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実践報告 5年国語「分析レポート」

学年末最後に実施したオリジナル単元です。

概要

3学期に学習した『想像力のスイッチを入れよう』(小学5年・光村図書)という単元のなかで、小林真大著『生き抜くためのメディア読解』(笠間書院)を引用し、国際バカロレアの視点で様々なメディアを分析する授業を実践しました。
動画(テレビの報道番組とYoutubeのショート動画)の比較や、LUMINEの広告などを使ってメディアの特徴や構成について学んだ児童に、今回は映画のポスターを使って、メディア読解に再度挑戦しました。
まず準備したのは、レポート用紙です。
Googleドキュメントで作成したレポート用紙には、引用した文献に合わせたメディア読解の視点を書きこんであります。
私自身のお手本として、映画『すずめの戸締まり』のポスターを使って準備をしました。
また、『方言と共通語』という単元とも関連させたかったので、アニメ『ゴールデンカムイ』の登場人物であるアイヌ民族の女性・アシリパに焦点を当てた分析も準備しました。

実践の様子

まずメディア読解の視点をざっくりと確認し、めあてとして「自分の好きなポスター(映画、アニメ、実写など)を分析する」を設定しました。
ひとつめに『ゴールデンカムイ』の、アシリパが主人公である杉本よりも前に出ているポスターの画像を見せ、「どうしてこの構図になっているのか」を考えてもらいました。
児童の中には当該作品を知っている子も一定数いたので、その内容から推測していたり、「アイヌ民族」だとか作品の内容を知らなくても「この人は重要な人物なのかも?」と考えたり、ほとんど全員がこの課題について「アシリパというアイヌ民族が、この作品では重視されている」という共通認識を持っていました。
その次に『すずめの戸締まり』のポスターを見せ、「人物が描かれていないこと」や「文字が最小限に抑えられていること」などの特徴を挙げてもらいました。
そこまでは想定の範囲内だったので、ここで用意したお手本の分析レポートを提示しました。
描かれている扉が重要なアイテムであることや、登場人物に謎を感じさせ、映画を観てもらうための伏線としていることなどを全員で確認しました。
最後に20分ほど、自分の好きな作品のポスターで分析をしてもらいました。
『ドラえもん』『鬼滅の刃』など、ターゲット層や受け手の印象が比較的わかりやすいものを選んだ児童もいましたが、英語版の『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のポスターを選んだ児童もいて、机間指導でのアドバイスが面白かったのが印象に残っています。
また、自分で題材を見つけられない児童のために複数のテンプレートを用意し、選択できるようにしたのも時間を無駄にしない工夫としてありました。

反省と今後の課題

自分でテーマを決められる児童が多かったものの、それがうまくできない児童に対しどこまでこちらの用意したものを使わせるか、判断に迷いました。
じっくり一人ひとりと向き合い、「好きなものは?」「これとかどう?」というやり取りを、もっとしたかったです。
また、映画のポスターに限定することで、分析対象の可能性を狭めたかもしれないとも思いました。
歌詞分析を2学期の末にやっていたので、それをやりたいという児童もいました。
だから「広い意味でのメディア」をとらえる練習もあって良かったと思っています。
もちろん小学校では自由度の高い分析はしませんが、彼らが将来どんな進路を選択しても「考える」という営みから一生逃れることはできません。
だからこそ、自分で問いを見つけて手を動かすことに慣れてほしいと思い、この単元を設定しました。
担当していたクラスの児童は「わからなくても手を動かす」ことができる子たちなので、最後はその良さを最大限に褒めて、「考えることをやめない」と約束をしました。

何かの参考になれば幸いです。

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