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子どもにとっての罪の意識は、グラデーションである。(映画「イノセンツ」を観て)

「わたしは最悪。」の脚本を務めたエスキル・フォクトによるスリラー作品。特殊能力を持つ子どもたちによって、大人の喧騒の間隙を縫って繰り広げられる無邪気で残酷な夏休み。

「イノセンツ」
(監督:エスキル・フォクト、2021年)

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自閉症の姉の靴の中にガラス片を入れたり、野良猫を高いところから落下させたり。友達の少ない者同士が、些細なことで楽しみを共有していたものの、「やり過ぎ」の行為にドン引きし、やがて溝が埋められずに対立してしまうというお話。

スリラー映画の設定として実は新しさはないけれど、「ノルウェー郊外の住宅団地」という舞台に、登場人物たちが話す言語も含めて妙な新鮮みを覚える。

大人の世界にも「いじめ」はあるが、子どもの「いじめ」は罪の意識がない分、残酷なものとされる。だが、そうはいっても罪の意識の感じ方は、子どもによってグラデーションに差があるのではないか。何の衒いもなく蟻を踏み潰せる子どももいれば、「かわいそうだ」と歩くのさえままならなくなる子どももいる。当然、その中間くらいに位置する子どもがほとんどなわけだけど、「蟻なら踏み潰せるが、カナブンはダメ」みたいな線引きだって人それぞれだ。

罪の意識の差異、そして線引きが人それぞれである中発生してしまう悲劇が、「イノセンツ」の肝である。特殊能力を暴走させる男の子だって、「あれ、お前らも笑ってたじゃん?なんでそんな微妙な顔してるの?」なんて、戸惑ったのではないだろうか。

愛憎は表裏一体。

別の選択肢はなかったものかと思うけれど、「子ども」を持つ親として、他人事にはできない結末に胸が痛んだ。

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できれば映画館で鑑賞したかった本作。

エスキル・フォクトの多才ぶりに驚くばかりである。

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