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「啖呵売」という話芸による、上級の販売方法に、新しく学ぶ①「車 寅次郎の啖呵売」

啖呵売(たんかばい)という昭和の時代まで盛んであった、非常に巧みで上級な「販売方法」をご存じでしょうか?

記憶に新しいところ?では、映画「男はつらいよ」シリーズの主人公、車 寅次郎が的屋(てきや)として縁日の露店で行っていたのがこれで、巧みな話術で人を集めて笑わせ、さらりと物を売るといったものです。

【 啖呵売とは 】

啖呵売(たんかばい)とは、ごくあたりまえの品物を、巧みな話術で客を楽しませ、いい気分にさせて売りさばく商売手法、またはそれを用いる人である。

昔の縁日や露天商、路上販売などで、よく行われていた。地口などを混じえた流れるような独自の口上は一種の芸(芸能・芸道)としても評価されており、「バナナの叩き売り」などは有名な例である。また、実演販売は、商品価値を具体的にPRするマーケティング手法であり、より洗練された現代版啖呵売といえる。

啖呵売がみられる映画としては『男はつらいよ』、啖呵売を題材とした落語演目には『蝦蟇の油』(がまのあぶら)がある。

wikipedia2023feb10

【 地口とは 】

【 もじり 】
有名な文句をもじったもの。

「舌切り雀」をもじって「着たきり娘」
「いずこも同じ秋の夕暮れ」をもじって「水汲む親父秋の夕暮れ」
「お前百までわしゃ九十九まで」をもじって「お前掃くまでわしゃ屑熊手」
「しづ心無く花の散るらむ」をもじって「しづ心無く髪の散るらむ」
「沖の暗いのに白帆が見える」をもじって「年の若いのに白髪が見える」

【 韻 】
韻を踏むことによってリズムをつけるだけで、特に意味のないもの。

美味かった(馬勝った)、牛負けた
美味しかった(大石勝った)、吉良負けた
驚き、桃の木、山椒の木、狸に電気に蓄音機
おっかさんの落下傘
いないいないばあさん
結構毛だらけ猫灰だらけ、けつのまわりは糞だらけ[1]
何か用か(七日八日)九日十日
言わぬが花の吉野山
アイムソーリー、ヒゲソーリー、髭を剃るならカミソーリー
何のこっちゃ、抹茶に紅茶
願ったり叶ったり、晴れたり曇ったり
しまった、しまった、島倉千代子
こまった、こまった、こまどり姉妹
いやなこったパンナコッタ
あたりき車力 - 「あたりき」とは「当たり前」のぞんざい語。さらに後ろに以下のように続けたりもする。
あたりき車力、車引き
あたりき車力、けつの穴馬力
あたりき車力、洗濯機
あたりき車力、洗面器
あたりき車力のこんこんちき
蟻が鯛(ありがたい)なら芋虫ゃ(いもむしゃ)鯨
蟻が十(とう)ならみみずが二十(はたち)、蛇は二十五で嫁に行く

【 掛詞 】
掛詞の技法を使い、後に意味のない言葉をつなげたもの(国語学では「むだ口」という)。

すみま千円 - 「すみません」と「千円」
あたり前田のクラッカー - 「当たり前だ」と「前田のクラッカー」
そうはいかのキンタマ - 「そうは行かない」と「烏賊の金玉」[2]
その手は桑名の焼き蛤 - 「その手は喰わない」と「桑名名物の焼き蛤」
恐れ入谷の鬼子母神 - 「恐れ入りました」と「入谷の鬼子母神」
びっくり下谷の広徳寺 - 「びっくりした」と「下谷の広徳寺」[3]。
嘘を築地の御門跡 - 「うそをつく」と「築地門跡 」
志やれの内のお祖師様(おそっさま) - 「洒落(志やれ)」と「堀之内のお祖師様(妙法寺の日蓮の意)」
情け有馬の水天宮 - 「情けあり」と「(久留米藩主有馬家の藩邸内にあったことから)有馬の水天宮」
いやじゃ有馬の水天宮 - 「いやじゃありませんか」と「有馬の水天宮」
どうぞかなえて暮の鐘 - 「どうぞかなえてくれ」と「暮の鐘」
申し訳有馬温泉 - 「申し訳ありません」と「有馬温泉」
田へしたもんだ蛙のしょんべん - 「大したもんだ」と「田へしたもんだ」(皮肉として、蛙のしょんべん程度の価値だ)

wikipedia2023FEB10

特に寅次郎が商売をしながら述べる口上は、鮮やかなものとも言えるものです。

物の始まりが1ならば、国の始まりが大和の国、島の始まりが淡路島。
泥棒の始まりが石川の五右衛門なら、博打打ちの始まりが熊坂の長範。
はじめばかりでは話にならない。
続いた数字が二。兄さん寄ってらっしゃいは吉原のカブ、仁吉が通る東海道、憎まれ小僧が世に憚る。
仁木の弾正は、お芝居の上での憎まれ役。

続いた数字が三つ。
どう?曲がったこの本、ね?
三、三、六歩で引け目がない、産で死んだが三島のおせん。
おせんばかりが、おなごじゃないよ。
京都は極楽寺坂の門前で、かの小野小町が三日三晩飲まず食わずに野垂れ死んだのが三十三。
とかく三という数字は、あやが悪い。

続いて負けちゃおう。
この黒い本。
色が黒いか黒いが色か、色が黒くて食いつきたいが、わたしゃ入れ歯で歯が立たないよとくらぁ。
色は黒いが味見ておくれ、味は大和の吊るし柿。
色が黒くて貰い手なけりゃ、山のカラスは後家ばかり。

続いた数字が四つ。
四谷赤坂麹町、ちゃらちゃら流れる御茶ノ水、粋な姉ちゃん立ちしょんべん。
白く咲いたが”ゆり”の花、四角四面は豆腐屋の娘、色は白いが水臭い。
一度変われば二度変わる、三度変われば四度変わる。
ね? 淀の川瀬の水車、誰(たれ)を待つやらクルクルと。

続いた数字が五つ。
ごほん、ごほんと波さんが、磯の浜辺で「ねぇあなた」。

昔武士の位を禄(ろく)<六>と言う。
かの後藤又兵衛が槍一本で六万石。
ロクでもない子供ができちゃいけないというので、教育修行の一環としてお父さん、買って頂きましょう、この絵本。
どうです?ね?真っ赤な表紙。
赤い赤いは何見て分る、赤いもの見て迷わぬものは、木仏金仏石仏。
千里旅する汽車でさえ、赤い旗見てちょっと止まると言うやつ。

七つ長野の善光寺、八つ谷中の奥寺で、手鍋さげてもわたしゃいとやせぬ。
あなた百までわしゃ九十九まで、共にシラミのたかるまで。

さぁー買い手がなかったら、わたくしこれで家業三年の患いと思って諦めます。
浅野内匠頭(あさのたくみのかみ)じゃないが腹切ったつもりで負けましょう。

ね?これで買い手がなかったら、右に行って上野、左に行って御徒町、西と東の泣き別れというやつ。

ね?角は一流デパート赤木屋黒木屋白木屋さんで、
紅白粉(べにおしろい)付けたお姉ちゃんに、下さい頂戴で願いますと、
六百が七百くだらない品物だが、今日はそれだけ下さいとは言わない。

どう?
タダでやっては義理が悪い。
ね?はい、僅かの二百だ!!
これで買い手がなかったら、しょうがない。
今日はこじきの行列だ!
ほら、持ってけこじき野郎!!


天に軌道のあるごとく、人それぞれに運命と言うものを生まれ合わせております。
とかく子の干支の方は終わり晩年が色情的関係において良くない。
丙午(ひのえうま)の女は家に不幸をもたらす、羊の女は角にも立たすな、蛇の女は執念深い。

ほら、この眉と眉の間。
これを印堂と言う。
ここに陰りがあるということはこれはいけない。

当たるも八卦当たらぬも八卦、人の運命などというものは誰にもわからない。
そこに人生の悩みがあります。

・結構毛だらけ猫灰だらけ、お尻の周りはクソだらけ。

・タコはイボイボ、にわとり(鶏)ゃハタチ(二十歳)、いもむし(芋虫)ゃ、ジュウク(十九)で嫁に行く

・たいしたもんだよ蛙の小便、見上げたもんだよ屋根屋のふんどし。

・やけのやんぱち、日焼けのなすび、色が黒くて食いつきたいが、わたしゃ入れ歯で歯が立たないよ。

・テキ屋殺すにゃ刃物はいらぬ、雨の三日も降ればいい。

男はつらいよの世界(一部加筆、修正)

どうです。目で追うだけでもうっとりとしますね。
声に出して読んでみるだけでも、何だか元気がでてきます!
「気持ちが動く」っていうやつですね。







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