味を保とうとする。見る側はどうなるか知っている話なので、どこを拡大し、どこを削除するかで、つまり料理の仕方によって驚かせたり楽しませる。
 今回のドラマでは、さらっと史実を描いた翌週に、そこで起きたことを拡大したり別角度から見せる、といった手法を何度か見せた。そして最終回では、目的を達成し死んで行く主人公のために、共に喜ぶ者たちを夢・幻のように再現させることで表した。これによって、ドラマとしても走りきった感が出た。
 こうした作品を見ると、やはり気になるのは「順番」である。

お笑いの出番、トーナメントの順番

 先日、トーナメントのことを書いた。84 ストーリーとファイト
 公平なようでも、勝負事は運にも左右される。トーナメントでは、試合の順番によって微妙に影響を与え合う。ライバルと考えていたチームが負けたことを知ったあとの試合と、知らないでやる試合では、どこか変わってきてしまうだろう。
 それは、お笑いのコンテストでも同じで、出番がどこになるかは、かなり影響を与える。恐らく、今年の「M-1グランプリ」もきっと、順番は大きな影響を及ぼすことだろう。
 早いときは、客席の盛り上がりも少なく、大爆笑をしたあともまた、笑い疲れが出る。自分たちがどの順番になるかは、クジ引きで決まることも多い。そればかりは、運なのである。
 偶然に頼るスポーツでは、そのまま運を天に任せていくことで、ストーリーが自然に生まれてくる。
 では、自分の考えしだいで順番を左右できるストーリーの場合はどうなのだろうか。
 起承転結、序破急などの順番は定番としてよく知られているが、実はこれも変化している。
 最近のヒット曲にはイントロがほとんどないとよく言われる。イントロをつける意味がいまは見いだせない時代とも言える。
 これと同じく、ストーリーもいきなり結末を見せることもあるだろうし、さまざまな工夫をして引き込むことになる。

話す順番の意外性

 まず、結論を言え、とはよく言われることだろう。これは話法、プレゼンなどで知られたことで、いわば前段、前提の説明を長々と聞かされても時間のムダ、と考える人が増えているからだ。
 たとえば、このnoteの記事は、その点でまったく順番を考えていない。毎回毎回、アドリブで書くことにしているからだけれど、最初につけたタイトルを最後に変更することもしばしばである。いまこうして書いているときに借りでつけているタイトルを、書き終えてから変えることになる。
 自分ではいま書いているこの文章がどう終わるのか、わからないのである。うっすらと予感あるいは予定それとも希望している終わり方はあるものの、はっきり見えているわけではない。
 こうしたやり方をする限り、結論ありきの順番にはなりにくい。なにしろ冒頭は大河ドラマの話だ。どうしてかと言えば、昨日、それを見たからであるし、今日を逃せば恐らく二度と大河ドラマについては書くことはないだろうと思っているからでもある。
 そして先日書いたトーナメントの話がいまだにどこかに引きずっていて、「やっぱり順番って大事だよね」と思うわけで、そのことを今回は書くんだろうと漠然と意識はしている。
 もう地上波での放送は終わったようだがドラマ「フェルマーの料理」を見ている。かなり楽しめる内容なので急がず見たい。なんといっても登場する料理が美しい。それを食べる描写も美しい。
 そこでは、数学の才能を持つ主人公が、その才能を料理に活かそうとする。それは「逆算」である。最初に答えがあり、その答えになるように逆算して料理をしていく。そのためか、初回の冒頭でいきなり最終回っぽい光景が提示される。このイメージがいったいドラマのどこにあたるのか見ている者にはわからない(私はまだ1話しか見ていない)。
 歴史ドラマもそうだが、どうなるか最後がわかっている場合には、こうした順番の乱し方が楽しめる、とも言える。少なくとも作り手にはわかっている。「こうなっちゃうドラマですよ」と。
 その点では、ドラマ「ミステリと言う勿れ」も、こうした順番に極めて拘った作りだった。タランティーノ作品などもある種、変態的な話法で組み立ててくる点がうれしい。
 楽しむ側の私としては、こういう順番の工夫にワクワクしてしまうのである。
 
 


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