新型コロナの影響下、免疫力を高めるための心理学的アプローチ

今回は、津田秀樹が担当します。
「コロナ疲れ」「コロナ鬱」という言葉までできるほど、新型コロナウイルスのニュースが毎日流れ、なかなか解決の見通しが立ちません。

人の不安は、自分でできることがないときに、いっそう高まります。無力感がさらに不安を高めるのです。今もまさにそういうときだと思います。自分でもできることとして、免疫力をなるべく高めるということがあります。

そのためには、食生活や睡眠を整えるのが、まずはいちばん大切ですが、その他に、心理学的にも免疫力を高める方法があります。
いくつかをここでご紹介したいと思います。

まず、ちょっとひどい実験をご紹介します。
たくさんの人を集めて、カゼのウイルスを散布したのです。
その後で、「そのまま帰宅してもらった人」と「コメディ映画を観て大笑いしてから帰宅してもらった人」とで、その後の健康状態を調べました。すると、コメディ映画を観て笑ってから帰宅した人たちは、そのまま帰ってもらった人たちと比べて、カゼをひく人が少なかったのです。

つまり、“笑い”には免疫力を高める効果があるのです。
今はなるべく家にいるようにしている人も多いと思います。ただ、ひきこもっていると、ストレスにもなります。どうせなら、笑えるような映画などを見て、免疫力もアップさせましょう。

では、ホラー映画はどうなのでしょうか?
「悪魔のいけにえ」というホラーを見る実験で、血液中の白血球の量が激しく増加するという結果も出ています。
白血球は、体内に侵入する病原体と闘うために身体から放出されるものです。

ホラー映画を見ると、体内に病原体が侵入しないにもかかわらず、侵入したときのような免疫反応が起きてしまうのです。恐怖のあまり、身体が自分を守ろうとするのでしょう。ですから、ホラー映画を見ている最中は、むしろ感染症にかかりにくいと言えます。

ただ、そのときに、無駄に白血球の放出されてしまうため、その後、本当に病原体が体内に侵入してきたときに、なくてはならない白血球が一時的に不足するということが起きるのだそうです。

火事でもないのに、さんざん水をまいてしまったせいで、本当に火事が起きたときに、水が不足するというようなことが起きてしまうわけです。
なので、人混みに出かける前は、ホラー映画はやめておいたほうがいいかもしれません。
見るなら、外出から帰ってきたときでしょう。

最後に、免疫力が低下する場合についてもふれておきましょう。
今は、夫婦で長時間、いっしょにいる時間も増えていると思います。そのことがストレスになっている人も少なくありません。

心理学者のキーコルトとグレイサーがこんな研究をしています。90組の健康な新婚夫婦に討論をしてもらい、その後で体調の変化を調べました。

すると、相手の意見を否定するなど、ケンカに発展した場合、免疫力がぐっと低下していたのです。とくに夫より妻のほうが大きく低下していました。

ケンカをすると、興奮し、心配事が増えるので、ストレスを抱え込んでしまいやすいのです。その結果、免疫力が低下してしまい、そうするとウイルスなどに感染しやすくなります。
よく顔を合わせるカップル、とくに夫婦は、お互いが相手を癒す存在ともなりますが、反対にストレスを与え合う関係にもなりかねません。

身近な人と、仲良くケンカせずに過ごすことが、免疫力を維持し、ウイルスを寄せ付けないためのなによりの薬です。難しいことではありますが、今だけでも心がけてみてください。

(津田秀樹)

お読みになって面白いと思ったり、参考になったら下記からサポートをお願いいたします。 サポートでご支援いただいた収益につきましては、今後の記事の執筆料や運営費に充当させていただきます。