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評価が変わると学びは変わる!?金沢工業大学のイベントから考える、これからの学習評価のあり方、伝え方。

企業が内定を得ている学生の保護者に内定確認の連絡を入れる「オヤカク」というものがあります。最初に聞いたときはけっこうビックリしましたが、今は昔より大学生であっても親の影響力や発言権が強く、また親の子への関心も高いのでしょう。

今回、見つけた金沢工業大学のイベントも、親を意識した取り組みなのですが、こういうやり方もあるのかと興味深く感じました。またよくよく考えると、こういった取り組みを続けていくと、教育そのものも変わっていくのかもしれません。

社会に向けて、学びの成果をまとめて届ける

金沢工業大のイベントのタイトルは、その名も「KITステークホルダーウィーク 2022年度」。どうです?けっこうなパワーフレーズだと思いませんか?このイベントは、2023年2月13日~25日までの期間に、学びの成果発表に関わる取り組みをまとめて行うというもの。ゼミの成果発表や卒業論文・研究の発表を一般公開するというのはよく目にしますが、取り組みをまとめて“ウィーク”として実施する発想はステキです。

近場に住んでいるならともかく、子供が下宿している場合、自分の子供の発表を見るために旅行するというのは、ちょっと気が引けるような気もします。でも、大学全体として今年の集大成を見せる一大イベントとして催されるなら、他にもいろいろと見るべきものがありそうで、背中も押されるのではないでしょうか。

そして、このイベントのミソなのは、成果発表をイベント化したことともうひとつあります。保護者ウィークではなく、ステークホルダーウィークと銘打っているところです。リリースにも「~企業関係者、父母等、高校関係者の方は、ぜひご参加ください」と書いており、さまざまな人を呼び込もうとしています。高校関係者に対しては、オープンキャンパスとはまた違った視点から大学の学びを披露する場になるし、企業の前で研究成果を発表するのは学生にとってもメリットがあります。人によって着眼点は違うかもしれないけど、いろんな人にとって得るものがある場になっているわけです。

伝えるだけじゃなく、交流する場までを用意

一連のイベントのなかで、目を引いたものがあります。「KIT・ICTステークホルダー交流会2022」です。単に学生が学びの成果を一方的に伝えるのではなく、学生とステークホルダーが相互にコミュニケーションがとれる場も用意しているわけです。実際にアドバイスを行えるのは、このイベントに対面参加できる企業の参加者のみのようですが、それでも尖った企画です。

この交流会は、学長挨拶のあとに、40名以上の学生が自己成長のストーリーを一人あたり5分程度でプレゼンテーションを行い、その後に学生と企業が対話を行います。研究シーズやビジネスプランをピッチするならまだしも、テーマは学生の成長ストーリー。企業からのアドバイスは学生の役に立ちそうですが、企業にはどんなメリットがあるのでしょう。優秀な学生との出会いでしょうか。ここらへんがリリースだけではわからないのですが、学生にとって価値ある場をつくろうとする大学側の熱量を強く感じました。

学びの評価が変わると、学びそのものも変わる

今回の金沢工業大のイベントを見て思ったのですが、学生たちの成長への評価や表現というものが、今、徐々に変わろうとしてきているのかもしれません。これまでであれば学びの成果は、成績表によって表現されていました。しかし、社会が多様化し、一つのものさしで物事を測れなくなったなかで、画一的なテストによって評価・表現することに無理が出てきているように思えます。もちろん、成績表も評価の一つとしての価値はあります。でもそれだけじゃ足らなくなってきたのかな、と。

ではどのような尺度で学びの成果を測るのかというと、画一されたものがないので、もう各々が独自の尺度で測って表現するしかないと思うんですね。今回の金沢工業大のイベントがまさにそれで、学生が学びの成果を自らの尺度で測り、評価し、直接ステークホルダー(=報告すべき相手)に伝える、そんな場になっているように感じました。ここらへんは、現在、文科省が推進している「学修者本位の教育」にも通じるところがあるのではないでしょうか。

評価手法が変わると、当然、教育のなかで力点を置くポイントもアプローチも変わっていきます。よりよい教育を行うためには制度・内容からの変革も大事ですが、実感のともなう体験を通じて意識を変えていくことも大事です。金沢工業大の取り組みは、そういった自分たちの意識を変革するための場としても、大いに役立っているように思えました。

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