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53 犬は眠る、人は眠れない

昨夜の出来事

 ついつい、昨日はここに犬との生活について楽天的すぎる文章を書いてしまった。
 物事には、表があり裏がある。いい面もあればそうでもない面もある。それも含めて、私たちは日々、生きている。なんとなく生きている。
 犬だってそうだ。別に、私のところで生涯を送りたいと切望して来たわけではない。なんとなく、ここに来て、なんとなくここに居る。こちらは、逃げられると困るので、それなりの対応はさせてもらっているけれど。
 昨夜である。
 このところ、ちゃんと秋になり、いやどちらかといえば冬めいてきて、寒く感じるようになってきた。
 そのせいか、我が家の犬は、いつも寝ているクッションではなく、私の布団にやってきて寝ようとする。それも、こちらがリラックスして伸ばしている足と足の間である。
 そこに寝られてしまうと、寝返りがうてない。
 わずか3キロほどの体重の犬である。持とうと思えば片手で持てる。それが布団の上にいると、布団はびくとも動かない。私は磔になったようなもので、寝苦しい。
 しょうがなく、丸くなって眠っている彼女(雌である)を、少しずつずらして布団の端に置いた。こうすれば、ほぼ8割は私の自由になるスペースが確保できる。
 そうして寝ていたら、いつの間にか、また足と足の間にいる。
 これを2回やる。
 すると、のこのことやってきて、私の顔に鼻をつけ、左肩に顔をのせてくる。抱えるようにして一緒に寝始める。
 しかしこれもそう長くはない。
 彼女は布団がかかるのを嫌がる。偶然かもしれないが布団が体にかかっていたのだろう。抜けだして、また足元へ移動した。

何を考えているのだろう

 そんなこんなで朝方にはようやく私も眠っていて、その後、どうなったのか覚えていないのであるが、時計がわりに自動でつくテレビで部屋が明るくなったときには、彼女は自分のクッションで寝ているのである。
 妻はだから、昨夜、私と彼女の間にあった場所取りについては、何も知らないのだ。「よく寝ているね」となる。
 こちらは明らかに眠くて、起き上がるのだが、彼女はクッションで寝ていて、ちらっと上目遣いにこちらを見る。
 いったい、なにを考えているのだ。
 わかりようがない。
 もしも、こんなことが毎晩あれば、犬との生活はそれほど美しく楽しいものではないだろう。
 正直な話、週に1回ぐらいは、こういう夜がある。
 いまは7歳となって、トイレの場所もよくわかっていて、トイレへ行く間隔もほぼ決まっているのだが、子犬のときはそうはいかない。布団の上で粗相されたことも何度かある。洗えるものは洗うのだが、臭いが取れない場合もあるのでしょうがなく諦めて廃棄し、新しくするしかなかったりもする。
 そのため、敷き布団とシーツの間に、万が一、粗相をしてもいいように、介護などで使うシートを挟んでいる。こういうことをすると、案外、しないものである。

微睡みを奪われたとしても

 私の大事な微睡みを奪われたとしても、彼女に当たることもできない。ある意味、彼女は彼女で必死に生きているのであって、それを勝手に私たちの生活空間に押し込んでいるのだから、すべての責任はこちらにある。
 もっとも、こうして、微睡む間を失ってもnoteに書くことができたのは幸いでもある。
 彼女の顎の下にでき物があるので、獣医師に診せたところ「汗腺にできるものだから、よく拭いて清潔すること」と言われた。体重が思った通りで、太っていなかったのはよかった。
 散歩をさせれば、彼女はそれなりに満足し、しばらくおとなしい。室内犬と言われるぐらいで、週1回の散歩でいい。ある人は、「外でしかトイレをしないので」と言いながら、台風だろうが雪が降ろうが、朝晩必ず犬を歩かせていた。これもひとつの、苦行と言えようし、それが犬を飼う醍醐味だと倒錯的に言ってしまってもいいのだろうけど、私はそれはムリだ。
 毎日、朝晩散歩をすることに比べれば、たまに夜中に布団を取り合うぐらいどうということもないだろう。
 今日の散歩で出会ったアレックス君(という犬)の飼い主によると「うちの子は一年中、朝起きる時間も夜寝る時間も一定ですよ」とのことだった。しかも夕方にご飯を食べたら、夜6時頃から翌朝まで寝ているらしい。「とても手がかからないです」。ただしアレックス君の体重は11キロだ。
 飼い主にも事情があるように、犬にも事情がある。むりやりその折り合いをつけて生活しているのだ。
 少なくとも今日は散歩をしたので、夜は所定の位置でぐっすり眠ってくれるだろう。たぶん。
 
 
 
 

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