「THE FIRST SLAM DUNK」で、桜木花道は「左手はそえるだけ…」と口にしたのか。

2022年12月3日に公開された「THE FIRST SLAM DUNK」。

これほど絶賛しか聞かない映画も珍しい。我が家でも、2歳の次男を除き、全員が「THE FIRST SLAM DUNK」を鑑賞した。

5歳の長男は、祖父母に買ってもらった室内用のバスケゴールがお気に入りで、毎日「バスケしよう」と誘ってくる。映画をきっかけに、バスケそのものに興味を持ち始める。とても良い流れだ。実際、「THE FIRST SLAM DUNK」をきっかけに、Bリーグに足を運ぶ人も増えているという。

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公開から2ヶ月半経ち、まだまだ興行収入が大きくなる勢いだけど、ちょっとずつ物語のことを話しても良いだろう。

「THE FIRST SLAM DUNK」は、湘南高校が、高校バスケ界の王者、山王工業とインターハイで対峙する物語だ。結果的に、漫画「スラムダンク」の最終戦になった試合。スラムダンクファンにとって、最も印象深い試合のひとつであることは間違いないだろう。

「THE FIRST SLAM DUNK」は、漫画と異なるシーンも数多く出てくる。三井がバスケットボール部に復帰したシーンも違うし、山王工業戦で赤木が倒れたときに魚住は出てこない。「THE FIRST SLAM DUNK」、漫画におけるスラムダンクを再構築した、別物のストーリーだといって差し支えないと僕は理解している。

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映画の最終盤、流川から桜木にパスが回ってくるシーン。

漫画では、桜木は「左手はそえるだけ…」とつぶやいて、パスを待っている。しかし映画では、そのセリフは口にされない。

「左手はそえるだけ…」は、映画でカットされたのだろうか。それとも、演出の都合で、口にはしていたけれど音声として表出しなかったのだろうか。

原作のファンであれば、「左手はそえるだけ…」が口にされなくても、脳内でセリフは立ち上がっている。だけど、現実問題として、井上雄彦さんはセリフをどのように捉えたのだろうか。

試合が決する最終盤で、「左手はそえるだけ…」と口にするのは現実的ではないと思ったのか。それとも、ただただ音のないバスケットボールだけの世界を強く表現したかったのか。

あれだけ緻密に再構築された「THE FIRST SLAM DUNK」、しかも「左手はそえるだけ…」はスラムダンクでも1, 2を争うほど有名なセリフである。そのセリフを、桜木の口から発さなかったのは、何かしらの意図があるに違いない。

正解を知りたいわけではない。

だけど、原作ファンとして、映画ファンとして、井上雄彦監督の頭の中を覗いてみたいという欲求は尽きない。

「左手はそえるだけ…」。

僕は、現実に即して、この超有名なセリフをばっさりカットしたのだと思っている。だからこそ、「THE FIRST SLAM DUNK」の再構築に凄まじいパワーが宿っていると思うのだ。

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