見出し画像

あの時、私たちが共に聴いた曲

人生、どんな瞬間であっても その時に流れていた音楽というのは、思い出と共に色褪せることはないだろう。

楽しいとき、幸せなとき。
哀しみの中にいるときや、絶望でもがいているとき。

ラジオやテレビから流れた音楽や
街角で耳にした音楽というのは
その曲を聴く度に、その世界を改めて思い出させてくれる。
ちょっとした 旅先案内人なのかもしれない。

これから書く話は、就職内定後、入社まであとわずか、という時の後に同期となる仲間たちとの思い出だ。

私が間も無く入社することとなる会社では、
内定後、様々な研修やイベントなど
同期同士で集まる機会が何度もあった。

なんとなくまだ皆 学生のノリが抜けなくて。
研修やイベント後に飲みに行っても
単なる仲間との語らい、だった。

入社までの時間が 刻一刻と刻まれる度に、
なんとなく 【入社してからのこと】を考え、ちょっとだけよそよそしくなる同期もちらほらいた。

今考えると当たり前のことだ。
まだ配属後のことなんてわからない。

今楽しんでいても、入社してからの関係性が変わることだってあるかもしれないのだから。

そして、私たちは 【仲間】ではなく
あくまでも 【会社の同期】なのだから。

とはいえ、夫(同じ会社の先輩)から言わせると、
「ほしまる達の代(同期)はみんなちょっと変わっていたよね。
仲良し過ぎるというか...他の代と違うよね」
という。

そうかもしれない。
現に、入社後も、みんな激務の中でもよく同期同士で集まっていた。

「もう、やってらんねぇよ」
「あたしもだよ」

みんなそう愚痴を言いながらただひたすら飲む。

そして翌日は、また何もなかったかのように 激務に追われる。

その繰り返しだった。

忙しい、と言っても時間は作るものだ。
同じ部で、同じ課に配属された くーちゃん(仮名)と私は、よくそう話していた。

今振り返っても、くーちゃんが同じ課にいなかったら
私は、半年も経たないうちにあの職場を辞めていたかもしれない。
もちろん、長く勤めることが良し、ではないけれど。
あの会社で退職するまで頑張れた私を支えてくれた人たちに、くーちゃんは間違いなく含まれるだろう。

そんな くーちゃんにしてみれば、ミスをして怒鳴られても、嫌なことがあっても
私が

「気にすんなよ、くーちゃん」

と 励ましてくれたことが嬉しかった、
心強かったと
彼が研修で長期間海外にいる時に国際電話で話してくれたことがある。

くーちゃんと私はよく幹事をして飲み会などを企画した。

夫(当時は恋人、だが恋人になる前)まで、くーちゃんと私は付き合っていると思っていたそうだ。

よく周りからそう勘違いをされていたけれど
そもそも、くーちゃんと私はお互い恋愛相談することもあったくらい仲はよかった。

くーちゃんが失恋する度に、仲間と慰めていた中には常に私はいた。

くーちゃんとは 入社前の同期の集まりで親しくなっていた。

「俺たち、同じ課になるといいな!」
「なっ!くーちゃん!」

まさかそう言い合っていたくーちゃんと
本当に配属先が一緒になるとは思わなかった。

入社まであとわずか、という大学卒業後の春休みのことだった。

「入社前の決起飲み会でもしない?」

誰かがそう言い出して、大規模な飲み会をすることになった。

当時はスマホもLINEもないからグループLINEなんて不可能で。

一斉送信メールなんてのもあり得ない時代で。

連絡先を手分けして、順番に電話する。
みんな、入社前にちょっとでも顔を合わしたいという気持ちは同じだったんだろう。

初めて同期の集まりに参加する子も含めて
男女含めてかなりの大規模な人数になった。

同期の一人のバイト先の居酒屋が
それなら、と貸し切りにしてくれた。

かなりの大人数なので
待ち合わせも 幾つか班分けして、現地集合にした。

というのも春休みの都内、特に学生などが集まる街はこの時期、イベントが多く、駅はカオスになる。

はぐれてしまって、という子が出ないような、私含めて幹事の配慮だった。

私と幹事の子数人はそれぞれの班に散らばって引率する形にした。

集合時間の少し前に 渋谷駅に幹事たちとその日の段取りの最終打ち合わせをする。
二次会のお店にも一応最終確認の連絡を改めてしておいた。

「楽しみだな」
「うん」
「けど、本当にもうすぐ入社なんだよな」
「...」

誰かが言い始めて、くーちゃんが沈黙を遮る。

「入社しても、俺たち大丈夫だろ。なっ」
「なっ、くーちゃん。」

正直、なにが大丈夫かはわからない。

けど、入社しても私たちはなかまなんだろうな、ということはみんなその時に思っていたはずだ。

そろそろ皆が来はじめる頃だ。

「じゃあ、各自分かれるか...あっ!」

そう言い出した一人が渋谷駅前の電光掲示板を見る。

「この曲知ってる」
「うん」
「うわー、なんか泣ける。
なんかわからないけどこういうタイミングで聴くと」

涙もろい同期の、親しい友人が涙ぐむ。

「なーに、感傷的になってんの」
「そーだよ。この曲、俺ら絶対忘れないよ」
「そうだね、この時聴いたのって忘れないよね」

しばらく皆 口々に言いながら
電光掲示板を見つめていた。

まだ、入社後の現実の辛さも何も知らない、
学生気分のままの私たちが
春休みのあの日
楽しかった 飲み会の前に聴いた

そんな音楽だった。


読んでくださり、ありがとうございます。
そんな思い出の曲である、今日の一曲です。

Go West / Pet Shop Boys

イギリスのポップデュオ、ペット・ショップ・ボーイズの曲ですが
元々は、ヴィレッジ・ピープルの曲であり、これはオリジナルではなく、カバー曲です。
リリース後には、スポーツ番組や テレビ番組などでよく使われていたのを覚えています。

(Together) We will fly so high
(Together) Tell all our friends goodbye
(一緒に)僕らは高く飛ぶんだ
(一緒に)友達にさよならを言おう

(Together) We will start life new
(Together) This is what we’ll do
(一緒に)新しい人生を始めるのさ
(一緒に)それが僕らのやること

(Go West) Life is peaceful there
(Go West) In the open air
(西へ行こう)そこでの人生は平和
(西へ行こう)空気は開かれている

(Go West) Where the skies are blue
(Go West) This is what we’re gonna do
(西へ行こう)空が青いところへ
(西へ行こう)それが僕らのやることなんだ

※ものすごく深いテーマのある曲だというのは当時からだいぶ経ってからわかったので
あくまでも そのまま意訳しています、あしからず。

Spotify


Apple Music

最後までお付き合いくださいましてありがとうございました。

今日もお互いぼちぼちいきましょう。


この記事が参加している募集

#思い出の曲

11,206件

この記事を気に入っていただけたら、サポートしていただけると、とても嬉しく思います。 サポートしていただいたお金は、書くことへの勉強や、書籍代金に充てたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。