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178 政治主導の経済はマヤカシか?

誰が操っているのか?

 たとえば、「アベノミクス」という言葉があった。言葉は記録されているので、それが実際に言葉として使われていたことは事実と考えていい。歴史的な意味でも。だけど、そこになにか実体のようなものがあったのかといえば、なかった。
 要するに、政治は当時の経済的な状況に乗っかっただけである。そしていかにも「このままいけばもっとよくなる」と思わせたのだが、それはすべてマヤカシだった。
 なぜなら、いま日本経済で起きていることよく見てみればわかる。誰が首相でも結果はほとんど同じだったはずだ。
 AI需要を中心とした半導体についての新たな市場の登場を予見できた政治家はいない。日本政府の努力も必要だったことは確かだ。だけど、政府主導の半導体開発といえば、すでに惨憺たる失敗を経験しているわけで、関係者はきっと思い出したくもないはずだ。
 純国産半導体のために投じた政府のカネはどうなったのだろう。そういえば液晶の開発にも政府は力を入れていたっけ。結果として台湾が半導体の主力となっていき、今回、日本での新たな半導体競争さえも、その大成功した台湾勢によってコントロールされている。
 日本政府が邪魔をしないことは重要なポイントであるけれど、だからといって主導的に立ち回ったわけでもない。
 今回、ようやくバブル期の日経平均株価を超え、春闘でも大幅な賃上げがつぎつぎと決定し、日銀もついに大幅な(異次元の)金融緩和策を終えることになった。
 だからといって、いまの日本経済を日銀がしっかりコントロールしているのかといえば、それは違う。なぜなら、かつてのように銀行主導で産業への投資が進む時代ではなくなっており、銀行の銀行である日銀の影響力は、それだけ小さくなっているからだ。
 ゼロ金利政策が終わったからといって、いきなり金利が数パーセント上昇するかどうかは注視したいところだけれど、それは考えにくい。今後の舵取りの方が難しくなりそうだ、とは言える。緩和はほどほどにする一方、過度のインフレを抑制しつつ2パーセント程度のインフレを維持することは、恐らく人為的にはとても困難な道だと思われるからだ。
 経済は「次はこれ」と見えたとたんに、先物市場で一瞬で食い潰される。バーチャルな市場の方が先で、実態はあとからついてくる。いや、ついて来ないことだってある。
 ではいまの経済は誰が操っているのか? それは少数の超巨大資本によって動いている、としか言いようがない。MicrosoftやApple、さらにイーロン・マスクといった企業家たちの競争によって動いている。資本の寡占化はますます進むだろうが、競争はなくならない。それは人に欲望がある限り続く。

小さな政府になれるのか?

 次に来る時代において、政府はどのような立場にいるのかを、もっとよく議論して欲しい。
 確かに国際情勢は予断を許さない。加えて自然災害は予想を立てにくい。日本は地震、火山も大きな問題である。それも予想は難しく、対策もいっきに進めることはできない。国際情勢としては日本には米軍基地がある。それはまさに政治の世界だ。
 だからといって、政府をいままでのように拡大させていくのも限界がある。少子高齢化の時代に、これほど多くの議員が必要だろうか? そこは老害の巣とならないか? いや、もう、なっている気もするのだが。
 政治家は自ら政治家の世界を縮小させることはできない。むしろ拡大したいに違いない。自分の子や孫にも継がせたいなら、拡大しかない。
 経済規模が大きくなったら、一緒に政府も大きくすべきだろうか? 私はそうは思わない。今後、IT、AIの発達によって、それを否定しない社会である限り、人の関わる分野はもっと別のところへ移るはずだ。
 地方自治体では公共の事業の多くで人手が不足し、民間におカネを払ってやってもらう方向へ流れていくだろう。能登半島地震では水道復旧の遅れが大きな話題となっているけれど、半島という地形的な事情もあるとはいえ、そもそも人が足りていないのではないか。
 すると、民間を活用するための予算が必要になる。そもそも人が不足している地域では税収も減るから、十分な予算は取れない。そこは国を頼りたい。国会議員の多くは「地元」を重視する人たちなので、国家予算から地方へ割り振りたい。ところが、そうなると大きな政府になってしまう。
 大きな政府は、国民負担の増加につながり、すでに給料から天引きされる金額の多さが問題になっているのだが、ますますいろいろなカタチで国民からおカネを政府に戻さないと予算が組めなくなる。
 同時に「これだけ吸い上げられているのに恩恵がない」と騒ぐ人たちが増えることになる。簡単な例でいえば、経済的に発展している地域から吸い上げたカネを人の減っている地方へ分配することになるからだ。
 こうした歪みは、最初は見えにくいかもしれないが、社会の歪みとなって現われる。いま隆盛な特殊詐欺を含めた詐欺は、象徴的だ。体を売ってまでホストに貢ごうとする女性たちがいるように、一線を超えてでも目的を達しようという人が増えていくことで社会は不安定になっていく。
 恐らく、こうした行為を裁くための法律はいくらでも政府によって作られていくだろう。法律を作っても社会は変わらないかもしれない。その時、国民はなにを選ぶだろうか。

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