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《北海道スペースポートが取り組むSDGs》 牛糞由来のバイオ燃料がロケット燃料に! 酪農と宇宙のまち・北海道大樹町で進むカーボンニュートラルの宇宙開発

今回は、北海道スペースポート(HOSPO)のSDGsの取り組みについてご紹介します!
HOSPOがある北海道大樹町は、宇宙のまちでもありますが、酪農が基盤産業のまちでもあります。地域の特色を活かした取り組みとして考えられているのが、町内で飼育されている牛の糞尿から生成した液化メタンを、地産地消のエネルギーとしてロケット燃料に使おう!という計画です。
すでに実証実験が始まっており、2023年度からの利用を目指しています。40年近く続けてきた「宇宙のまちづくり」は「環境に優しい宇宙のまちづくり」に発展しようとしています。

牛は人口の6倍 3万頭
酪農の課題 大量の糞尿処理と臭い

北海道十勝地方は農業王国として知られていますが、HOSPOがある大樹町は特に酪農が盛んな地域です。飼育されている牛は3万頭おり、町民の6倍の数です。JA大樹町の農業生産額の80%を酪農が支えています。大樹町内には、雪印メグミルクのチーズ工場もあり、地域でとれた新鮮な牛乳は、みなさんが日々食べているチーズになっています。

大樹町特産のチーズ。大手乳業メーカーの工場の他、酪農家による工房も複数ある

新鮮でおいしい乳製品が手軽に手に入りますが、牛が多いということは排泄物もたくさん出るということ。牛の糞尿の処理や悪臭問題は酪農家にとって長年の課題でした。糞尿は放っておくと地下水汚染などに繋がるため、牧場の一角に整備した専用施設に溜め、堆肥化して畑にまいていました。
しかし、堆肥化は重機で何度も糞尿をかき混ぜて臭いがなくなるまで発酵させる必要があります。少子高齢化で担い手が少なくなり、酪農家の大規模化・効率化が進む中で、大きな労力がかかっており、牧場によっては数千万の処理コストがかかっているケースも・・・。
発酵が不足した堆肥がまかれることで悪臭が発生し、風向きによっては大樹町市街地にも臭いが届くこともしばしばあります。

大樹町の酪農家で飼育されている牛。中には1,000頭以上を飼う大規模牧場もある

牛糞で作った液化バイオメタンをエネルギー源に
温室効果が高いメタンをいかに活用するか!?

牛にウンチを我慢してもらうことはできないので、解決策として整備されているのが牛の糞尿をエネルギーに変えるバイオガスプラントです。バイオガスプラントは牛糞をプラント内で処理するため臭いが漏れない上、処理過程で出る「消化液」は無臭かつ良質な肥料となります。同じく処理過程で発生するメタンガスは発電の燃料となり、電気は売電や牧場の自家発電で使われてきました。

牧場に設置されたバイオガスプラント

しかし、現在では送電線の不足のため新たな売電ができなくなっており、余ったメタンの利活用先が求められています。メタンは二酸化炭素の25倍以上の温室効果があり、地球温暖化の面でも対策は急務です。

エア・ウォーターで進めているLBM事業化に向けた実証実験の図

国内初となる液化バイオメタンの実証!
LNG代替の自給エネルギーに

こうした状況を打開すべく実証実験が進められているのが、日本初となる家畜糞尿由来のメタンガスの液体燃料化です。メタンガスを液化することで体積が1/600となり、大量輸送が可能となります。
液化バイオメタン(LBM)と呼ばれ、液化天然ガス(LNG)の代替となる地産地消、カーボンニュートラルのエネルギーとして普及が期待されています。日本は世界最大のLNG輸入国で、ロシアからも輸入しています。ロシアのウクライナ侵攻でLNGの供給が不安定となっており、エネルギー自給の点からもLBMの活用はますます重要度が高まっています。

メタンが含まれるガス回収のため大樹町の牧場に到着したタンクローリー

実証実験は産業ガス大手のエア・ウォーター株式会社(本社:大阪市、以下エア・ウォーター)、よつ葉乳業株式会社(本社:札幌市、以下よつ葉乳業)が環境省の補助を受けて実施し、大樹町や町内の有限会社水下ファーム、株式会社サンエイ牧場が協力しています。酪農家のバイオガスプラントで発生したガスを回収、帯広市内にあるエア・ウォーターのプラントに運び、メタンガスを分離、冷却してLBMにします。
精製されたLBMは音更町内のよつ葉乳業十勝主管工場で、ボイラー燃料に使われます。LBMはLNGに比べて熱量が10%ほど小さいため、問題なく工場で使用できるか確認し、2023年度から事業化する予定です。

実証実験でLBMを使用する音更町のよつ葉乳業十勝主管工場

この実証実験は2021年度からスタートし、2022年度の10月13日にプラントで生成したLBMを初出荷しました。エア・ウォーターのプラントでは年間360トンのLBM製造能力があり、すべてLNGの代替として消費されると、サプライチェーン全体で年間7,740トンのCO2が削減され、温室効果ガスは60%以上減る見込みです。

帯広市内にあるエア・ウォーターのプラント。一番背の高いタンクで精製したLBMを保管する。タンクの容量は8トン

宇宙ベンチャーのロケットやスペースプレーン
大樹町の公共施設でも利用を検討

事業化の第一弾として想定されているのが、大樹町の宇宙ベンチャー企業「インターステラテクノロジズ(IST)」でのロケット燃料としての活用です。ISTは2023年度に、超小型人工衛星を搭載する新型ロケット「ZERO」を打上げる予定で、燃料は液化メタンを使う予定です。
また、再使用型の宇宙往還機を開発する「SPACE WALKER」も液化メタンを燃料に大樹町で打上げを予定しています。
このほか、大樹町も「エネルギーの地産地消システム基本計画書」を策定しており、町内公共施設のボイラー燃料としてLBMの利用を調査、検討しています。

ただ、LMBは製造にコストがかかり、LNGよりも利用料金が高くなるため、エア・ウォーターでは原料提供先の酪農家の増加、プラントの大規模化に加え、トラック燃料、都市ガスなど利用先を広げることでコストを下げ、環境に優しい燃料として普及を図る考えです。
北海道の全ての牛の糞尿を活用できると、年間30万トンのLBMを製造できる潜在能力があるそうで、これは道内の工業用LNGの年間消費量の50%に当たります。

宇宙分野で名を馳せる北海道大樹町・HOSPOは、地球環境への配慮、脱炭素の分野でも国内最先端の取り組みを進めていきます。

ふるさと納税でHOSPO見学ツアー

大樹町では、宇宙港整備の資金としてふるさと納税を活用しています。返礼には、LBM活用を目指すロケット開発ベンチャー「インターステラテクノロジズ」や、北海道スペースポートを巡る見学ツアーを用意しています。
大樹町にふるさと納税をして、SDGsと宇宙という二つの最先端の取り組みを見に来てください。
https://camp-fire.jp/projects/view/637366?utm_campaign=cp_po_share_mypage_projects_show



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