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【ココロコラム】新しい年をよい一年に・・

あけましておめでとうございます。今年も精神科医の立場から、人間心理や世の中について書いていきます。ご愛読のほどよろしくお願いします。

今回は、今年一年を充実させるために、今のうちにぜひやりたいことについてです。

今は新年ですから、皆さんの周りには手帳やカレンダーや日記の類があると思います。こららをうまく活用して、一年を充実させる方法を考えます。といっても、負担の大きい方法ではありません。新年になると「今年こそ日記をつけよう」「家計簿をつけよう」などと思うものですが、長続きしません。これは、一日あたりの負荷がけっこう大きいのと、つけるのを忘れた日が続くと、思い出したり追記したりするのが面倒になってしまうからです。

そこで、極力手間を少なくして、なおかつ効果がある方法を公開します。それは、手帳かカレンダーに、他人をほめた日や、他人に親切をした日に○をつけるだけです。実に簡単で、一日一分もかかりません。

こういうと他人をけなした日に△や×をつけたくなりますが、不要です。手帳はプライベートなものです。自分で自分を痛めつけるようなことはする必要がありません。いいことだけ記録しておけばいいのです。

これにどのような効果があるかというと、やはり人間心理として○を増やそうという気になります。最初の目標は週にひとつぐらいでしょうか。それが週二つや三つになればしめたものです。

ほめ言葉を言ったり、親切な行動をよくする人には、【好意の返報性】という心理学の概念を持ち出すまでもなく、相手からの好意が返ってきやすくなりますし、自分も親切にしてもらえる機会が多くなります。

ところが、人間はいざ人を目の前にすると、プライドが出たり、恥ずかしさを感じたり、どこか遠慮してしまったりして、なかなかほめたり親切にしたりができなくなるものです。その結果、ほとんどの人がほめ言葉に飢えています。ほめ言葉をさっと言える人は、それだけ人間関係で得をするのです。

誰かを批判するのは簡単です。人間ですからどこにでも欠点やアラはある。そこをつつけばいいだけです。批判することは、一見鋭くみえますが、実は誰でもできることに近く、寂しいことです。えてして人間関係を乾いたものにしてしまいがちです。少しでもほめたり、親切にしたほうが、結果的に自分も楽しい時を過ごせる可能性が上がるのです。

ところが、人間はほめたり親切にした時に、自分に何かリアクションが返ってこないと、とたんに寂しい気持ちになります。「ほめ損」と感じてしまうのです。すると、「当面は他人のために動くのをやめよう」と、気持ちが警戒モードに入ってしまいがちです。実際には、ほめたとおりに自分も賞賛されることはそんなに多くはありません。また、親切な行動もそのまま返ってくるとは限りません。

しかし、ほめない人とほめる人、親切な人と無愛想な人を比べれば、その差は歴然としています。他人をほめたり、なにか手助けしてあげた人のほうが、ほめられますし、人間関係全般がうまくいきやすくなります。

ここを矯正しようというのが、手帳でカウントする方法というわけです。リアクションはとりあえず度外視して、自分からの働きかけだけをカウントしてみる。何も数えないより、倍ぐらい他の人にほめ言葉を言ったり、親切にしてあげるようになります。それに対して、倍の反応が返ってくるわけではないにしろ、何もしないよりずっと人間関係がスムーズになるはずです。

手帳に○をつけるだけのきわめてシンプルな方法ですが、かなり効果が見込めます。ぜひ今年一年続けてみてください。

(精神科医・西村鋭介)

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