「蜈蚣」。
足が震える。
身体が動かない。
壁に寄りかかり、その場に座る。
心臓の音が聞こえそうなぐらい、激しく脈打つ。
ギシギシ、と徐々にこちらに近付いてくる足音。
闇夜に目が慣れ始める。
地面に転がった、あいつ。
ピクリとも動かない。
「うぶっ」
口元を押さえ、吐き気を堪える。
あいつには、頭がなかった。
正確には、頭だった肉片が辺りに散らばっていた。
「はぁー……」
声がくぐもった吐息が、夜の路地裏に響く。
夜に紛れて、奴がやって来た。
汗が止まらない。
口元を隠すだけのガスマスク。筋肉質の巨体。赤黒く染まった、釘バット。
目の前で立ち止まり、俺を見下ろす。
「街の住民に伝えろ」
口元だけのガスマスクから漏れる、スゥ、スゥ、スゥ、という特殊な音が耳に纏わり付く。
「俺は『蜈蚣』。この街を混沌で支配する者」
夜の街へ、作品のネタを集めに行く為の費用に出来ればと思います。