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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。

ネタバレとは何か。

映画テキストサイト「osanai」を運営していて、いつかしっかりと言語化したいと思っているテーマのひとつに「ネタバレ」がある。

映画に関わるサイトだけでなく、ブログやnoteなどでも、当たり前のように「ネタバレ注意」「ネタバレが含みます」と書かれているのを見るようになった。SNSでも「ああ〜、ネタバレ見ちゃった」といって嘆き悲しむ声が後を絶たない

大前提でいうと、僕は「物語の筋を知らない状態で、映画を観るタイプ」である。NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」を録画放送で毎週楽しんでいるのだけど、ニュースサイトには放送後1時間足らずで様々な「ネタバレ」記事が公開されるのには辟易している。本文は読まないまでも、タイトルで内容を想起させる記事が山のようにあって(本文を覗くとご丁寧に「この記事にはネタバレを含みます」なんて書いてある)、ある意味で暴力的な営みだと感じることも少なくない。

その上で、ふたつほど気になる問いがある。

・ネタバレとは何か
・ネタバレがあったとして、その映画を観る価値(楽しみ)は損なわれるのか

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ひとつ目の「ネタバレとは何か」に関しては、答えは単一のものではない。一般的な解としては、「最終的に主人公が〜〜になった」という話の筋が明らかになることだ。しかし、それ以外にも「ネタバレ」が含むものはあるのではないだろうか。

例えば、新海誠監督の2019年公開の映画「天気の子」で考えてみる。テーマのひとつが気候変動であり、また新海監督自身が認めている通り「東日本大震災」もメタファーとなっている。

ひとによっては、この情報だけで「ネタバレ」だと感じる人もいるだろう。

また「天気の子」は、前作の「君の名は。」に続き、企画・プロデュースを川村元気さん、キャラクターデザインを田中将賀さん、音楽をRADWIMPSが務めている。これもまた、ひとによっては「ネタバレ」ではないか。映画作りにおいて、同じ製作陣が揃うことで物語のトーンがある程度予想されるからだ。

ここで挙げた「テーマ」「製作陣の座組み」を、ネタバレだと見做さないひとは多い。だいたいが「ネタバレ=物語の筋が明らかになる」としているが、そういった人の中でも、

・ラストシーンのことは言わないでほしい
・ターニングポイントになる出来事は言わないでほしい
・物語の核になるポイント(「君の名は。」でいうと、「時間のズレ」が生じていたこと)は言わないでほしい

といった感じで、意見は分かれるだろう。

対面で映画について話すのであれば、相手の表情を窺いながら「ここまでは話して良いよね」と合意形成ができる。だが、1対1でなく、不特定多数を受け手に設定しているメディアの場合、それは不可能だ。

究極のところ、発信者(運営者)の匙加減と、受信者(読み手)の感性によって左右されてしまう問題だ。

*

ふたつ目の「ネタバレがあったとして、その映画を観る価値(楽しみ)は損なわれるのか」という問い。

映画は、総合芸術だ。映像、音楽、演出、物語、役者の演技、美術、照明──。それぞれが滑らかに作用し合うがゆえに、多岐にわたる視点で映画を捉えることができる。

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」は長く愛されてきた映画であり、観たことがない人も「主人公が過去に戻り、実の両親と過ごす青春劇。なんやかんやで、最終的に現実に戻れる話」ということは知っているだろう。もはや公然と「ネタバレ」が許容された名作だといって過言ではない。

じゃあ、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を観なくて良いかといったら、そんなことはない。映画の節々で流れるオーケストラ調のサウンド(音楽はアラン・シルヴェストリさんが担当)は、演出の妙とマッチして、ことごとく胸が高まるものだ。続編である「バック・トゥ・ザ・フューチャー2」は2015年の未来を描いた作品で、スニーカーに指示を出すと自動で靴ひもを結んでくれる「仕様」は楽しく、多少のネタバレがあったところで、細かいネタは尽きず、むしろ何度も見返したくなるものだ。

ということで、仮にネタバレがあったとしても、映画を楽しむ要素はふんだんに残っているともいえる。

ただ前述した通り、僕自身は「物語の筋を知らない状態で、映画を観るタイプ」で、特に新作映画は、なるべく情報を入れないようにしている。言うまでもなく、物語の筋は、映画にとって非常に重要な要素なのだ。

*

だらだらと書いてしまった。

僕が言いたいのは、「そもそもなぜネタバレがいけないのか」が前提として共通認識とされていないのではないかということだ。「ネタバレ」という言葉が持つ複数の要素によって、分かりづらくしてしまっている。

映画テキストサイト「osanai」で掲載しているテキストは、単に映画を紹介するための前菜ではないと僕は考えている。もちろん映画あってのテキストではあるが、書き手の作品性も大切にしたい。

書き手の皆さんには「読み手のことは考え過ぎず、書きたいと思うことを書いてください」とお願いしている。映画に関するテキストも当然ながら「作品」であるわけだし、書き手のクリエイティビティの発露なのだ。

とはいえ、編集者の自分にとって、書き手と読み手の関係性はすごく大事なわけで。

ネタバレをめぐる冒険が、どんなバランスを、そして相互作用を生み出すか、引き続き「ネタバレ」について言語化を考察していきたいと考えている。

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