星詠

詩や怪談系のショートショート、あとはおいしいものの紹介を中心に書いています。 Twit…

星詠

詩や怪談系のショートショート、あとはおいしいものの紹介を中心に書いています。 Twitter、エブリスタ、Amebaにも同時掲載していることが多いです。

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蛇(くちなわ)の口裂け

木々を赤く燃やす夕陽を浴びながら、心に色が付くならば、まさにこの色だろう。自然が遥香の心を映し出しているように思えて頬が緩んでいく。 木々の隙間を縫うように歩きながら、最もいいモノを探していた。 大樹。その下の土には窪みがあり、木の上からは眺めが良く、他の木立が景観の邪魔にならず、誰にも使われていないもの。 肝心なのは、誰にも使われていないもの。という一点であり、他の要望は単なる要望に過ぎない。そこまですべてが揃う事はないだろう。と、頭ではよくわかっていた。 山中をさ迷うに

    • 屠所の羊

      8月の終わり。盆も過ぎようとしている夜の海。押見とその恋人である麻宮はのんびりと海岸を歩いていた。 遊泳期間の終わった海水浴場程、落ち着いて通えるものはない。 盆の海には近寄るな。なんて少しばかり神経質になり過ぎだと押見は思っていた。盆を過ぎたらクラゲが出やすく、天候不順になりやすいから行くなと言っているだけだ。今日のように穏やかな海ならば、夜だって危険は少ない。海街で生きてきたからこそ海を知っているという自負があった。 だからだろうか。夜の海を泳いでみたい。と、夏の終わりに

      • 階段から見るそらの色

        つらいよりたのしいを数えて くるしいよりしあわせを数えて 心にふたをして墓標をたてた さけぶよりわらうことを優先して わめくよりあそぶことを優先して ひび割れた墓標の下にあるものは みないふりをした 泥寧から手招きをつづける それにのまれないように それにとらわれないように 目を伏せていちぶをまたおとした そのうち誤魔化せなくなるだろう わかってるわかってる その日は近く その日のぼる階段から見る空は きっととても青くすんでいるはずだ そうじゃなきゃ ただの悲劇にだってなれや

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