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時代は超効率重視?近大の調査から見えてきた、新たな学生の学びスタイルをどう受け止めるかについて考える。

コロナ・パンデミックがはじまって2年半が過ぎました。アフターコロナの社会はどうなるのか?みたいなことが話題にはあがるものの、コロナがどこかのタイミングできれいに収束して、コロナのない世界がはじまる、というのは、おそらくないように感じます。

グラデーション的に変化しつつ、気がつけばコロナがあまり気にならない、コロナと共存した社会になっていた……、そういうのが現実的なのではないでしょうか。であれば、コロナ禍に起きた応急処置的な変化(とはいえ、劇的に大きな変化)について、アフターコロナを待って、どう扱うかを正式に考えるのではなく、今の段階で考え、行動をはじめないといけません。だって、わかりやすいターニングポイントなんてなさそうなんですから。

で、前置きが長くなったのですが、大学にとって、この応急処置的な変化の最たるものは、間違いなくオンライン授業でしょう。これについて、近畿大学が面白い調査結果を発表していたので、今回はこれについて取り上げたいと思います。

今回の近大の調査は、オンライン授業の一つである、オンデマンド授業を主に扱ったものです。調査では、オンデマンド、オンライン、対面の3つの授業形態のうち、オンデマンドで受講したいと回答した学生が全体の78.7%を占めており、ダントツの支持を集めていました。また、視聴完了時間のボリュームゾーンは22時~23時の時間帯で、多くの学生がいわゆる大学の授業時間に視聴しているわけではなさそうです。そして、これがとくに面白かったのですが、大学(というか先生?)によっては、非常にネガティブな印象を持っている倍速機能での視聴についても調べており、倍速機能の利用の有無と成績の相関はないという結果がでています。

近畿大学 授業評価アンケートより

ここから見えてくるのは、夜に倍速で授業を聞き、テストでもちゃんと点数を取っている学生の姿です。人によっては、こんな学び方は間違っていると憤りそうな気もしますが、はたしてそうでしょうか。私は、ものすごく効率的な学び方をしているなと思いました。そしてこれは、今後こういう学び方をする学生が出てくるだろうとか、出てきそうだからどうするべきか、ではなく、今すでに多くの学生がこういう学び方をしているわけです。

オンライン授業導入後しばらくして、いろいろな大学で学力調査が行われましたが、多くの大学で学生の成績は上がっていました。加えて、今回の近大の調査で倍速機能を使ったからといって成績が下がるわけではないこともわかった。この状況で隙間時間を使って効率的に受講するという、学生のスタイルを否定するところはありません。であるなら、何となく気に食わないとブーを垂れるより、学び方の変化によってできた学生の時間をどう有効活用してもらうかに議論をシフトさせるのが建設的なのではないでしょうか。極端な話、カリキュラムにも単位にも縛られず、新たな取り組みをしやすくなるわけです。これは、教育でなければいけない、という大学にとっての大前提を取っ払って、学生に何かを提供できる“余白”ができた(増えた)ことを意味します。もちろん強制力ゼロなので、学生にとって魅力的であることが大前提ではありますが。

単純に並べて論じるものでもありませんが、最近の転職市場ではテレワークの有無で、募集状況が大きく変わるという話を聞きます。今はまだ、オンライン授業=大学に行かない、友達ができない、みたいなイメージがあるから、受験市場では、転職市場のような重視のされ方はしていません。でも、オンライン授業をすることで、大学生活がさらに充実するという認識が広がると、一気に評価ポイントとして注視されるようになりそうです。

働き方が変わったように、学び方も変わりました。それを否定するのではなく、前向きに受け止め、新しいチャレンジにつなげる大学が、今後、評価される大学になることは間違いありません。冒頭に述べたように、アフターコロナがオン/オフ切り替わるようにわかりやすくやってくるわけではなさそうですし、学生たちの学び方はすでに変化しています。できるところからすぐにでも着手すべきです。なんかこう考えるだけで、ワクワクしますね。

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