有島武郎「小さき者へ」を読む


この方の記事、凄いです!

曽祖父がどうやら有島家との交流があったそうで、興味津々に読ませていただきました。今後も調査を進めていくそうです。陰ながら応援しております。


という訳で

今回はそんな有島家の一人、有島武郎の『小さき者へ』の読書感想文を書こうと思う。

有島武郎について
有島武郎は北海道にゆかりのある人物。東京生まれだが、札幌農学校へ進学し、留学したのち東北帝国農科大学(現・北海道大学)にて教職に就く。ニセコ町には「有島記念館」があり、札幌市の芸術の森では有島武郎の旧邸を見ることができる。

「小さき者へ」は有島が3人の子供達へ向けて書かれたものである。若くして病気で亡くなってしまった母(有島の奥さん)についてどういう出来事があって、そこにはどんな愛情があって、どんな思いで行動した…などが書かれているノンフィクションなエッセイだ。

一見ぶっきらぼうな文章が綴られているように思えるが、そこには親から子へ向けた無償の愛で溢れていた。

時代の古さは感じるものの、いつの時代も子に対する愛情は変わらない。私は特に若い世代の人に読んで欲しい作品だと思った。子育ての大変さ、家族を守る熱い想い、子には何のしがらみもなく堂々と前へ進んで欲しいという想いにきっと胸が打たれるだろう。

以下、私が気に入った部分を引用させて頂く。

私はお前たちを愛した。そして永遠に愛する。それはお前たちから親としての報酬を受けるためにいうのではない。お前たちを愛する事を教えてくれたお前たちに私の要求するものは、ただ私の感謝を受取って貰いたいという事だけだ。
(「小さき者へ・生れ出づる悩み」新潮文庫、新潮社)
お前たちの若々しい力は既に下り坂に向おうとする私などに煩わされていてはならない。斃れた親を喰い尽して力を貯える獅子の子のように、力強く勇ましく私を振り捨てて人生に乗り出して行くがいい。
(「小さき者へ・生れ出づる悩み」新潮文庫、新潮社)

文章の終わりには次のような言葉で締め括られている。

小さき者よ。不幸なそして同時に幸福なお前たちの父と母との祝福を胸にしめて人の世の旅に登れ。前途は遠い。そして暗い。然し恐れてはならぬ。恐れない者の前に道は開ける。                  行け。勇んで。小さき者よ。           (「小さき者へ・生れ出づる悩み」新潮文庫、新潮社)


我が子へ向けた「小さき者へ」と画家を志していた青年との交流が描かれている「生まれいづる悩み」は新潮文庫や岩波文庫などで単行本化されています。青空文庫でも読むことができます。是非読んでみてください。

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